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魔王のパパと勇者のママと  作者: ひよこの子
第Ⅲ章 小さな聖女と幼き魔王
95/116

第95話

宜しければ、感想・評価お待ちしております。


「海越えか」


「ンな顔するな」


「すいません……」


 夜遅く。子ども達はもう寝入ってしまった時間帯に昨日と同じ三人が、広げた地図の周りで話し合いを行っていた。同じような光景のなかで、彼らに浮かぶ表情だけは昨日とは大きく異なった。


「いやいや、昨日の話でどうしてそうなる? 港は間違いなく警備が厳重になっているんだぞ?」


 二人から再提案された行動方針を聞いたハコブは困惑を隠す気も無く、厳つい顔を大きくしかめる。

 彼の言葉に、アドラは不服そうに、クリスティアンは申し訳なさそうにそれぞれ苦い顔を返していた。


「確かにかかる時間は圧倒的に短くなるが……、それほど急ぐ必要があるのか?」


「急ぐ理由はあるにはありますが、今回はまた別の理由でして……」


「うぅん……」


 ハコブが腕を組む。

 しかめた顔が更に渋くなっていく。しばらく唸り続けた彼は、大きな溜息とともに組んだ腕をほどいた。


「さすがに港の方にまでツテはねえぞ」


「分かっているよ。むしろここまでしてくれただけで感謝している」


「アドラの言う通りです。ハコブさんが居なければ眠らずの丘に行くことも、……あの子達を助けることも出来なかった。本当に、ありがとうございます」


「よしてくれ」


 無骨な手をひらひらと振る彼の顔が少し明るいのは、蝋燭の火で照らされているから以外の理由もあるようだ。


「あたしの部下と再会出来たらここのガキのことは伝えておく。しっかりうちで引き取るよ」


「ああ、期待せずに待っているさ。それで? いつ行くよ」


「可能な限り早く行こうかと」


「じゃあ、明日は準備で明後日だな。うちの連中にも伝えておく」


「食料はあんなもんで十分だな」


「ああ」


 アドラの質問には苦笑が返される。大剣と借り物の弓を担いだ彼女は一度山に入れば多くの種類の獲物を取って帰ってきた。獲物のほとんどが、通常は狩る対象ではなく出会えば逃げる対象なものばかりであったが。

 そして全てはレオのためにであるが、ベリーも多くの食料を貢いでくる。彼らが滞在した数日で驚くほどの食料が届けられ、急遽狩り班の8割を保存食作成班に振り直ししなければならないほどであったのだ。


「連れてきたガキの分も含めて十分すぎるほどの量だよ。そういう意味じゃ、むしろこっちが感謝しねえといけねえぐらいさ」


「もう少し栽培にも力入れたほうが良いんじゃねえのか」


 平原に構えていたアドラの村は、食料補給を狩猟にあまり頼ってはいなかった。それに比べると、ハコブの村はそのほとんどを狩猟・犯罪に頼る形となっている。


「分かるんだが、危険な山のなかで作ってもどうせすぐに壊されるんでな」


「それなら、もう少し部下を鍛えるんだな」


「はは、それこそお前基準で考えられてもな。なあ、兄ちゃん」


「え!? あ、えー、そ、そうですね」


「あ?」


「兄ちゃんが言えって言うから」


「言ってませんよ!?」


 クリスティアンを盾にする。

 楽しそうに笑うハコブにつられて、アドラも小さく笑みを零す。まあ、盾にされたクリスティアンだけは泣きそうであったのだが。


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