第74話 ニンモートを脱出しよう
突然、悪魔族が2体から襲撃を受けたギルドだったが、俺とカイナで何とか悪魔族を1体ずつ撃破することができた。
しかも、俺に至っては、剣術スキルがついに6となった。
これで、飛躍的な力を手に入れたわけだ。
「そうだ、ミリーちゃん」
悪魔族討伐の余韻も待たずにカイナがそういって小屋スキルを発動した。
「カイねーちゃ」
小屋スキルの中からミリーのそんな声が聞こえた。
「ねっ、すぐ戻ったでしょ」
「うん」
なんだか、よくわからないが、たぶんカイナはミリーにすぐに戻ると伝えていたのだろう。
「ノラにーちゃは?」
そういう声が聞こえたので俺も小屋スキルの扉から中をのぞいた。
「ここにいるぞ、ミリー」
「あっ、ノラにーちゃ」
ミリーは嬉しそうに俺に突進してきた。
「おおう、ミリー、いい突撃だな。よしっと」
俺はそんなミリーを抱き上げた。
「まるで、親子だな。お前ら、まぁ、それにしても、まさか、お前ら、2体の悪魔族を討伐しちまうとはな」
ここでギルドマスターたちがあきれながら話しかけてきた。
「ああ、もはや、俺たちよりも強いんじゃないか」
「そうかもな」
「そんなこともないと思うけどな」
総合的には、俺とカイナではギルドマスターにはかなわないだろうし、他の連中だって、たぶん相当苦戦することになるだろう。
そう、俺とカイナはレーヴェとレイラのおかげで悪魔族に強いだけなのだ。
「それで、お前ら、これからどうする。やはり、ニンモートを出るか」
「そうね。ミリーちゃんのためにもその方がいいと思う」
カイナの言う通り、ミリーは獣人族、どちらにしても人間主義者がいるここニンモートでは生きづらいだろう。ここは、勇者王国あたりまでも連れて行った方がいいだろう。
「そうか、まぁ、それがいいだろう」
その後、俺たちはギルド内の片づけを手伝った。
「それじゃ、俺たちは、行くぜ。本当に引っ越し手伝わなくてもいいのか」
「ああ、大丈夫だ、こっちも異空間ポーチがあるしな、悪魔族討伐したお前らにそこまで甘えられねぇよ。それに、ミリーのためにも早くニンモートを出る必要があるだろうしな」
そうギルドは今回の襲撃でハンターたちにバレたことになる。のんびりとしていると最悪ハンターではなく領主の兵がやってくることになる。
そうなる前に別の場所に映ることになった。
「それじゃ、また」
「バイバイ」
カイナに続いてミリーが手を振った。
「おう、気い付けてな。それと、ミリー、2人の言うことを聞くんだぞ」
「うん」
この短時間でギルドマスターたちは、完全にミリーに父親みたいな目を向けている。
それから、ミリーと俺はいったんカイナの小屋スキルに入った。
なにせ、ミリーはともかく、俺もまた小屋スキルの中にいたので、入るときに身分証を提示していないからだ。
そうして、少し小屋スキルでミリーがベッドの上ではしゃいでいるのを眺めていると、カイナが入ってきた。
「もう大丈夫よ。って、ミリーちゃん、ずいぶんと楽しそうね」
カイナもまたミリーを見て目を細めた。
「うん、たのしいよ」
「そう、でも、あまりベッドの上でははしゃいじゃだめよ」
「うん」
カイナに言われてミリーも素直に従った。
「それじゃ、そろそろ出発するか」
「そうね」
それから、俺たちは小屋スキルから出て歩き出した。
俺とカイナはいつものように歩いているが、ミリーは嬉しそうにヴォルフに乗っている。
そんな風に東に向かった俺たちの道中は来るときよりはわずかに早くなった。
その理由は、簡単で街にはほとんど入らなかったからだ。何せ、こちら側は人間主義者が多い、そのためミリーを連れて街に入ることができなかったからだ。
まぁ、ナイヘルではないから、高額の通行料を払えば入れることは入れるが、まだ幼いミリーにはつらい思いをさせる可能性があったからだ。
というわけで、ナイヘルを出て約1か月、俺たちはようやくニンモートの玄関口ともいえる港町にやってきていた。
「やっと、ついたな、これで、ミリーも街に入れるぞ」
「やったー」
現在ミリーは俺とカイナの間で両の手をつなぎ歩いており、ヴォルフは戻ってもらっている。そうしないと、街が大パニックになるだろうからだ。
というわけで、城門の前までやって来た。
「おおきいね」
「そうね。ここから、街に入るんだよ」
「へぇ」
「おう、お嬢ちゃん街は、初めてかい」
「!」
突然警備兵に話しかけられてミリーはびくっとなって俺の後ろに隠れてしまった。
「あはははっ、急でびっくりさせちまったなぁ、悪い悪い」
そんなミリーを見て警備兵も笑っている。
「あははっ、悪いな。ほら、ミリー、大丈夫だぞ」
俺はそういって、ミリーの頭を撫でた。
それを受けたミリーはようやく俺の陰から顔を出して警備兵を見た。
そんなミリーを警備兵は笑いかけていた。
「う、うん、こんちゃ」
「おう、こんにちはだ。さて、身分証を出してくれ」
そういわれて俺とカイナは当然冒険者カードを、しかし、ミリーは持っていない。
「はいよ、っで、この子は、持っていないんだが」
「そうか、じゃぁ、通行料を払ってくれ、通行料は、子供だからな半額の200バルトだ」
200バルト、半額でということは大人なら400バルトかかるというわけだ。
これは、俺がミルダルタで払った金額の倍でもある。まぁ、でもこれでもこれまで支払ってきたニンモートではかなり安い方だ。特にミリーのような獣人族に対してと考えると破格といえるだろう。
「そうか、それじゃ、これを」
だからこそ俺も快く支払った。
「おう、ようこそ、楽しんでくれ」
そういって警備兵はミリーに笑いかけてくれた。
「バイバイ」
それが伝わったのだろう、ミリーもすっかりこの警備兵になれ、手を振っている。
というわけで、俺たちはついに何とか、ニンモートを出るための港街にたどり着いた。




