狂科学者の脳筋戦法
「......腕輪を着けずに受けてください。」
上の命令には逆らえません。
そんな心の声が聞こえそうな口調で帰ってきた誘導係は宣言した。
まじかー
少し空いた時間で色々加減を模索してはおいたが......果たして力加減、できるかな?
一応漏れ出ている魔力は最大限隠蔽して威圧感の軽減を図っているが......身体能力だけはやりようがない。
今まで拘束による高負荷の中で日常生活を送っていたから、十二分に力を出せてしまうのも問題だ。
現在の俺は石でも軽く握るだけで砕けてしまう。
皮膚の堅さが頭おかしいな。
最早人間と自分を定義できないね。
仕方ない。
全力で力を抜きながらやるしかない。
変に力が入った瞬間、今日が試験官の命日となるだろう。
全力で治癒魔法の行使が出来るよう準備もしておくか。
「分かった。」
「それでは......始めっ!」
そして始まる武術の試験。
木剣は......軽いな。
紙飛行機でも振り回しているのかと思うほど手応えがない。
数回振って感覚を確めた後、ゆっくりと前進する。
間違って跳び上がらないよう、細心の注意を払いながら。
目指すは向こうの木剣の破壊。
向こうが反応する前にやる。
それが最も安全だろう。
衝撃で手首がぶっ壊れても生きていれば治せるからな。
重心を前に傾け、地を軽く蹴る。
そうすれば反応できない試験官のアホ面がよく見える。
イケメンの部類だが......残念だ。
そして木剣同士をぶつけ合う。
パキンッと軽い音を立て、砕け散る木剣。
ついでにグキッと捻れる試験官の手首。
「これで良いか?」
と審判に問いかければ、
「しょっ勝負「イギャァァァァァァァァァァ!?」!?」
うっせぇ
はい治癒魔法どん。
瞬く間に治る試験官の手首。
試合は終わったし魔法を使っても問題ないだろ。
「......あれ?」
「勝負あり......です。」
こうしてハルトの入学試験は終わった。
強烈なトラウマをその場に居た者達への置き土産にして。
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