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狂科学者の入学式


 今日は入学式。

 昨日のうちに合格者は貼り出され、絶望する者、踊り出す者、色々いたらしい。

 まあ全部合否を見に行ったユアから聞いた話だけどな。


 因みにユアは九位だった。

 歴史は満点とれる実力があったし、算術は勿論、大幅に差が出る魔法の試験でぶっちぎりの成績を出したため、武術で減点すればそれくらいになるだろうなって結果だ。


 悪くない結果でよきよき。

 


 現在は新入生が新品の制服を着てグラウンドにずらぁっと並んでいる。

 青を基調としたデザインでまあ、悪くない仕立てだ。

 俺とユアのは既に色々改造されていたりする。

 主に俺のが。

 ユアのは公爵にゴリ押されてしぶしぶやった。

 



 ユアのには治癒魔法や結界、魔力補充とかそこら辺。

 俺のには......色々だ。

 説明していたら入学式が終わってしまう。


 「......次は新入生代表からの挨拶です。」

 

 おっと俺の出番か。

 前に進み、軽く頭を下げてマイク的な何かを受け取る。

 一礼して、


 「今年度の新入生代表として挨拶をさせていただきます。ハルトです。まずは今年合格した皆さん、おめでとうございます。僕もこの王立魔法学園に入学できたことを心から嬉しく思っています。」

 とても残念に思っている。


 「これからは数年間、寮生活という慣れない環境で過ごすことになりますが、お互い助け合いながら生活し、学業に励めるよう、努力していきます。そして......」

 一人で楽しく研究をしていきたいと思います。


 ハルトは更に言葉を続ける。



 普通に見れば、真面目に元気よく挨拶をする美少年。

 よく見れば口元はピクピク痙攣しているし、目は死んでいる。

 ついでに指はマイク擬きを潰さないよう注意しているせいでプルプル震えている。



 そう、ハルトは美少年だったのだ。

 父親譲りの金髪と柔らかい目付き、母親譲りの蒼色の両眼や口元はその本性をうまい具合に隠していた。

 

 そして謎の威圧感。

 吐き気がするような臭い台詞を頑張って口から出しているため、存在感のコントロールが疎かになっているのだろう。


 会場に居る全員の背中に冷たい汗をかかせながらハルトは挨拶の言葉を並べる。


 つらつら......



 つらつら......



 「......以上を以って新入生代表の挨拶とさせていただきます。」

 

 パチパチ。



 拍手が少ないのは気のせいじゃない。



 挨拶にかかった時間、実に五分。

 

 長くも短くもない長さだが、垂れ流される威圧感が与えるストレスは徐々に蓄積し、疲労を起こさせたのだ。

 ハルトの挨拶だけで数十分も時間がたったように錯覚する者も少なくないだろう。

 貴族用の席に目をやればひきつり笑いをしているメルガルト公爵。

 貴族業界の化かし合いを重ね、鍛えられた表情筋でも耐えられなかったようだ。

 

 まあそんなことは気にしないのがハルトクオリティー。

 にこやかに一礼してスタスタと列に戻っていく。





 そのまま何事もなく入学式は進められ、クラス毎に別れて教師達からガイダンスを受ける。


 もちろんハルトはトップのファーストクラス。

 上位二十名の入れるクラスには勿論、ユアもいる。


 「ハル君~」


 こっちこっち~と手を振るユア。

 はいはいとめんどくさそうに向かうハルト。




 「やあ、君が先程の首席君だね? 中々素晴らしい挨拶だったよ。」

 突然後ろから聞こえてくる声。



 ハルトは横目に軽く見て、



 「誰だお前?」



 その瞬間、周りの空気は凍り付いた。 



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