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狂科学者は無自覚系教師


 「ハル君?」

 食堂から追いかけてきたユアはそう話を切り出す。

 「何だ?」


 「えっとね、さっきはなんであんなことを言ったのかなって。」

 あれか。


 「知りたいか?」

 「うん。」

 と首を縦に振るユア。


 

 今までは放置していたが......魔法の授業も今後はあるしここらで認識を共有しといた方がいいかもな。

 ユアは正式な教師からこの世界にある既存の魔法を習ったことがない。

 その価値観が示す『魔法』は我が研究所で使われている種類の魔法そのもの。

 無駄に装飾を付けた詠唱は無く、威力の調整もイメージを除外して魔法陣の調整で対応することで最大限の安定を保つ。

 そこには雑多なヒトの思考は干渉せず、論理に基づいた最短の処理を行うことで圧倒的魔力変換効率を誇る。


 既存の陣とは異なり、公式によって導かれる汎用性が高い魔法。

 それは試験の結果からも解るようにあまりにも異端。

 異質であり。

 異様だ。



 魔法陣を組み立てる公式を既に知っているユアは恐らく混乱するだろう。

 何で学園はこんなに威力の低い魔法しか教えないのだろう、と。


 まあこんなこと言っても解るわけないので簡潔に、



 「俺が教えた魔法はここでは恐らく、習わないからな。」

 「......何で?」

 「一般的に言う魔法はもっと無駄が多いんだよ。陣の規則については大分前に教えたよな?」

 「うんっ。」

 「その前に『命題』や『魔力変換効率』、『属性分類』についても結構説明した筈だ。」

 「うん。」



 「それらを一度でも良いから俺以外の誰かから聞いたことはあったか?」

 「ん~? 多分無いと思う。」

 「理由はそれだ。ユア、お前は俺が教えたことをしっかりと理解してきた。研究所で遊んでいたせいもあって魔力の操作も慣れている。だから魔法の規則についても簡単に理解できる訳だ。皆よりも頭が良いってことだな。」

 「えへへ。」

 「だけどさっきの奴等にはそれを理解する知識の土台がない。あっても理論通りに魔法を行使するだけの器用さがない。はっきり言って薬草の効果を知らずに薬を作るぐらい無謀だ。」

 

 「......そうなの?」

 「そうだ。皆魔力を垂れ流していただろ?」

 「そう言えば......勿体無いよね。何で節約しようとしないんだろう? ハル君みたいに無尽蔵じゃないのにね。」


 俺も無尽蔵ではないぞ?

 「だから下積み不足と言ったわけだ。」

 「......ハル君?」

 「何だ?」


 また何かあるのか?


 「ありがとう。わたしに魔法を教えてくれて。」

 そう言ってパァっと花の咲くような笑顔を浮かべるユア。


 感謝されて悪い気はしない。

 それにしてもこの俺が教師紛いのことをやっていたとは......な。

 随分とこのガキに構ってやっているらしい。

 「くくっ......どういたしまして、とでも言えばいいか?」


 研究第一だった俺がこれ程変わるとは......世の中何が起こるかわからないな。

 そう可笑しそうに笑うハルト。

 


 「あははっ。」

 それに釣られてユアも楽しそうに笑い出す。

 


 暫しの間、二人は笑いながらその場に立つのであった。



 ......それを眺める視線には気づかずに。



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