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狂科学者の気紛れ


 今日の講義もつまらなかったな......。

 そう考えながら小脇に教科書の入った鞄を抱え、寮への道をのんびり歩くハルト。

 周囲には誰もいない。

 一人が好きなハルトは少し遠回りをして寮に帰っているからだ。

 いつも通りの夕方のウォーキングだ。


 まあいつもより少し騒々しい気もするが。

 


 「......ん? ありゃ、何だ?」


 何かに気付いたハルトは足を止める。

 バカみたいに広い前庭の隅で女生徒達がなにかやっている様だ。


 気になったのでマジックサイトを掛け、望遠機能を使って観察を始めると......


 『......んたが私より成績がいいなんてあり得ないッ!』

 『どうせずるしたんでしょ? やっぱり平民って意地汚いわね。』

 『そうよそうよ!』

 『白状しなさいっ!』

 『わ......私は......』


 マジックサイトで増幅された声が聞こえてくる。

 おうおう、やってんなぁ。

 苛めか?

 何処の世でも集団になった女子って怖いのな。

 派閥を作った瞬間にイキり始める。

 高い声がうるさいぜ。



 まあ良いか。

 そう思って踵を返そうとしたハルトの耳に、

 『どうせ首席のハルトって平民もずるしているのよっ!』



 ......ピシリ

 ハルトは凍りついた。

 思考は何処までも冷静に、固まった。




 ......?

 今なんて言った?

 おかしいな......マイクが不調を来しているのか?


 首を傾げながらログを解析するが、不具合のあった形跡はない。



 OK。

 こちらへの敵意及び侮辱は確認した。

 ならば即刻、反撃あるのみ。



 ハルトは短気だ。

 不便なことがあったら一日以内に魔道具を開発して改善する程度には。

 突然の罵倒にハルトの頭のネジが緩んでしまうのも仕方ない。


 元々緩んでいるので明日には行方不明になっているかもしれない。

 ハルトは冷静に、だが急激に敵意のボルテージを上げていた。


 勝手に怒っているだけであれば問題はないが、そこは今世のハルト。

 反撃する手段を複数保有していたのが彼女等の不幸だった。



 「何か用か?」

 神速で近寄った直後にそう威圧しながら笑顔で声を掛ける。

 彼女等の目にはハルトが瞬間移動しているようにしか見えなかったのも無理ない。

 

 「っ、い、い、いえっ何でもありませんわっ!?」

 お手本のような吃り方で誤魔化そうとする何処ぞの貴族令嬢。

 だがそんな言い訳、今さら通じるわけなかった。


 「ほお......そうか、俺がずるをして主席になったと侮辱をしたのは何でもないことなんだな? そんなに言うなら見せてやる。」


 存在感50%解放。

 これですでに年を重ねたドラゴン約十頭分。

 あえて半分にしたのは理性が残っている証か、はたまたいたぶっているだけなのか。

 苛められていた女生徒まで巻き込んで存在感の嵐が吹き荒れる。


 

 この時、この場にいた女生徒達は知った。

 

 ―――格が違う―――


 と。

 噂が随分と大人しいことに気付き、

 その性格の無法さに気付く。

 首席という椅子と目の前に立つ同年代のアンバランスさを知った。




 んで、


 「おいおい......お前等、腐っても貴族令嬢だろ?」

 揃って座り込み、黄色く匂い立つ水で制服を濡らしていた。

 

 「さて、食堂行くか......あ?」

 そのまま放置して食事に向かおうとするハルトを引き留める手。


 後ろを向けば、先程苛められていた誰かさんだ。

 失禁せずにすんだらしい。

 なかなか精神の太い女子のようだ。


 「あの......。」

 「ん? お礼は要らん。ただ俺に対する侮蔑へ抗議しただけだからな。」

 「......それでも、ありがとう。」

 律儀な奴だな......

 顔をよく見ればそれなりに美人さんだ。

 まだ十歳だが、将来性は十分有りそうだな。


 だからどうしたって話だが。

 俺はロリコンじゃない。

 

 

 「気にすんな。じゃあな。」



 これ以上ここに居ても意味はないので今度こそ食堂に向かったハルトであった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 基礎技術が広まってどのようになるのか、これによる秀才も犯罪者も出るだろうし社会の起爆剤となるのか物語がどう膨らむのか、より楽しくなりそうです
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