第54話 アルバーの子孫と転生者1
「アルバーは勇者王の誘いを断りました」
はぁ、断った。いやいや、何を言っているんだ。
俺は驚愕した。
「どういうこと」
カイナも思わず声に出していた。
「どういうことも何もそういうことです。しかも、その場で勇者王に対して、斬りかかったと聞いています」
いやいやいや、待て待て待て、何を言っているんだ。
「ちょっと待った。断ったって、しかも、斬りかかったって、ありえないだろう」
俺も思わず声を荒げてしまった。
「それについては、僕もわかりません。ですが、事実です。そのあと、兵士たちにつかまって処刑されたそうです」
「はぁ、処刑?」
まさに驚天動地、一体何が起きたんだ。
意味が分からなすぎるだろ、これ。
『ねぇ、どういうこと、なんで、アルバーがそんなことを』
レーヴェも意味が分からないのか念話で聞いても混乱しているのがよくわかる。
『わからねぇ、どういうことだ』
『もしかしたら、アルバーの功績を自分の物にするために家族にうそを教えたんじゃないのかしら』
ここで一番冷静だったのは、アルバーを知らないレイラだった。
『な、いや、ありえるかも』
カイナもそれに同意した。
『確かに、あのガイナルなら、ありえるのか』
『どちらにしてもあまりにひどいわね』
俺たちは、念話でもって話をしながらも改めてガイナルへの怒りを燃やしていた。
「なぁ、1つ聞いてもいいか」
俺はどうしても確認したいことができた。
「なんでしょう」
「その話、家族以外にも知らされたことか」
もしそうなら、子孫は相当な災難に会っているはずだ。
「はい、当時この街にいるもの達ならだれもが知っていることです。おかげで僕たちの先祖は長年苦労をしてきました。だから、僕はアルバーを、なんでそんな軽率なことをしたのかと、恨んでいますよ」
男がそういうと少女もまたうなずいた。
まじか、本当にガイナルのやつ最悪だ。
『なぁ、どうする、これ』
『そ、そうね。ほんと最悪ね』
『今、過去に戻れるなら、私がガイナルを斬りたいわね』
『さすがに、私もかばいきれないわ』
満場一致でガイナルへの怒りが爆発しそうだ。
『知らせた方がよくないか』
『そうね。さすがにこれじゃ、アルバーも、その子孫たちもかわいそうすぎる』
『信じてもらえるかしら』
『やってみるよ』
そういって俺は念話から通常の会話に切り替え、男に話しかけた。
「えっと、ああ、そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺はDランク冒険者のノーラン、っでこっちは同じくDランクのカイナだ」
「これは失礼しました、僕は、アルベイラの本店店主ノイスといいます。こっちは妹で、クインです」
こうして、自己紹介が終わったところで改めて話を始めた。
「そうか、えっと、ノイスとクイン、これから俺が話すことは、2人には信じられないかもしれないけど、こっちが真実だ」
俺はそう前置きを置いて、デリタルダンジョンでレイフ様から見せられた。アルバーの真実を語って聞かせた。
「……というわけだ。これは、レイフ様に誓っても真実だといえる」
俺はだめ押しとばかりにレイフ様の名前を出した。この世界、特に人族において、レイフ様の前でうそをつくことはあってはならないこととされている。
「……」
「……」
俺の話を聞いて2人は黙ってしまっている。
「信じられません」
「私もです」
うーん、さすがにこれだけでは無理があったか。
俺の説明では、ただ見た事実を話しただけだった。
「やっぱり、無理だったか」
『どうする、こうなったらもっと話すか』
俺はどうするか念話を使ってカイナたちに相談した。
『うーん、確かに、それしかないような気がするわね』
カイナは話すことに賛成のようだ。
『私としては、やっぱりアルバーの子孫には真実を話すべきだと思うわ』
レーヴェも賛成。
『私には、わからないけど、カイナとレーヴェが賛成なら私も賛成ね』
レイラも賛成であった。
これで決まった。
「あのー」
俺たちが急に黙ったので2人が少し不思議に思っているようだ。
「ああ、悪い、ちょっとな。それで、話の続きだが、そうだな。少し遠回りな説明になるが聞いてくれ」
「はい」
「2人はデリタルダンジョンは知っているか」
「デリタルダンジョンですか、ええ、もちろん知っていますよ。確か、最奥の部屋の脇にもう1つ部屋があり、そこには、剣が刺さっていたような台座と、謎の女性エレナのお墓があると、聞いています」
ノイスがそう答えた。
「それと、このお墓は誰が作ったのか、というのが謎とされていますね」
クインが付け足した。
ここまで知っているのなら話は早い。
「ああ、その通りだけど、実は、俺たちはそのエレナと、墓を作った人を知っている。というか、墓を作ったのは、カルムという槍遣いだ」
「カルム? まさか、200年ほど前にいたという、槍遣いカルムのことですか」
「まぁな。それで、俺がなぜそれを知っているのかというと、俺がそのカルムの子孫だからなんだ」
「! それは、本当ですか」
「すごいです」
「僕たちとは違いますね」
それを言われても、俺としてはなんとも言えない。
「そんなことはないと思うけど」
俺が困惑しているとカイナがそういった。
「いえ、それが事実ですから」
これは手ごわそうだ。
俺はそう思いながら話を続けることにした。




