狂科学者は創る(7)
助手に自室へ放り込まれ、やることもないのでベッドにダイブしたハルト。
しかし睡眠不足にすら耐性を獲得し始めているハルトはそんなに長い睡眠を必要としない。
よって起きる。
しかし外に出ればまだ夜なので見つかれば助手達がうるさくなるのは間違いない。
力づくで出ることもできるが、わざわざ研究所を破壊するのも面倒くさい。
なのでハルトはやることがなかった。
非常に退屈だ。
しかし自室にはベッドと簡易的な机しかおいていないので何も出来ない。
いや、出来ることはある。
耳の後ろに埋め込んだMOから施設のほぼ全ての機能へアクセスできるからな。
ふむ......魔法生物の様子でも見てみるか。
眼球内に映るウィンドウを操作して地下実験室の管理機能へ接続する。
そのまま魔法生物の監視データを覗くと、
「まあ......そこまで時間が経ったわけでもないし、変化は無し......か。妥当ではあるが......ん?」
視界の端に映ったデータを拡大してみると、
「一応成果はあったか。」
これで暇は潰せる。
そう考えながらじっくり数値の羅列を読み解いていく。
それは手始めに魔法生物を投与した数体の被検体のデータだ。
脳の運動野が激しく活動している。
実験室内の監視カメラに写るのは激しく暴れる被検体の肉体。
完全に脳と体の神経活動を同調させられたようだ。
まあ無駄だけどな。
何せ奴等の入っている水槽は全て分子結合を強化し、カーボリウムの鋼線が張り巡らせ、頑丈さに拘った逸品だ。
ぶつけるせいであちこちに痣が出来ている。
それでも怯まずに水槽を蹴って殴る姿にはなかなか迫力があるな。
あ、
ボキッという音声とともに変な方向へ曲がる検体の腕。
妙だな......痛覚もリンクして......
まさか!?
慌てて計測器を操作するハルト。
そして判明したことは、
奴等は肉体とのリンクの内、痛覚のみを遮断していたという事実。
検体達が己の意思で魔法生物を制御している。
いや、魔法生物自身が被検体に合わせて成長しているようにも見えるな。
......不味い。
このままでは管理システムを破壊されるかもしれん。
仕方ない。
魔法生物を削除するしかないな。
結構面白い実験だったんだが......残念だ。
準備をしっかりしてからまた挑戦しよう。
ハルトの命令により、魔法生物に組み込まれている自己削除用の魔法陣へ魔力供給が開始され魔法生物たちが消去されていく。
こうして研究所の危機予備軍は取り除かれたのであった。
......被検体の自由を再度奪うことによって。
面白い! 続きが気になる! という方はぜひブックマークと下の☆をクリックお願いします。
感想、気になった点、世間話、その他ありましたら是非書いてください。




