狂科学者の宿題
『お前ら、大掃除の時間だ。』
通信で号令を出した俺も身代わり人形を起動して見られたらまずそうなものを片付ける。
「......で、他に何かあるの?」
まだ帰らない父さんを不審に思って声をかけると、父さんは居住まいを正して、
「一つだけな。ハルト、私はお前の父として私なりにお前を見定めてきた。」
「......それがどうかした?」
「お前は私が教えずとも知識を吸収し、驚くべき早さで成長してきた。」
まあ前世の知識持ち込んでるしな。
成長と言うか記憶の再確認?
「で、私は思った......お前はもう一人でもやっていけるんじゃないかとな。」
いや、無理だ。
是非これからも脛をかじらせてくれたまえ。
相応の対価は出しているではないか。
残念ながら俺は経済学を専攻していなかった。
「なのでハルト、お前に宿題を出すことにした。」
宿題......古典の書き下し......年号の暗記......うっ頭が......
「この研究所や充填屋を含め、ある程度の土地と資本はやるから何か商会を立ち上げてみろ。」
「えー」
そりゃまた前世の馬鹿みたいに多かった宿題が小学生の計算ドリルに見えるほどスケールのでかい宿題だな。
「やってみろ。お前ならどこでも指示を出せるだろ?」
......父さんに魔法生物を渡したのは間違いだったのかもしれない。
まさか身内で研究結果が悪用されるとは......。
そもそも遠隔で研究できるように創ったんだぞ?
それのリソースを商売に割いてどうする。
だがこの宿題をやらないと研究所の金が危ない気がする。
仕方ない......ちょっとやって雰囲気を掴んだら商売用のアルゴリズムを組んで自動化するか。
魔法生物で父さんの脳味噌をコピーできるかもしれない。
『所長、これはどうしますか?』
助手から通信が来たので思考を中断し、片手間に動かしていた身代わりへ意識を向ける。
どうやら臓器を保存してある容器を隠すべきか悩んでいるらしい。
臓器サンプルか......
『一応隠しとけ。』
『分かりました。』
そして父さんの方に意識を戻し、
心底嫌そうに、
悔しそうに、
面倒臭そうに、
忌々しそうに、
「......わかった。」
と声を絞り出す。
それがハルトにできた精一杯の抵抗だったわけだが......
「そうかそうか、話のわかる息子で私は嬉しいぞ。」
満面の笑みで返してくるアラン。
ハルトはただ唇を噛み締めることしかできなかった。
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