第53話 アルバーの子孫
カサブラについて俺たちはさっそくアルバーの資料を読み漁った。というかその量は、読み終えるのに数日を要するほどだった。
「……疲れたぁ」
「……ほんとにな」
『私は、待ちくたびれたわ』
『うふふっ、レーヴェったら。でも、確かに、ずいぶんと時間がかかったわね』
「ハッサンのおかげでだいぶ詳細な情報まで書かれた書類だったからな。でも、おかげで、アルバーがどんな冒険者だったのかとか、その功績の細かいところまでわかったよ」
「そうね。それにしても、アルバーってすごい人ね。Sなんてそうそう成れるランクじゃないし」
そう、アルバーはSランクというかなり高レベルだった。
まぁ、これに関しては前に調べたときにわかっていたことだが、改めてアルバーが受けてきた依頼や、その際の報告を目にして実感したというわけだ。俺もいつか、このアルバーのような冒険者とならなきゃいけないよな。何よりそうしないとレーヴェの持ち主としてのふさわしくないような気がする。
「それで、これから、どうするの。行ってみるの」
カイナが尋ねてきたが、行く場所というのはアルバーの子孫のところということだ。
「ああ、そのつもりだよ、まぁ、400年も前のことだし、子孫といたってわからないと思うけどな。カルミナみたいに手記が残っているならまだしも、俺が前世でそんなものを書いているとは思えないし」
実際俺もそんなものは書いていない。
「そっか、でも、アルバーは凄い人だったみたいだし、何か言い伝えみたいなものはあるかもね」
『そうね。その可能性が高いわね』
『ええ、そうね』
レーヴェとレイラもカイナの意見に同意している。
「そうだな。まぁ、たとえ知らなかったとしても、アルバーの子孫がどんな奴かあってみたいっていうのもあるし、とにかく行ってみるか、それに、そろそろ買い換えたいものとかもあるしな」
という理由であまり期待をせずに俺たちはアルバーの子孫がやっているという店“アルベイラ”へと向かった。
ちなみに、アルベイラという店名は、単純に店を始めた人がアルベイラという人だったからだそうだ。
そうして、アルベイラへとやって来た俺たちは少し緊張をしながら扉を開けた。
「いらっしゃい」
中に入るとそこにいたのは、俺たちと年はそう変わらない、いや、少し上ぐらいの男がいた。
「何かお探しですか」
「ああ……」
俺はまずは必要なものを注文した。
「ありがとうございます。では、今ご用意しますね」
そういって男は奥に引っ込むと、まさに俺たちと同じぐらいの少女を連れてやって来た。
「いらっしゃいませ」
少女もそういってから男とともに俺が注文した品をせわしなく用意してくれた。
少女と男を見る限りなんだか似ているてっから兄妹に思えた。
「兄妹かな」
『そうみたいよ。鑑定でもそう出たから』
『うふふっ、ええ、そうね』
実はレイラにも鑑定スキルがある。
「お待たせいたしました。えっと、かなり数がありますがどこにお運びいたしましょうか」
俺が発注したものは結構量がある。この場合普通は宿などに運んでもらうことになる。
「いや、俺には異空間収納があるからそこに入れるよ」
「異空間収納ですか。それは凄いですね」
少女の方が手を口に当てながら驚いている。
「ええ、それはうらやましいですね。では、どうぞ」
「ああ、悪いな」
俺はそういってから代金を払い、今買ったものを異空間収納に投げ込んだ。
『ノーラン、いつ聞くの?』
『今聞くさ』
レーヴェは俺が忘れていると思ったらしい、だが、俺もちゃんと覚えている。
「なぁ、ちょっと、聞いたんだけど、この店って、むかし、400年ぐらい前にいた剣術スキルをマックスまで上げたという剣士アルバーの子孫がやっているって聞いたんだけど、本当か」
なるべく普通の冒険者のように聞いた。
「え、ええ、誰に聞いたかは知りませんが、確かに、そのアルバーの子孫ですが、それが何か」
俺がアルバーの名前を出した瞬間何か、顔をしかめたような気がした。
「ああ、えっと、実は、俺は見ての通りアルバーと同じ剣術スキルを持っていて、同じ大剣を使う。かつてのマックスまで上げた人物がどんな人だったのか知りたくて、いろいろ調べているんだ。そうしたら、ここに子孫がいるって聞いてあってみようかと思ってね」
一応は事実だ。
「なるほど、ですが、そのアルバーを目指すのはやめた方がいいですよ」
男はそういった。どういうことだ、先ほどの反応といい、一体何があったんだ。
俺は気になったので聞いてみた。
「えっと、それはどういうことだ。アルバーは数多くの功績を残してSランクまで上り詰めた冒険者だろう」
「ええ、確かに、Sランクまで行ったそうですけど、それも事実かどうか」
「お兄ちゃん、お客さんにそんな」
少女が少し言い方が客向けではないことにたしなめようとしたが、俺は気にしていない。
「いや、いいんだ。それより、聞かせてくれ、なんでそんなことを言うのか」
「ええ、いいですよ。では、少し長くなりますので、奥にどうぞ」
そういって男は俺たちを奥の部屋に招待してくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
「ありがと、えっと、それじゃ、聞かせてくれ」
俺たちにお茶を出し終え男の隣に、少女が座ったのを確認してから俺はそう切り出した。
「はい、先ほどは失礼をしました。ですが、我ら子孫は、アルバーを恥としておりますので」
恥? どういうことだ。ますます訳が分からない。
「恥ってどういうこと、私たちの調べでは、アルバーは誇りではあっても恥ではないと思うけど」
カイナの言う通り、この数日で見たアルバーの資料にからもそんなものは一切なかった。
「そうだな。俺たちは昨日までギルドで資料を呼んでいたんだが、その中には何もなかったぞ。まぁ、ミルダルタを最後に行方は分からなかったが」
これはギルドでの事実だ。
「ええ、確かに、ミルダルタを尋ねるところまではよかったんですが、そのあとが問題なんですよ」
そのあと、それは、史実ではナンバル王国王子ガイナルの誘いを受けた後のことだろう。
「アルバーは、ミルダルタに滞在中勇者王ガイナル様からの悪魔王討伐の誘いを受けました」
俺は驚いた、子孫にはこの事実が伝わっているのか。
だが、俺の思いは次の言葉で裏切られた。
「アルバーは、勇者王の誘いを断ったそうです」




