狂科学者、工場を視察する。
「パパ~」
「何だハルト?」
「石鹸を作っているところが見たい~。」
「よし行くか。」
というわけで俺は石鹸作りの工房にやってきた。
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「ハルト、着いたぞ。」
「ここ?」
商会長である父さんを見かけた従業員達が案内してくれることになった。
目の前には石造りの少し大きな建物があった。三階建てか?
中に入ると顔に吹き付けてくる熱気、
これは冷房魔道具も作らないとな、と思いながら周りを見渡すと、そこには大量の窯と積み上げられた原料があった。内側には俺の作った加熱用魔道具が使用されているようだ。ここで加熱処理は行っているらしい。
そしてここで作られた不純物入り酸化カルシウムと炭酸ナトリウムは二階に運ばれてまたもや俺の作った分離用魔道具で精製、水に溶かしてから並んでいる大量の鍋で加熱されつつ、油と混ざり合う。
そんで高濃度の食塩水で塩析した後に三階で型に詰められつつ下から換気用の穴を通じてやってくる熱気で乾燥も促進していると。
なんだ。割と文明的な工程じゃないか。もっと手作業でやっていたのかと思った。
「意外と効率よさそうだね。」
「最近ようやくここまで来たんだぞ? ハルトが魔道具を提供してくれたおかげだ。」
「えへへ。」
この分なら魔道具を開発しつつ知識を与えていけばすぐに発展しそうだ。
そこまで広い場所でもないので視察は短時間で終わった。
そのまま父さんに抱きかかえられながら町を歩いていると......
「......ねえ、パパ、あれ......なに?」
子供達が風船らしきものを膨らませているのが見えた。
......魔力を込めて。
「あれか? あれは魔水を使ったおもちゃだ。」
「魔水?」
「そういうことは知らないのか......風船はわかるか? ゴムの薄いおもちゃだ。」
「うん。」
「魔水っていうのはな、ちょっと魔力を込めると途端に湯気に代わる水だ。私も小さい頃はよく遊んだ。」
......なんですと!!??
「原料は?」
「原料? 水に魔石の粉を溶かすだけだが?」
魔石の粉、溶けるのか......ついでに揮発もするのか......
さて、みんなはわかったかな? この魔水とやらで俺が思いついたこと。
俺が前世で研究者時代に書いていたレポートの一つに、人体の筋肉を全て強靭な人工筋肉へ置き換えるというものがあったんだが、課題として人工筋肉の駆動力となる電力や圧力用のパイプやら銅線やらが多すぎるという問題があった。
地球の人工筋肉っていうのは動力で分けると四種類ほどあって
1、空気圧
2、油圧(ター〇ネー〇ーみたいなやつ。)
3、温度変化
4、電圧
で動くものがポピュラーだ。
だが人体を模倣するとなると必要数が多すぎるため、それらを自由自在にコントロールするための技術が必要だった。
だがこの世界、魔法陣の中に使用者の意図を酌む模様というとんでもないものがある。そしてスペースを取らない新しい駆動力に加えて魔法陣という抽象的な命令を変換できる存在。
......素晴らしすぎる。
今世では少しタイプが違えども魔水の蒸気圧方式が採用できる。これで俺の人体強化研究も進むというものだ。
俺一人でもこの素晴らしさに気付けるというのに、なぜこの世界の住人はこんなにも宝の持ち腐れをしているんだか......ハア。
技術革新を起こすまでの道はまだまだ遠いな......
微妙にめんどくささを感じてきたハルトであった。




