第68話 魔獣ヴォルフ
ミリーを救出してギルドに戻ると、そこにハンターたちを調査していたゲイルが帰ってきた。
そして、ハンターとディノシス教団が接触を図ったことが分かった。
しかも、その時の話の内容は、ミリーがなぜかいた犬人族の集落の場所と、ミリーのことだった。
ここで考えられることは、ディノシス教団がミリーを欲し、犬人族の情報と引き換えにミリーを渡すようにという取引をした可能性がある。
じゃあ、なぜ、ディノシス教団はミリーを欲したのか、それが問題だ。
さらに問題なのは、犬人族の情報をもたらしたのが同じく犬人族であったということだろう。
「なんで、犬人族だとわかったんだ。黒いフードとローブを身にまとっていたんだろ」
俺としては、これも気になった。
「そういえばまだ行っていなかったな」
ギルドマスターがそういうとゲイルが頭に巻いていた頭巾をとった。
するとそこには獣の耳、しかも、それは犬の物だった。
「犬人族だったのか」
「そうだ、同じ種族だからな、においでわかる」
なるほどそういうことらしい。待てよ、ということは……
「俺は、お前たち同様、大陸から来た人間だ。今回襲撃を受けた犬人族とは関係はない。とはいえ、同族であることは変わらないが」
俺の心配は杞憂だったようだ。
「そうか、まぁ、とにかく、そいつが犬人族であったことは間違いないんだろ」
「ああ、間違えるはずがない」
すごい自信だが、犬人族の鼻の良さは有名だからな、問題ないだろう。
「となると、そいつは、どうやって犬人族の情報とミリーのことを知ったんだ」
ここでこれまで黙って聞いていたコルドーがそんなことを聞いてきたが、俺には何となくわかっていた。
「多分だが、犬人族だということから、実際にあの集落に住んでいたんじゃないか。そこで、ミリーの情報を得た」
「なんだと、それは、同族を、家族を裏切ったということか」
ゲイルが憤怒した。
「ディノシス教団はそういう連中だ。というか、そもそもやつらは俺たち人間と神々を裏切っている」
そこで俺はその事実をもう一度伝えることにした。
「くっ、そ、そうだったな」
ゲイルも俺のこの言葉には思わず口をつぐんだ。
「それでさ、どうして、やつらは、この子を」
ここでミリーがお菓子を食べる際に、こぼすのを拭いたりして世話をしていたカイナが俺も疑問に思っていたことを聞いた。
「ああ、そうだったな、すまない、その娘、ミリーは召喚と従魔が使えるはずだ、違うか」
召喚スキルと従魔スキル、これは獣人族特有のスキルで、単純に言えば召喚スキルで魔獣を呼び出し、従魔スキルでその魔獣を従えるというものだ。ちなみに、この2つのスキルはセットであり、どちらか1つしかないということはありえない。また、このスキルはセットであると同時に目角スキルだ。そのため成長も別となる。そして、このスキルの問題としては、例えば召喚スキル2で呼び出した。魔獣は同じく従魔スキル2出なければ従わせることができない。ここで従魔スキルが1だと自分が呼び出した魔獣により襲われるという間の抜けたことになりかねない。
『レーヴェ、どうだ』
ミリーに聞くことができないだろうと考えた俺はレーヴェに鑑定で見てもらった。
『そうね、あら、あるわよ、それもともにスキルレベルは5よ』
『まじか』
驚いた。どうやらミリーは俺やカイナと同じで転生スキル保持者だったようだ。だが俺はそれだけでは驚かない、俺が驚いた理由は簡単だ、俺の剣術とカイナの武技系スキルは技術系スキル、転生スキル保持というのはこの技術系スキルでの褒美となっている。それに対して、ミリーの召喚と従魔は能力系スキル、これは通常転生スキルとはならない。
『まぁ、一般的にはそういわれているわね』
『ええ、でも、ある条件を満たせば、能力系も転生スキルになるのよ』
俺が困惑しているとレーヴェとレイラが続けて説明してくれた。
『その条件って』
『さぁ、そこまでは、わからないわ。ここによっても違うからね。でも、スキルを進化させるというのは共通してあるみたいだけど』
スキルの進化、俺は今まで聞いたことがなかった。そんなことがあるのか。
「どうした、ノーラン、急に黙りやがって」
ここで、レーヴェたちと念話で話していたら、急に黙った俺を訝しむギルドマスターが尋ねてきた。
「ああ、いや、何でもない、えっと、ミリー」
俺はごまかすようにミリーに尋ねた。
「あーに」
ミリーは口にお貸しを歩奪っていてうまくしゃべれなかった。
「あー、ほら、ちゃんと飲み込んでから話して」
ミリーの口の周りをハンカチで拭いながらカイナがそういった。
なんか、すっかり、母親? いや、ここは姉としておこう、となっている。
「そうだな、急がなくていいぞ」
「うん、ごくっ、なーに、ノラにーちゃ」
「ミリーは、召喚、あっ、いや、お友達、呼べるか」
「お友達?、ヴォーフ」
ヴォーフ? 魔獣の名前か。
「えっと、そのヴォーフって、ミリーが呼んだら来てくれるのか」
「うん、ヴォーフ、いつもすぐくるんだよ」
どうやら、間違いなく、魔獣のようだ。
「じゃぁ、すぐに呼んでくれるか」
「うん、いいお」
ミリーはそういってから、1呼吸置いて言った。
「きて、ヴォーフ」
すると、ミリーの前方で召喚陣が現れ光った。
「ウォオオン」
そして、そこに雄叫びとともに現れたのは狼の魔獣だった。
「ちょ、おいおいおい、グレートガルムじゃねぇか、どうなっていやがる」
『えっと、レーヴェ、この魔獣は』
『グレートガルム、といっても、まだ1歳の子供みたいね』
『これで、まだ1歳』
『それにしては大きくない』
そう、俺たちの目の前に現れたヴォルはもうすでに普通の狼ぐらいの大きさだった。
『あらあら、でも、この子、群れを率いているみたいね』
『群れ?』
レイラがそんなことを言い出した。
『そうよ、だから、眷属を召喚することもできるよね』
まじかよ、それはまたすげぇものを召喚しちまったな。
『それで、大丈夫なのか、このヴォーフは』
俺が心配したのはこいつが襲ってこないかということだった。
『大丈夫よ、この子すでにミリーちゃんの従魔だから』
『ええ、大丈夫よ』
レーヴェとレイラのお墨付きをもらった。
『そうそう、それから、この子の名前、ヴォーフ、じゃなくて、ヴォルフよ』
どうやら、ミリーの召喚スキルで呼び出したのはグレートガルムのヴォルフというらしい。
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