狂科学者のお出迎え
国王が公爵家に来たからお前も来い。
その知らせを公爵から通信で受け取ったハルトは公爵家の領主館まで急行した。
館内の無駄に重厚なドアを開ければ、
「陛下、案内のハルトが着いたようです。」
「うむ。ハルト、面を上げよ。」
王様がスタンバっていたので即座に膝を付く。
「久しいな、ハルトよ。」
「お久し振りです。陛下。」
外聞もあるので一応敬意を示しながら挨拶をする。
それでも敬意の示し方が微妙なので、部屋にいる者達がざわつきはじめる。
『お主、敬意の払い方を知っていたのか?』
公爵は俺が丁寧な言葉遣いができたことに驚いている。
わざわざ通信で言わんで欲しいが。
ついでに国王の連れてきた連中は不敬だとかぼそぼそ言っている。
眉間に青筋を立てて暴発三秒前みたいなやつも数名。
「既に知らせておいたと思うが、今日はお前の研究所を視察しに来た。案内せい。」
『このまま連れて行って良いか?』
『とっとと連れていけ。誰のせいで陛下がここにいると思っている。』
公爵......あんたそれでも貴族だろ?
ちょっとぐらいは内面も取り繕おうぜ?
「どうぞ、こちらです。」
公爵家を出て、国王の乗った馬車を先導しながら研究所まで歩く。
道行く人達が『何事だっ!?』みたいな顔をしているがスルー。
「着きました。」
『出迎えに来い。陛下のお出ましだ。』
そう助手達に命令を出しながら国王を入り口へ案内する。
その頃には家の有能な助手達は外に出てずらっと並び、頭を下げる。
「「「......。」」」
それを見て一瞬だが呆ける国王一同。
まあ当然の反応だ。
明らかに生身でない両足が露出している者や、首ら辺に変な結合痕があってそっから下が無機質な造形の者数名。
各所に不自然な盛り上がりを見せる者数名。
服の下からでもはっきり分かる程、異様さが滲み出ている。
そして数名はえもいわれぬ嫌悪感に襲われてもいた。
国王に対価として賜り、限定された者のみが見ることを許される処刑で斬首し、死んだ筈の死刑囚が生きていたのだ。
確かにその目で見たのだ。
体から切り離され、地に転がった首を。
切断面から吹き出す緋色の血を。
しかし二人は立っていた。
首から下を明らかに人工物だとわかる作り物で代用して。
国王も含め、皆理解した。
目の前にある施設は決して子供の道楽ではない。
かといって天才の所業でもない。
安易な気分だけで見ることの許されぬ、血に濡れた狂気の実験場だと。
そしてそれを所有するハルトも同様に、ただの子供ではないと。
それを知ってか、ハルトは確認する。
「本当に中を見ますか?」
と。
もうハルトの言葉遣いを気にするものは居なくなった。
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