狂科学者は命の求道者
「......と言うわけでこの計算式の答えは23です。」
現在、算術の授業中。
ハルトは何をしているのかというと、
「すぴー」
頭を机につけながら沈黙している。
その下にあるのは全ページの問題を解かれ、用済みとなった教科書。
この学園は平常点という制度がないので、ハルトは熟睡していた。
テストの点がいいので教師も何も言わない。
それどころか寝ているせいかちょくちょく漏れる存在感にビビる余り、注意することを忘れている。
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「......以上の理由からこのウェルマニア王国は目覚ましい発展を......。」
「すぴー」
頭の下には歴史の教科書。
日に二時間ある座学は要らんとばかりに寝ている。
たまに魔法陣の考察をしているときもあるが、授業のせいで集中できずに突っ伏す。
首席とは思えない態度だが、それでテストの点だけはいいので何も言えない。
起きている武術と魔法の授業でも眠そうな目をしながら組み合う相手を叩き伏せ、なんとなく的を破壊する。
実に悠々自適な毎日を送っていた。
前世だったら携帯などと暇を潰せるアイテムの一つや二つあったのだが、生憎今世にはそんなものはない。
寝るのが最大の暇潰しなのだ。
しかし寝ることにもそろそろ飽きてきた。
そんなハルトの思考は当然暇潰しができるアイテム開発へ向かう。
スイッチが入ったハルトは早速授業を意識外に追いやり、羊皮紙にぐちゃぐちゃと構想を書き留め始める。
あまりにも素早い切り替え様に隣の席に座っていた生徒は驚き、インクを溢したが関係ない。
目指すはマジックサイトほど大きくなく、余り目立たないアイテム。
魔法陣の回路は更に千倍圧縮すれば収まるだろ。
だが視覚情報が無いのは辛い。
音声だけでは何もできないからな。
いっそのこと網膜に直接幻影を投影するか?
それだったら既存のゴーグルタイプと違って視界を覆わなくても映像を流せる。
うむ、それで行くか。
後はつける場所だが......耳の後ろとかどうだろう?
固定具さえしっかりと作れば頭蓋骨に三本程度ボルトを打ち込むだけで常時装着できる。
そっから直接脳の視床へ干渉できれば音声データも耳を通さずに受け取れるしな。
まあまだ実験してないが、今までの経験上、うまく行く可能性は高い。
指先にチップを埋め込んで仮想キーボード......
悪くない。
今度の長期休みでチャレンジしてみるか。
それまでに試作品は完成させておかなければいけないな。
......にしてもとうとう自分を改造するのか。
不安はないが、どこか感慨深いものがあるな。
夢が叶う見通しがついたからか?
外科的手法によるヒトの可能性の開拓。
身体機能の拡張、思考体系の昇華、遺伝子レベルでの種の改良。
果てには寿命や物理的身体が持つ制約からの解放を求めて前世のハルトは科学者となった。
そしてその意思は肉体が代わり、世界が変わった今でも健在だ。
ハルトが渇望するのは完成された存在への道筋。
神にも達成できないゴールはハルトに無限の探求を課す。
神の手で選ばれ、器と時間を受け取ったハルト。
その人生がどのような道筋を辿るのかは......神すらも知らない。
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