第70話 襲撃されたギルド
「今日から3人で使うから」
俺は一瞬カイナが何を言っているのか理解できなかった。
はっ、3人で使うっていったか、いやいや、俺の聞き間違いだろう。
「ああ、そうだな。カイナと、ミリーの2人で使えばいいだろうな」
「何言っているのよ。言ったでしょ3人でって」
「いやいや、何を言っているんだ。カイナ」
さすがに俺も2度も聞き間違うことはない。しかし、そうなると問題が出てくる。
「ミリーちゃんが使うのは当然として、そうなると、ミリーちゃん1人になるでしょ」
「ああ、そうだな。だから、カイナが一緒にいれば問題ないだろう」
「そうよ。でも、そうなると、あなた1人でテントってことでしょう」
「俺としてはそのつもりだったけど」
俺はそれぐらい当然だと思っていた。
「そんなの、悪いじゃない。だから私もすこし迷ったんだけど、3人で使おうと思ったのよ」
そういって、カイナは少し顔を赤らめた。
「えっと、で、でもさ。ベッドが1つしかないんだけど」
そう一番問題はベッドが1つだということだ。
俺はソファか、まぁそれでもまったくもって問題ないが、そのソファは俺が寝るには少々小さいように思う。
そう思いながらソファを見ていると、カイナが言った。
「ノーランもこのベッドよ」
はっ、俺はまた自分の耳を疑った。
おかしいな、俺は結構耳はいい方だと思うんだけどな。
『大丈夫よ、ノーラン、私にも聞こえたわよ』
とここで、レーヴェからの指摘が入った。
「つまり、私と、ミリーちゃん、後は、ノ、ノーランでこのベッドを使うのよ」
カイナは、すでに顔が真っ赤だった。
「えっ、えー、いやいやいや、それは、まずいだろう」
カイナと組んで同じ部屋で寝泊まりをする。これまでも何度もあったことだ。しかし、さすがに同じベッドで寝るなんてことは一度もない。
俺の頭はパニックだった。
「え、えっと……」
「し、仕方ないのよ。私も最初は、ベッドを2つ買って並べればいいと思ったけど、まだ、私のレベルじゃ、無理だし」
カイナの言う通り、この小屋スキルは、最初から無制限で使える異空間収納スキルと違い、レベルがある。このレベルに応じて小屋の中の大きさが決まるのだ。
そして、カイナの現在のスキルレベルは3、大体、1人部屋のサイズしかない。
そんなところにタンスやら、ソファやらをおいた場合、ベッドを2つ並べるとかなり狭くなってしまう。
「それに、2つ並べてミリーちゃんを間に寝かせた場合、ミリーちゃん、間に落ちちゃうじゃない」
確かに、その通りだった。
だがなぁ。
「というわけで、仕方なく3人で寝られる広さのベッドを1つ買ったのよ」
そういってカイナは顔を真っ赤にしながらそっぽを向いてしまったが、俺としてはそれがかわいく見えた。
「そ、そうか、えっと、まぁ、そういうことなら、俺もありがたく使わせてもらうよ」
俺もこういったが、たぶん顔が赤くなっていたと思う。何せ、顔が熱い。
『あらあら、仲がいいわね』
『そうね。お姉さま』
レイラとレーヴェがそんなことを言ってきた。
俺としては何かを言いたかったが、そんな余裕は今の俺にはなかった。
というわけで、なぜか、カイナの小屋スキルでほとんど同居ということになった、俺たちは赤くなった顔をある程度覚ましてから、小屋を出ることにした。
小屋から出ると、ミリーはまだ昼寝の真っ最中で、男たちは、忙しそうにしながらも時折ミリーの寝顔を見てはにやけていた。
気持ちはわかるが、はたから見ると気持ち悪いな。
「お、おう、戻ったか」
「あ、ああ」
「ん、何かあったか」
「嫌なんでもない」
さすがに感がいい奴らだ。
「んっ」
俺がそう思ったまさにその時ミリーがようやく昼寝から起きたようだ。
「あら、起きた、ミリーちゃん」
「あっ、カイねーちゃ、おかえり」
「ただいま」
ミリーが笑顔で挨拶をして、それを受けたカイナも満面の笑顔だった。
「あとで、ミリーちゃんに見せたいものがあるからね」
「うん」
ほんとに和むな。
んっ、……!!?
『ノーラン』
『カイナ』
レーヴェとレイラが叫んだ。
『これって、あれだよな』
『ええ、そうよ』
『まさか、これって』
「どうした、お前ら、急に黙って」
俺たち以外には感じなかったようだ。それはそうだろう、何せ、これは神剣であるレーヴェとレイラの持ち主たる、俺たち特有の能力みたいなものだったからだ。
「まずい、どうやら、ここが見つかったぞ」
「なに、敵か」
俺たちの様子にさすがに警戒を強めた。
ドガァァン
まさにその時上の方で何かが破壊された音が聞こえた。
「ぎ、ギルマスー、た、大変だぁー」
入り口にいたはずの強面の男、トベイクが血相を変えて飛び込んできた。
「なにがあった」
だが、トベイクは何を言っているのか割らないほど混乱していた。
「悪魔族だ。それも2体、いるな」
「ええ、間違いわね」
「な、なんだと」
「悪魔族だと」
「そ、それも2体だって」
ギルドマスター、ゲイル、コルドーがそれぞれ驚愕して固まった。
これはしょうがない、悪魔族は1体でも絶望を与えてくれる存在、それが2体だからな。
さすがに俺も1人だったらきついだろうな。でも、今の俺にはカイナがいる。
「それぞれ、1体ずつだな」
「そうみたいね。でも、ちょっと待ってて、私、着替えてくる」
そういえば俺はカイナの小屋スキルでこの街に入ったから、いつもの冒険者の格好だが、カイナは旅人の格好のままだった。このままでも戦えるが、やはり相手が悪魔族だと、動きやすいいつもの格好であり、防御力のある防具も身に付けたほうがいいだろう。
「わかった、それまでは任せろ」
そういって、俺は1人レーヴェに手をかけた。




