狂科学者、魔法陣を刻む
教科書によると、魔法は以下のようなものだ。
魔力はありとあらゆる生物が持っているエネルギーで、思念によって放出される魔力波とそれを実体化する魔法陣が揃うことで作用をもたらす。
魔力量については容量と伸び方において個体差が激しい。
魔法が発動するときには、三節以上で構成される詠唱で形作られる魔法陣が発動地点に浮かび上がる。
魔道具は魔力を込めた魔道具制作用の鉄筆で材料の表面を発動させたい魔法の魔法陣と同じ模様に彫れば作れるらしい。
魔道具を使うときにはただ魔力を込めるだけで発動する。
詠唱は、基本的に頭から属性指定、形態指定、効果指定の単語を連ねる。追加で四節目以降に細かい指定も入れるとオリジナルの魔法も作れる。
ただし、同じ魔法でも詠唱の長さや単語によって魔力効率が大きく変わるため試行錯誤が必要である。
例えば火の玉を飛ばすときは、
「炎よ、渦巻いて、焼き尽くせ」
みたいにするとトルネードみたいな形の火球が着弾地点を燃やす。
一方で、
「炎よ、球になりて、爆破せよ」
にすればまん丸い火球が着弾地点で爆発する。
もっと言えば、
「火球、あれ燃やして」
でも一応発動するが、かなり魔力効率が悪い。
......なるほど。
じゃあ、と俺は考察した。
「火球爆」
とかにしたらなんか効率よさそうだな、と。
ま、もし効率が良すぎて大爆発起こしたら俺が死にかねないので今はあきらめるとして、
やりますか。
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俺の目の前にあるのは魔法の教科書を買った後の僅かな小遣いをはたいて買った鉄筆と安物の石板。
転生してからすっかり忘れていたが、鑑定眼を使ってみると脳内に、
『安山岩の板』耐熱性の高い石板
と出てきた。面白いな、これ。どうやら任意発動でパッシブではないようだ。
石板と鉄筆は一歳児が外に出て買うわけにもいかないので商会の商品を小遣いはたいて融通してもらった。
さてと、
まずは発動させたい魔法を一回発動しなければならない。
今欲しいのは適切な高温で加熱できる魔法。石鹸量産化への一手だ。
周りが燃えると危ないのでアランがくれた庭の隅っこの実験場所に移動する。
そして石板を地に置き、魔力を放出して、
「炎よ、八百五十度で、焼き上げろ。」
と、石板を起点に詠唱した。
するとあら不思議、高温の炎が現れた魔法陣に沿って立ち上る。
魔力を切れば、魔法陣の形で綺麗に変色した安山岩が見える。
円に内接した正三角形が上下さかさまに重なり合い、中心に何やら文字っぽい模様がある。
「......すげえな、これ。」
ついつい素のしゃべり方に戻ってしまうハルト。
それぐらい衝撃的なものだった。
ファンタジー要素が皆無な研究生活を送っていたことも相まって、ハルトは非常に興奮していた。
「......はっ! いけないいけない。」
気を取り直して、持参した紙束に手早く魔法陣を書き写した後、石板を魔力を込めた鉄筆でなぞる。
魔道具制作用の魔道具である鉄筆は、粘土を削るかのように抵抗なく石板に陣を刻み付けた。




