狂科学者は謁見する
コンコン。
「誰だ?」
「王命により貴殿を迎えに来た。」
「意外と早かったな......制服で問題ないか?」
「問題ない。」
「そいつは良かった。」
そのまま校門まで歩いていき、止められていた馬車に乗るハルト。
進み出す馬車に揺られながらハルトは考える。
一応この世界での作法とやらは習った。
謁見するときもそれで問題ないだろう。
というかこの馬車、乗り心地最悪だな。
平民には粗悪品がお似合いだってか?
まあ良い。
そんなことでは寛容な俺は怒らないんでな。
ん? つい最近大人げない報復をしていたじゃないかだって?
知らんな。
さて、物事には対価が必要だ。
俺は魔道具を譲渡する代わりに対価を要求する権利がある。
何をもらうかは未定。
今から考える。
魔道具......大したものないだろうし要らんな。
金......まあ貰えるだけ欲しいものだな。具体的には六桁くらい。
地位......要らん。面倒臭い匂いしかしない。
女......思春期がまだの俺に何をしろと?
家......それこそ要らん。
死刑囚......一番欲しいかもしれんな。具体的には処刑直後に全身の所有権を貰いたい。
こんなもんか?
取り敢えずぶっちぎりで死刑囚が欲しいという結論を出したハルトは満足げに頷き、背もたれに体重を預けた。
****
「降りろ。」
はいはい。
降りれば目の前には王宮のでかい門。
堂々と迎えの後をついて歩く。
そのまま謁見の部屋まで直行だ。
無駄にでかいドアを開ければ随分と人気のない謁見の間。
目の前に王冠を被った王が堂々と座り、周囲に召し使いが数人。
貴族はも数名。
全員の視線が集中する中、ハルトは堂々と歩き、下段の赤ラインの手前で立ち止まり、片膝をついて頭を下げた。
「お前がハルトか。頭を上げよ。」
その言葉を待ってから頭を上げる。
「お前が学園の実習で製作した魔道具、我が解析機関に提供してもらえるか?」
ハルトは威厳が伝わる言葉に全く物怖じせず、王の目を真っ直ぐ見返し、
「問題ありません。ですが対価として条件を一つ。」
「ふむ、確かに対価は渡さねばなるまい。言ってみよ。」
「死刑囚の生殺与奪権を四、五人分程戴きたい。」
「......なに?」
想像の斜め上の要求に一瞬だが目を丸くする王。
「四、五人程生きている死刑囚をそのままそっくり戴きたい。」
「お前......何をするつもりだ?」
「いえ、そんな大袈裟なことではないですよ。ただ私個人の好奇心を満たしたいだけです。誤って殺してしまっても死刑囚なら問題もありませんし。」
十歳が笑顔で死刑囚の身柄を要求してくるなんて誰が想像できようか。
それも王の目の前で。
そんな前代未聞の出来事に凍りつく謁見の間。
「......良いだろう。何人かに絞らせてもらうが、そこからは自由に選べ。」
その静寂を王が破る。
そしてハルトも口を開く。
「......こういう場合、感謝をする必要性ってありますか? 一応対価と交換した形なので、取引と捉えればその必要性は感じられませんが。」
そしてまた凍りついた。
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