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第67話

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 司祭の役割は、女神様の御声を他の者に届けること。

 珍しい部類に入る司祭の役割を持つ者は、国に保護され約束された人生を歩むことになる。

 しかし、実際に女神様の御声を聞くことはそう多くはなく、司祭の役割を持っているにもかかわらず一度も御声を聞くことがなかった司祭も過去に存在したと言われるほどである。しかし、かと思えば頻繁に御声を聞く者も居る。


 女神様の御声をどれだけ多く聞くことが出来るか。それが、司祭という役割を持つ者たちのなかでの権力に如実に影響を及ぼしていた。


 カルロス高司祭と呼ばれる男は、そういう意味で言えば司祭としての才能のない男であった。

 四十歳も手前という彼の人生の中で、女神様の御声を直接聞いたのはたったの三度のみ。にも拘らず、彼が高司祭という地位にまで昇りつめたのは、ひとえに彼が持つ戦闘能力が故である。

 自身が持つ役割の才能のなさに青年期には気付いてしまうほどには諦めの良かった彼は、なにより欲深かった。


 権力が欲しい。

 分かり易い欲望に憑りつかれていた彼が取った行動は、まさかの山籠もりである。

 数年の月日が流れ、誰もが彼が死んだと噂することすら忘れてしまった頃に、彼は戻ってきた。圧倒的なる武力を身に着けて。


 すぐに彼は魔族との戦いの最前線へ赴くことを希望する。現王が、戦争派であることも重なり、戦いで武勲を立て続けた彼は見る見るうちに司祭としては異例の手段を以てして望み続けた権力を得ることになる。


「最近また姿を見なくなったって話は聞いていたが、まさかこんな薄汚ねえところでドブネズミみたいに暮らしているとは思わなかったよ」


「小さき物差ししか持たぬ者はこれだから困る。地下であるがゆえに薄暗いことは認めるが、ただそれだけでドブネズミなどと称するのだからな」


「ああ、悪い。そういう意味じゃねえんだ。ただ……、なんていうの? てめぇの体臭がどうにもこうにも臭過ぎてよ、ドブネズミだと勘違いしたわけなんだわ」


「…………」


 いかにも余裕ぶっている彼の額が、ピクリと反応する。噂通り、煽り耐性は低いわけだ、とアドラは彼のそんな態度を鼻で笑う。

 彼女は目の前の相手を煽りながら、周囲に気を配るのだが、どうやらカルロス高司祭以外に、この部屋に居るものは誰も居ないようである。


「眠らずの丘なんて大層な名前が付いているわりには、地下でそれはそれは下らねえことしてんじゃねえの。この塔なんだろう? よく分かんねえが、丘が眠らない理由ってのは」


「それを教えると思うか、山賊アドラ」


「おっと、こっちの名前も知られているわけで。まったく嬉しくはねえな」


「今回の勇者に汚点があるとすればそれはお前だろう。知りたくなくても名前は頭に入る」


「はは、それは否定しねえよ。それで? これが魔法具みたいなもんだと仮定したとしてよ」


「同じことを言わすな、それをお前に教えるとでも」


「エネルギーはガキの肉体か」


 ()()()()()()()()()()()優しい高司祭に、アドラは髪の毛を苛立ちまぎれにかきむしる。

 剣が欲しいな。と心底思いながらも彼女は両の拳を握りしめ、


「じゃあ、破壊すっか」


「……あまり、調子に乗るなよ」


 まさに司祭様と言うべき恰好であるケープを脱ぎ捨てながら、彼はアドラを睨みつけた。


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