第66話 猫人族のミリー
犬人族の集落にやってきたら、そこには何とか無事だった1人の幼女、しかし、ほっとしたのもつかの間突如ハンターどもが戻ってきた。
しかも、なぜかやつらはこの幼女を狙っている。
どういうことかわからず、一番偉そうなやつ以外を始末した後、聞き出したが、この男は下っ端なのか、何も知らなかった。
むしろ、なぜこの幼女を殺さずに生かして連れ去るように言われたのか納得すらしていない様子だった。
まぁ、後のことはギルドに任せるとして、男を気絶させ俺はカイナのもとに向かった。
「カイナ、どうだ」
「うん、泣き疲れて眠ったわ」
見ると、カイナに抱きかかえられたまま寝息を立てていた。
「そうか、それにしても、この子、一体、何だろうな」
「ええ、私も聞いていたけど、どういうことかしらね」
「これは、ギルドに聞いてみるしかないだろうな」
「そうね」
ということで、俺たちは、とりあえずギルドに戻ってギルドマスターに報告と確認をすることにした。
「とりあえず、その男は、回収した方がいいわよね」
「ああ、頼めるか」
「ええ、いいわよ、ちょっと待って」
そういって、カイナは自分のスキルを発動させた。
すると、何もない空間に急に扉が現れた。
これは、カイナのスキルで、小屋スキルというものだ。
小屋スキルは、小屋を常に持ち歩いていると想像すればわかりやすいもので、俺の異空間収納のように異空間に小屋を一軒作るスキルだ。
しかし、俺の異空間収納と違い、小屋の中に収納するために当然収納できる量が制限されるし、時間経過もある。まぁ、そのおかげで、空気もあり、生物を入れることもできる。
そのために、このスキルの中で生活もできるらしい、実は、このスキル、カイナが持っているだけあって前世である俺の先祖カルミナも当然持っていたスキルで、カルミナはこれを部屋として使い、野営の際はスキルの中で眠っていたそうだ。
これは凄く便利で、なにせ魔物がうごめくなかでもこの小屋スキルの中なら安全であり、ふかふかのベッドを置いておけばいつでもそのベッドで眠ることができる。
そんなすごいスキルを持ちながら、カイナはテントで寝ている。その理由は簡単で、荷物が多すぎてベッドを置くスペースがないからだそうだ。
まぁ、こればっかりは仕方ない、冒険者は荷物が多いからな。
というわけで、このスキルの荷物の隙間にこの男を収納することでギルドに運べるというわけだ。
「よし、これで大丈夫」
俺が考えている間にカイナは男を小屋スキルに収めたようだ。
「それじゃ、街に戻るか。ああ、その子、俺が背負っていくよ」
そういいつつ俺は背中に背負ったレーヴェに片手剣になってもらってから、鞘を異空間収納に収めた。
「ええ、そうね、お願い」
それからカイナが幼女をやさしく抱き上げ、俺の背に背負わせてくれた。
「……アーバー……」
その時、幼女からそんな声が聞こえた気がした。
だから、起きたのかと思って後ろを見たが起きてはいない、どうやら寝言か、気のせいだったのかもしれない。
「ふふっ、この子、なんだか安心したような顔をしてる。ノーランの背中がよかったのかしら」
「だといいがな。そんじゃ行くか」
こうして、街まで俺たちはなるべく走る振動を、幼女に感じさせないように注意しながら進み、ついに街までやってきていた。
さてと、ここまで北はいいけど、問題は、この幼女をどうするかだな。
「仕方ないから、私の小屋に入ってもらうしかないんじゃない」
「それしかないか」
この街は、人間主義者の街であり、獣人族であるこの幼女はそもそも街に入れない。
他の街なら高額の通行料を払えば、できるんだが、ここは無理だった。
そこで、仕方なくカイナの小屋スキルの中に入ってもらうことにしたわけだけど、問題があった。
「さっきのやつも入っているからな」
「そうなのよね。だったら、ノーランも入ってくれる。そうすれば問題ないわ」
「そうするか」
ということで俺はカイナの小屋スキルの中に幼女とともに入ることにした。
カイナの小屋スキルは、一言でいえば雑然としていた。とにかく物が多い。完全に物の隙間に立っていることしかできなかった。
「狭いな。まぁ、しょうがないか、カイナは、倉庫としてしか使ってないからな」
そんなことを、考えて少ししたところで、扉が開いた。
「ノーラン、出てきても大丈夫よ」
「おう」
どうやら、ギルドについたようだ。
そう思って、そのまま小屋スキルを出ると目の前にギルドマスターの驚く顔があった。
「おいおい、すげぇな、これが小屋スキルか、初めて見たぜ」
ギルドマスターがそういうのも無理はない、このスキル、俺の異空間収納と同じく使い手が少ないレアスキルだからな。
「それで、その子が例の猫人族か」
「ああ、それと」
「こいつが例のハンターよ」
「ほぉ、こいつか、まぁ、後はこっちに任せろ、それで、その娘はどうするんだ」
ギルドマスターは男をそばにいたやつにどこかに連れて行かせると、続いて俺が背負っている幼女について尋ねた。
「そうだな、本来なら、このまま教会とか孤児院に預けるところなんだろうが」
「この街じゃ、無理だろうな」
「そうなのよね。そうなると、勇者王国まで私たちが連れて行くしかないでしょうね」
それは、道中俺も考えていたことだった。
「俺もそれがいいと思う」
「そうだな、そうしてくれるとありがたい。だが、気になるのは、なぜハンターがその子を連れ去ろうとしたのかってことだ」
そう、それが今一番の問題だ。
そう思いながら俺はそばにソファーに幼女を寝かし異空間収納から毛布を一枚取り出してかけた。
「ほんと、どうすっかなぁ」
それから、すこしして、ようやく幼女が目覚めたのか、起き上がりあたりを見渡していた。
「あら、起きた」
「おう、起きたか」
俺とカイナが同時にその顔を覗き込んだ。
「??」
幼女は、なんだかわけがわからないという表情をした。
「ここは、もう大丈夫よ、安全な場所だからね。私は、カイナ、それでこっちはノーランよ」
「カイねーちゃ、ノラにーちゃ」
幼女はつたない言葉で俺たちをそう呼んだ。
うぉ、何だこれ、すげぇ可愛いい。
「うん、うん、そうよ、それで、あなたのお名前聞かせてくれるかな」
「うんとね、ミリーはね、ミリーっていうの」
ついに幼女の名前が分かった、その名は猫人族のミリーだった。




