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狂科学者の秘密

 「......というわけで少し実験に付き合え。」

 ハルトは助手のメアリーに詰め寄っていた。

 目的は勿論魔法生物を投与する実験体の勧誘。


 「所長の命令なら仕方ありませんね......彼らを見る限り命の危険性は本当に無いようですし。」

 「安心しろ。こんだけ役に立ってくれているお前等を殺すなんて勿体無いからな。是が非でも生きてもらう。」


 「......所長って本当に何でもできますよね。」

 「ん? なわけあるか。一人で何でもできるわけでないからこそお前等がいる。俺は神様ではなく一介の科学者だ。」

 「所長のよく口にするそのカガクシャって何ですか?」

 「ふむ......これで口が滑るのは何回目だ? ......まあいい、知りたいか?」

 本当に何回目だ?

 口が滑る度に気にするなと言っていたが......まあ隠さないといけないわけでもないしな。

 

 「教えてくれるんですか?」

 「別にいいぞ。今までのは......めんどくさかっただけだ。科学者って言うのはな......そもそも科学とはなんぞやって事なんだが......まあ、簡単に言えば世界の法則を学ぶ学問だ。」

 「世界の法則......ですか。」

 「そ。で、その科学を利用して様々な物質を作り出したり新しい技術を開発するのが科学者だ。」

 

 「世界の法則を利用、応用する者ですか......。」

 「まあ似たような職業で言えば錬金術師が一番近いな。科学者の概念を知っているものは俺以外いないだろうけど。」

 「......? 何故ですか?」

 あ、


 そこでハルトは固まった。

 自然な感じで口から出てしまったが、よくよく考えれば俺の前世に僅かだが繋がる言動だった。

 ま、今さら取り消せないし開き直ることにしよう。

 俺の前世なんてもの一部の人間が知ったところで意味はない。

 寧ろ俺の異常性を全て片付ける便利な事実となってくれるかもしれない。


 「なあメアリー? 前世ってあると思うか?」

 「? 突然ですね......あったらいいなとは思いますが、信じているかと言われますと......。」

 「俺は前世が実在することを知っている。何でだと思う?」

 「......前世の記憶があるとかですか?」

 「正解だ。もっと言えば転生する過程もほぼ覚えている。俺はな、この世界とは別の世界から来た科学者だった。」

 「この世界とは別の......世界?」

 「ああ、その世界には魔法はなく、全ては世界の法則を研究し、応用した技術で満ちていた。世界は電磁波の通信でつながれ、あらゆる情報が数秒で手に入る。惑星の反対側にいる者とリアルタイムで会話し、数多の仮想空間内でプレイヤーが現実と並行して擬似的な人生を送る。大抵の病気は治療でき、殆どの物は自動化された機械の手で量産され、安い値段で手に入る。戦争では敵陣に効率よく打撃を与える兵器が開発され、大国が世界を滅ぼせる兵器を複数所持して互いを牽制し合う。そんな富と技術と戦争に溢れた世界だった。」


 「......所長はそんな世界が恋しいのですね?」

 「恋しい? 違う。俺はそれが一つの通過点と考えている。この世界にある魔法は非常に便利でな、遠距離通信や情報処理の技術は既にある程度開発した。他の技術も容易く実現可能だろう。」


 だが、

 「前世の技術に胡座をかいてはいけない。進歩しなければ人はその存在理由を見失う。人はもっと高みに上るポテンシャルを秘めている。だから俺は進み続ける必要があるのだ。」


 女神に選ばれるほどだ。この欲は半端なものではないだろう。


 「俺が探求するは魔法と科学の融合した先。そうだな......魔科学とでも名付けるか。」

 

 ハルトの言葉の端々に見える、狂気的で貪欲な探求心に唾を飲み込むメアリー。

 「所長......私は......。」


 ―――貴方を主人に持って本当に良かった―――




 「......少ししゃべりすぎたな。じゃ、そこの台の上で横になれ。」 

 こうしてまた少し助手との距離が縮んだハルトであった。

 

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