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魔王のパパと勇者のママと  作者: ひよこの子
街からの脱出
82/116

第82話

宜しければ、感想・評価お待ちしております。


「ちょっと!? はやく逃げないとッ!」


「そうだな」


「言っていることとやっていることが違うんだけど!?」


 チコが必死になってアドラの服を掴んで引っ張ろうとしても、岩のように彼女はその場から動こうとしない。

 老婆の店を出た二人は、わざと大通りで兵士に見つかった。すぐに路地裏へと飛び込もうとしたチコだったが、どうしてかアドラはその場に仁王立ちし迫り来る兵士をつまらなそうにただ眺めていた。


「来るって! 敵が来るってェ!!」


「うっせぇな、おい。これの蓋開けとけ」


「え? うぁッ!」


 彼女が投げよこしたのは、さきほど老婆からもらった小さなガラス瓶。少しだけ青味がかった美しい瓶であった。


「蓋? これの蓋を開けてどうするのさ!」


「いいから、蓋開けてそこでじっとしとけ」


 兵士との距離が十メートルを切った時、ようやくアドラは行動を開始した。背中に背負った大剣に手を……伸ばすことはなく、彼女が触れたのはいつもなら人が大勢集まっているであろう大通りの屋台の一つ。


「ふッ! がァァアアア!!」


「え……、ちょ、まじで……」


 車輪も付属しており、移動させることが出来るとはいえ、通常それは家畜の力と車輪を利用して動かすものだ。

 それを彼女は、持ち上げた。


「なッ!」

「はァ!?」


 さすがに兵士達にも動揺が生まれる。そんなことはお構いなしに、足が止まったのならこれ幸いと、彼女は持ち上げたそれを兵士たちへと、


「どけぼけぇえええええ!!」


 放り投げた。


 ――がしゃァァァぁああぁぁああ!!


「む、ちゃくちゃだ……」


「はっはーッ! この程度でびびってんじゃねえぞォ!」


 隊列が乱れた兵士達。破壊された屋台が土埃を巻き上げているなかに、大剣を手にしたアドラは飛び込んでいく。


「え? ぎぎょ!?」


 ――どごす


 不幸にも最もアドラの近くに居た兵士が最期に目にしたのは、大振りで振り下ろされたアドラの一撃。

 屋台が巻き上げた以上の土埃を発生させながら、兵士だったものは周囲に血脂をぶちまけた。


「ひィ!?」


「腰ぃ……抜かしてんじゃねえぞォ!」


 開けた場所で敵が大勢であるのなら、横薙の一撃を打ち込む方が効率的であるのだが、あえてアドラは大振りの振りかぶりを繰り返す。

 そのたびに周囲には破砕の巨大音が響き、そして食らった兵士は血飛沫をまき散らしていく。その様子は少し離れた場所に居るチコから見てもおぞましいの一言であり、攻撃の対象になっている兵士たちからすれば恐怖で身体を固めるには十分なほどであった。


 正気を取り戻し、兵士達が反撃に移れるようになった時には、二十人以上居た兵士の半数が肉塊へと姿を変貌させていた。


「うぁらァ!!」


 兵士が突き出した槍の一撃を回避して、ようやく彼女は横薙の一撃を行う。当てることを意識していない彼女の一撃は、兵士達に避けられるのだが、回避のために後ろに下がった彼らとアドラの間には距離が生まれる。


 その隙に、兵士に背を向けた彼女は一目散にチコのほうへとダッシュして、呆然としている彼を掴んで路地裏へと飛び込んでいった。



 ※※※



「そろそろ行くよ」


「うん」


「おー」


 場所は変わって、地下道に居るクリスティアン達。出口を固めていたはずの兵士達にざわめきが生じだしたのが、少し離れた場所で待機していた彼らの耳にも届いていた。

 複数の鎧を着込んだ兵士の足音が慌てた様子で離れていく。


「みんな、準備は良いかい。さっき言ったように一塊になって走るんだ」


 彼の後ろに控えていた子ども達は、一様にして異様なほどに顔色が悪い。だが、その瞳に宿るのは決意の炎。なんとしてでも生き抜いてやると思う気持ち。

 ……、アドラへの恐怖が理由ではないことを祈ろう。


「できる限り大きな声をあげて走るんだ。いいね?」


「おー」


「でも、本当に声を出して良いの?」


「静かに抜けるのならともかく、出口を固められていてこの人数だ。なら、こっちのほうが良いはずだ」


「もし兵士さんが道を塞いでいたらどうするの?」


「先頭は私が行く。固められていたらそこに魔法を放つから、その隙を抜けるんだ。そのあとはとにかくまっすぐ進むこと。ある程度進めば大きな川に出るから、そのあたりの茂みに隠れるんだ。レオくん、先導を頼めるね?」


「うん! 任せて!」


「おー? パパは?」


「私は少し留まって兵士を引きつけるつもりだ」


「おー……」


「……、アドラじゃないから普通に心配だって顔をするのはやめておくれ……」


「おー」


 ぽんぽんとモニカに背中を叩かれる彼の様子だけを見れば心配しないほうがおかしいのであるが、子ども達はその様子にむしろ笑みが漏れている。クリスティアンに任せよう。任せてみよう。そう思えるだけの行動はすでに示してくれている。


「じゃあ、行くよ」


 号令の元。

 全員が出口へと走り出した。


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