狂科学者は創る(3)
さて、サンプルはできた。
ハルトは作成したサンプルを台の上に置き、解析を始める。
物理的に、正確に、微細に。
顕微鏡代わりの魔法陣は魔道具に原子サイズで刻まれた魔法陣の状態を解析していく。
解析結果はディスプレイに視覚情報として映し出され、ハルトへ事実を示す。
どれどれ......
「なん、だと......。」
そしてハルトは固まった。
解析結果として映し出された物は、大量のいびつな形をした粒子と、線。そしてその線で描かれた魔法陣。
粒子の方はわかる。
電子や陽子、その類いだ。
素粒子の性質上様々な形をとりうることぐらい知っている。
だが問題は......
仄かに光る線という二次元の存在があることだ。
拡大しても縮小しても変化せず、厚みもなければ横幅もない。
ただの線。
重点的に解析をかければ現れる魔力反応。
それは線が魔力であることを雄弁に語っていた。
魔力の魔法陣がなんの操作もなく物質界の二次元に固定されている。
魔法陣が魔力供給なしに顕現している。
そこにハルトは驚いた。
そして同時に納得した。
だから俺は魔力を見つけられなかったのだ......と。
ハルトはずっと魔力が三次元に顕現していると思っていた。
だから魔法陣は実体化するのだと。
三次元の神によって二次元が形作られるように。
しかし違った。
魔力は二次元において固定化される。
それでも見えるのは当然だ。
何せこの世界には魂というセンサーがある。
だがそのセンサーは決して三次元の事象のみを感知しているわけではなかった。
高次の存在から低次のものを観測するのは容易だ。
我々の目には点も直線も絵も等しく平面に見える。
そういうことだったのだ。
......道理で三次元の実体あるものとして見つけようとした俺には見つけられなかったわけだ。
魔法陣を刻むということはその魔力を固定するということにその本質があったのだ。
ならば......
手元にある素材で検証実験を行うハルト。
「......やはりそういうことか。」
そこにあるのは鉄板の魔道具。
その何処にも陣は刻まれていないが正常に稼働する魔道具だ。
別に刻む必要もない。
魔法陣の形に魔力の線を配置してやれば良いだけの話。
二次元のそれはどこにでも置ける。
刻む方式が定着したのは単純に魔力を置くというイメージがしやすかったからなのだろうな。
ならば、残る問題はかなり少ない。
魔法陣をいかに集積させるか。
そして配置するか。
前者は既に確立した技術だ。
二次元とはすなわち平面。
平面で存在する魔法陣は交わろうが互いに干渉されない。
そして二次元に体積は存在しない。
ならばそれぞれが円であることを利用して、理論上無限個の陣を小さな球体に纏めることができる訳だ。
連結して回路を構築させるためのスペースも無限。
残る問題は......
いかに配置するかだ。
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