狂科学者の台本作り
入学試験の合格発表。
それは基本的に三日後に張り出されるが、首席入学となった者には入学式の挨拶を考えさせるため、事前に通達される。
そしてその手紙はハルトの宿泊先―――メルガルト公爵家―――に届いたのだった。
宛先はハルト。
勿論一大商会の跡継ぎと言えど平民なので、苗字は無い。
ただのハルトだ。
「......入学式の挨拶か......忘れていたな。」
ハルトは首席合格に潜んでいる落とし穴を忘れていたのだった。
入学式で一人だけ目立つ。
それだけでも気分がいいものではないのに、その台本も自分で考えろと言うのはなんとも面倒くさい。
俺は目立ちたいのではなく研究をしたいのだ。
試験ではうっかり目立ってしまったが......挽回のチャンスは無いと?
世知辛い世の中だな全く。
試験が終わってからひたすら力加減の訓練をしたお陰で今や日常生活に支障のでないレベルに加減し、魔力を抑え込むことも出来るようになったが......驚いたりして気を抜けば一瞬で台無しになってしまう。
腕輪を着け直しても今一効き目が薄い。
これじゃいつ爆発するかわからない不発弾だ。
新しい拘束具を開発するしかないなこりゃ。
さてさて、取り敢えず挨拶を作らないとな。
そしてハルトはペンを潰さないように細心の注意を払いながら台本を書くのであった。
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