狂科学者は命の恩人?
撤収したハルト一行は研究所の支部に到着した。
スピードが肝要な最初は何とか乗り切れたが、まだゆっくりはできなさそうだ。
今現在、頸動脈から栄養と酸素を供給して生命を維持しているが、早く首から下をつけてやらないと色々と問題があるのだ。
主に元死刑囚の精神が。
なので研究所から送らせた木箱をどんどん開けていき、梱包された部品達を支部の作業場で手早く組み立てていく。
出来上がるのは骨と筋肉の剥き出しになった人型。
随分前にネズミの脳味噌を連結させまくった時の実験機だ。
少し配線を纏めたりしてスッキリさせながら組み立てる。
ちなみに今回は首から上は残しておく。
人の神経系はネズミより複雑だから、接続に問題が出る可能性が高いのだ。
もし目が覚めた時五感が不調だと周囲の状況把握や己の全身を認識できないからな。
そういうパニックは極力避けたい。
出来上がった実験機(改)の首元に脛骨を固定し、人工筋肉で更に固定してから生命維持装置を胴体の空洞に収める。
生命維持装置で生命活動を維持させている首から下を助手に運ばせ、各種内蔵から欠片を切り取り、培養液で満たされた容器に入れて、治癒魔法をかける。
治癒魔法で少し調整を加えれば内臓片は増殖を始め、臓器の機能を取り戻すので、それも生命維持装置と繋げて脳と繋げる。
神経を少し拝借して脳幹と内臓を繋げれば、生命維持機構の完成だ。
こんな遠回りなことをしなくても生命維持機能には問題ないだろって?
俺も最初はそのつもりだった。
しかし人間の精神というのは娯楽がないと腐るのだ。
栄養剤だけでは食欲は満たせても、食事の娯楽は失われる。
飯を食って満腹になる感覚は、栄養剤だけでは作り出せない。
首から上は健在なのもあって、味覚はあるのに食事はできないなんて状況はストレスがたまるだろう。
と、何となく思ったのだ。
この魔力の信号で満たされた器の中で味覚や内臓の動く感覚は、肉体を脳が認識する助けになるだろうしな。
最後に会話するための装置もつける。
と言っても声帯は健在なので気流を作り出す魔道具を埋め込んで呼吸中枢と繋げるだけだけどな。
そんで最後に外装を軽くつけてから服を着せ、終了だ。
細かいデザインは後で応相談だな。
後は起きるまで待っていれば良い。
最初に俺の顔を見ることで深層意識に俺の存在を命の恩人として刻み付けるのだ。
そしてハルトは元死刑囚達の目覚めを待つのであった。
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