狂科学者は興味がない。
「誰だお前?」
その言葉にピシィッと固まる空気。
「おっと、まさか僕を知らない者がいたとは......僕はアレク·ジェラード·ウェルマニア。この国の第一王子だ。」
「あ、そう。じゃ。」
貴様には用はない。
そう言ってくるりと踵を返し、ユアの方へ向かう。
この国の名前はウェルマニア王国。
奴はそこの第一王子だったようだ。
だからなんだって話だけどな。
ハルトは縛られるのが嫌いだ。
メルガルト公爵と親交を深めるのは縛られない程度の恩恵を受けられるからだ。
主に商会の利益として。
だが王子となると話は別だ。
権力の匂いしかしない。
じゃあ逆に逆らってはいけないのではって話になるが、別に問題ないだろう。
こいつの魔力は俺の千分の一未満。
使い方も洗練されていないし、身体能力も常人並み。
単独で俺にちょっかいを出せる力量もないし、護衛の騎士達が纏めて掛かってきても魔法無しで吹き飛ばせる。
逆に殺さないよう気を付けないといけないな。
今の俺だったら国の象徴である城も秒で消せる。
ユアで既に手が一杯だというのにこんな扱いに困る重りの追加は要らん。
だが......今世の出資者かつ協力者である人達に迷惑がかかるのだけは避けたい。
主に両親とその従業員。
ならばどうするべきか。
決まっている。
国家を上げても手を出せないほどの戦力を整えれば良い。
別に無くても良いが。
あった方が落ち着いて研究できるというものだ。
技術というのは商売人なら誰もが欲しがる。
時には手段を選ばずに奪おうとしてくる。
そんな奴等に奪われる気は毛頭ない。
技術は革新と普及の速度が大事だ。
遅すぎるとこの世界のように停滞するし、速すぎると劇物となる。
石鹸もそろそろ製法を魔道具とともに売るという形で公開しようと父さんと話し合っているところだ。
勿論既存の製品の情報だがな。
流石に新作は出せんよ。
「ちょっと待ってくれないかい?」
なんか後ろがうるさい。
無視だ無視。
「どうした? ユア。」
「......何か話しかけられているけど、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。」
後ろで上品にこっちを振り向かせようと躍起になっているが気にしてはいけない。
所詮肩書きだけのお子ちゃまだ。
それよりは面倒くさいことは気にしないユアの方が数段話しやすい。
さて、先生のありがたいガイダンスを聞こうじゃないか。
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