狂科学者の哀れな子羊×2
「MBP-1、2、元気にやってるか?」
今世の自分そっくりに改装したアバターを操作して食堂の厨房で働いているMBの二名に声をかける。
「「所長? ......どうしたんですかその体?」」
おお、二人とも気付いたか?
「何、お前等と同じような人工の体を作ってみただけだ。俺自身は部屋で寝ているぞ。これは試験運転だ。」
「所長の考えはいつも突飛ですね......つまりその体には脳がない......ということで?」
なかなか理解が早いじゃないか。
「その通りだ。脳と遠隔で無線接続している。これから俺はどこででも作業ができるというわけだ。」
そう言うとMB達は呆れたような顔をして、
「相変わらず所長は出鱈目ですね......なにもこんな体を求めなくても......」
「そこは見方によるな。俺はちょっとばかり忙しかったのだ。それに......中々快適ではないか。」
「いや......そんなに良いものでもな」
「......そうだ!」
いいことを思い付いたぞ。
「何です?」
「この際だ、お前等もアップグレードするか。」
「「あっぷぐれーど?」」
「気にするな。ちょっと改良するだけだ。新しい世界を見せてやる。」
「「嫌な予感が(します)......。」」
笑顔のハルトとは対照的に少し顔を青ざめさせる二名。
二人は知っているのだ。
己の小さな主人の行動力を、知性を、その狂気に似た突飛な発想を。
生命を弄ぶことすら可能にするその力を。
その力によって蘇ったからこそ、誰よりも理解している。
勿論ハルトはそんなこと知ったことではない。
二人とも......いや、この研究所で暮らす全生命体がハルトにとっては等しく実験体。
そこに貴賤はなく、ハルトの一存で全て決まる。
まあ、それが良いことなのか悪いことなのかは一概には言えない。
結果的にではあるが、失敗の少ないハルトの実験は豊かさをもたらしているのだ。
「何を心配している。お前等を蘇生したのは俺だぞ? 少しは信頼しろ。ましてや今回の実験は少々お前らの頭に魔法を入れるだけ。うっかり失敗する方が難しいかもしれんぞ?」
「十分心配ですよ! いや、ちょっ!?......。」
「ふむ、静かになったな。MBP-2、お前も抵抗してみるか?」
直接MBを停止するコマンドを打ち込まれ、沈黙するMBP-1を見て盛大に顔をひきつらせるMBP-2。
「いえ......お手柔らかにお願いしますね......。」
そして哀れな二人は研究室へ連行されたのであった。
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