第61話 ニンモート
『ノーラン、そっちはどう』
甲板の上で残りの海賊を片付け終わったところで、不意にカイナから念話が入った。
『こっちは片付いたぜ、そっちは』
『こっちは、予想通りってとこね。最悪よ。あと、船長のヒュリップがいたけど、何とか倒せたわ。それで、今から助けた女性たちを連れて行くわ』
『了解だ』
ここにはいなかったからたぶんカイナがであるだろうと思っていたが、どうやら本当にカイナとヒュリップが戦ったらしい、それにしても、カイナにして何とか倒したか、ヒュリップは結構な使い手だったようだな。
『そうみたいね。お姉さまと念話で話したけど、どうやら、ヒュリップも戦斧スキルが5だったみたいよ』
『へぇ、そいつはまた、カイナもよく倒したな』
俺は素直にカイナの勝利を称賛した。
「サイトス、カイナから念話だ、向こうも予想通りだったらしい、というわけで片付けておいてくれってよ」
それから、サイトスに報告した。
ちなみに俺とカイナが念話を使えることはサイトス達にも伝えている。
その理由は、特に珍しいスキルではないからだ。
「わかった、聞いたな、まずは海賊どもの死体は海に投げ込め、それから俺たちも船に戻るぞ」
「おう」
こうして、俺たちは、まず海賊どもの死体をある程度海に投げ込んだあと、俺たちも保護された女性たちの目に触れないように退散したのだった。
それから、俺たちは2度、海賊に襲われたが、相手がたいしたことないということで俺とカイナが暴れることもなく、ナーヤたちが頑張っていた。
というわけで、今目の前に陸地が見えてきた。
「あれが、ニンモート?」
カイナがそういった。
「そうみたいだな」
「島って聞いていたけど、どのくらい大きさなんだろう」
「ニンモートは、東西に延びた細長い島なんだよ。といってもその大きさは、端から端まで歩いた場合、2~3か月はかかるといわれているな」
船長のドベイがそう言ってきた。
「それは、またずいぶんと大きな島ね」
「だな」
「そら、もう少しでつくぜ、準備しておきな」
ドベイはそういって仕事に戻っていったので、俺たちも船室に戻り荷物をまとめることにした。
そうして、ついにニンモートにたどり着いた。
「活気があるな」
「ええ、やっぱり、ここまで人間主義者の影響はないみたいね」
俺たちが、降り立った港町は、ニンモートのちょうど中間に位置する。
聞いた話によるとこのニンモートはここより北に向かい陸地の中間あたりに首都たる都がある。そこに天帝や政治の中心があるそうだ。
そして、それを東西に分けて、西側に多くの人間主義者が統治をして、東側が比較的人間主義者ではない者たちが収めているらしい。
こうなると東西で内乱になるのではと思ったが、なぜか、天帝の存在が大きいらしく、内乱らしい内乱は全く起きていない平和な国だそうだ。
俺はこの話を聞いて天帝というのは相当なカリスマ性を持っているんだと思った。
普通なら無理だろうな。
「それじゃ、あたしたちは、ギルドによった後、しばらくこの街にいるけど、またあっちに戻るから、ここでお別れだね」
ここでナーヤがそう言ってきた。
「ああ、俺たちは西側に向かう予定だからな」
「ナーヤとサイトスも元気でね」
「ああ、お前たちもな」
「そうだね。まぁ、あたしたちしばらくは勇者王国とニンモートを行ったり来たりすると思うから、もしかしたら2人が帰るときに会えるかもしれないけどね」
なんでもこの2人はしばらく大陸とニンモートとの連絡員として雇われたらしい。
「そうかもな、そうなったらまたよろしくな」
「うんうん、まぁ、それはこっちのセリフだと思うけどね」
「ああ、そうだな、この海域もヒュリップスがいて危険だったが、やつがいなくなった今や、脅威はないから問題ないだろう」
最後にサイトスがそういって、俺たちは別れることになった。
それから、俺たちは少しこの港町を見て回ることになった。
「それにしても、やっぱり異国って感じだよな」
「うん、これまでの国ってあまり見た目とかも同じで変わらないかったけど、ニンモートの人たちってやっぱり雰囲気が違うよね」
そう、俺たちの故国であるアーバイトやダルソール、勇者王国の人は実はほとんど見た目が変わらない。だから、出会ったときに出身国を言われないといつまでもわからない。でも、ここニンモート人は明らかに俺たちとは雰囲気が違う、いや、見た目は似ているんだけど、やはり何か違うんだよな、顔つきというか、なんというか、とにかく見ただけでわかるぐらいだ。
そして、生活も違うようで、建物に関しては俺たちの国では石材を多く使っているのに対して木材を多く使っているようだ。また、食事の方も違うようで、勇者王国ではおかずとされていた饅頭がなぜかお菓子として売られている。
それで実際に買ってみたんだが、これがまたうまかった、饅頭の生地はなんだかもちもちとしていて、中身はかなり甘く煮た豆だそうだ。
「な、なにこれ、おいしい―」
そのあまりの甘さとうまさに、カイナが絶賛したほどだった。
「確かに、うまいな、これ」
『ああん、私もたべたいわねぇ』
『あらあら、うふふっ』
俺も絶賛するうまさだった。
「あら、うれしいねぇ、そんなに気に入ったんならもう一つ食べるかい」
そんな俺たちを見た店のおばさんがもう一つおまけにとくれた。
「ほんとか」
「ありがとうございます」
俺たちもそれに遠慮せずに受け取った。
それからもいくつかの店を回ってから俺たちは、港町を後にすることにした。
「そろそろ、行くか」
「そうね。大体見て回ったし、あまり遅くなると夜になりそうだし」
「だな」
『そうね。次はどんな街かしらね』
『あらあら、レーヴェったら、もう次の街のこと考えているのね』
『ええ、お姉さまも気になるでしょう』
『それもそうね』
「そうだな。ここだけ見ると、この国が本当に人間主義者が支配者にいるなんて思えないけどな」
実際、この街には人族以外の住人が多くいた。
こうして、俺たちは港町を後にし、西へ向かって街道に出たのだった。




