狂科学者はヤル気満々
研究室の廊下を歩むハルトとMBPの二人。
一名はハルトの背に担がれているが、身長の差から微妙に床で擦っている。
『あの~所長、そろそろ放してくれませんか?』
「ん? 逃げないなら良いぞ。」
『......もう諦めていますよ。逃げません。』
声帯のMOも機能停止しているため通信で話しかけてくるMBP-1。
逃げないと言うので再起動のコマンドを打ち、放してやる。
「ぷはっ。」
「呼吸が要らない体で呼吸するとか相変わらず変な奴だな?」
「いやそういう所長も呼吸、」
「話す時以外していないぞ?」
「......みたいですね。何で僕等よりも順応しているんですか......。」
そんなことを話している内に研究室内に入る三名。
「そっちとあっちのベッドに寝ろ。麻酔をかける。」
「あのぉ......所長?」
「何だ?」
「......失敗で死にませんよね?」
「安心しろ。十分以内に終わる。」
「......その終わるが私達の終わりにならないことを願っています。」
ふむ、愚問だな。
お前等のような従順な実験体をみすみす死なせる訳がない。
そんなことは口に出さずに麻酔をかけ、頸部の人工神経を分断して少々細工をし、バッテリーを追加した後魔法生物の入った容器を二人の頭部に被せる。
これで二人とも俺のようにメインコンピューターへのアクセス権限を得て、スパコン数台分のマシンパワーを享受できるようになった。
もちろん眼球内の投影やメモリーへの直接接続も可能だ。
多少は制限をかけるが、特に隠し事もないのでアクセスできない領域は限られる。こいつらも気付かないだろ。
「ほい、終わりだ。」
脳内に残っている麻酔を強制的に分解して覚醒させる。
「「......生きてた......。」」
覚醒と同時に同じ言葉を発する二名。
どうやら最後まで疑っていたらしい。
「お前等な......少しは主人を信じたらどうだ? というかそろそろ起き上がれ。」
「いえ......所長?」
額に汗を浮かべながら数少ない生身の筋肉で口を開くMBP-1。
「何だ?」
「少々信号伝達が混乱しているようで......起きたいのに起きれないんですよね。どうも思った動きができません。」
そうだ。
調整を忘れていた。
頸部に組み込んだMOがまだ順応できていないことを忘れていた。
俺の場合は生身と生身を繋げるだけだったから気にならなかったのだろう。
メインコンピューターに接続して二人へ投与したそれぞれの魔法生物へプログラムを流し込む。
「あと五分もすれば制御は戻るだろう。少し我慢しろ。」
「致命的な失敗じゃなくて良かった......。」
MBP-2が呟く。
どれだけ怖がれば気が済むんだ?
お前等はリアル斬首と言う恐らく世界最大級であろう恐怖を乗り越えたではないか。
この調子で全員に施術するか。
腕が鳴るな。
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