第51話 神剣を手に入れて
レイラボルグ、それは、悪魔王を討伐するため神々によって生み出されたインテリジェンスソード。しかし、その運命は不遇だった。あと少しで所有者となるべく存在だったエレナが目の前で殺され、目覚めることもなく奪われた。そして、幸か不幸か結局悪魔王討伐に使われ、聖剣と呼ばれナンバル勇者王国において展示されていた。
だが、その不遇の運命も今やっとカイナというエレナの生まれ変わりによって、終わりを告げることができた。
「来て、レイラボルグ」
カイナが、そういった瞬間、王城の方で何やら光が見えたと思った、その瞬間カイナの右手の中に1振の剣が握られていた。
「おお」
誰かがそうつぶやいた。
「……」
それ以外は無言で見守っていた。
そして、次の瞬間。
パァァっと、まばゆい光があたりを支配した。
「おおう、これは……」
さすがにみんな目を背けている。それほどの光だった。
そうして、その光が収まった時、俺たちの目に飛び込んできたのは、先ほどまで片手剣ではなく、槍の姿だった。それも、かつてエレナが持ち、カルミナが受け継ぎ、子孫たる俺の一族に代々伝わってきたもので、現在カイナが使っているカルムの槍そっくりだった。
「これが、形態変化」
「……ああ、レイフ様」
ミレイは神に祈っている。
「……」
コクッ
カイナが何かうなずいている。おそらくレイラから念話で何かを言われたんだろう。
まだ、俺たちにはレイラの念話は聞こえない。
すると、カイナが突然左手でカルムの槍を手に取り、なんと、槍となったレイラボルグに重ねるように持ったのだ。そして、その瞬間再び光が輝いたかと思うと、いきなりカルムの槍が光の粒子になってそのままレイラボルグに吸い込まれた。
「な、なんだ、今のは?」
俺には意味が分からなかった。
レーヴェにはなかった現象だ。
『なるほど、同一化をしたのね』
俺が頭を悩ませていると、レーヴェが答えをくれた。
『同一化って、なんだ』
『簡単なことよ、ほら、私もだけど、お姉さまは元々、エレナが使っていた槍に似せて作られた。その理由は、突然手に入れた武器を使いやすいようにするためよ。でも、実は、武器にも使われてきた経験というものがあってね。私たちにはそれがない、だから、同一化することで、元の武器の経験値を継ぐの、そうすればこれまと同様、まったく違和感なく私たちを使うことができるようになるってこと』
なるほど、確かに言われてみるとその通りだ。同じ形状同じ重さの剣、でも、別の剣であれば何か違和感を覚える。しかし、この同一化を行えば、それが無くなるというわけか、すげぇな、神剣。
俺は素直にそのすごさに感心していた。
とまぁ、そんな話をしている間に同一化は終わり、カイナを包んでいた光が収まった。
「……ふぅ」
「終わったみたいだな」
「ええ、終わったわ。紹介するわね。私の剣、いや、まぁ、槍だけど、レイラボルグよ」
『初めまして、ノーラン、レイラボルグよ。私のことはレイラと呼んでね。これからよろしく』
レイラの声はなんだか落ち着いた感じがし、レーヴェより若干年上のような気がする。
やはり、レーヴェにとって姉だからだろうか。
「ああ、よろしくな」
『ええ、それと、あなたが、私の妹?』
その言葉を聞いてレーヴェのことを言っているとすぐにわかった俺はレーヴェを抜き放ち両手でもってレイラに見えるようにした。
『え、ええ、そうよ、お、おねえさま。レーヴェボルグよ』
さすがのレーヴェも緊張しているようだ。やはり、剣でも初めて姉に会うってことで緊張もするんだろう。
『そう、うふふっ、カイナから話は聞いているわ。まさか、剣である私に妹なんて、うれしいわ』
『お姉さま』
もし人間だったらここでレーヴェが泣きそうな場面だ。だが、剣であるレーヴェにはそんな機能はないが、そんな感情が見える。
「ああ、えっと、感動の再会のところ悪いが、ちょっといいか」
よく考えたら、今現在の様子は俺とカイナしかわからない。とはいえ、今がどんな状況かはハッサンたちにもわかっているようで、申し訳なさそうにそういってきた。
「ああ、悪いな、待たせた。もう、終わったぜ」
「そうか、まぁ、俺たちもとんでもない場面に出くわしちまったみたいだが、まぁ、それより、お前ら今後どうするつもりだ」
ハッサンが俺たちの今後を聞いてきた。
「この後か、そうだな、まぁ、とりあえず、しばらく王都に近寄らないほうがいいだろうな」
それはそうだろう、現在王都は大騒ぎだ、なにせ、レイラはナンバル勇者王国においては聖剣であり秘宝、それが突如消えたっていうんだかな。
「だろうな。いくらその剣が姿形が変わっているといっても、その剣がもとは聖剣であることは変わらない」
「ああ、大半は気が付かないだろうが、万が一ということもある」
そう、レイラは神剣だ、聖剣としてたたずんでいただけでも神聖な気配を出していた。そして、今現在のレイラはさらに神聖な気配がある。もし、その気配が同じものだと気づかれれば、もちろん形態が変わるなんてありえないこと、誰も信じないだろうが、最悪の事態を考えるのも冒険者の特性、だから近づかないほうがいいだろう。
そもそも、俺とカイナに何でもない風を装うことが無理そうだ。下手にうろついて何か知っているんじゃないかと疑われる可能性の方が高いだろう。
「そうね。私もそう思う」
「ああ、だから、この後は、カサブラに行ってみようと思う」
カサブラ、ナンバル勇者王国北に位置する港町で、俺の前世アルバーの故郷でもある。
「カサブラか、なんかあるのか」
ハッサンはその理由を聞いてきた。
「カサブラは、俺の前世であるアルバーの故郷だからな。もしかしたら、アルバーについて何かわかるかもしれないからな」
例えば、アルバーが使っていた剣とか。
「なるほどな、確かに、故郷ということは、登録記録が残っているかもしれねぇな。だったら、こいつを持っていきな」
そういって、ハッサンが何かを取り出して俺に渡してきた。
「これは?」
俺が受け取ったのは、冒険者の紋章があしらわれた小さなメダルだった。
「そいつは、ギルドマスターが認めたやつしか持たないものだ。それを持っていれば、より深い情報を見ることができる」
つまり、これがあれば、アルバーについて深く調べることができるということだろう。
「助かる」
「なに、いい物を見せてもらった礼だ。それと、お前ら、カサブラに行くんだったら、そのまま、船に乗ってニンモートに行く気はないか」
ハッサンがそう提案してきた。




