第37話 カイナの決意
金属の神オラフが生み出した神界にしかなく、神にしか扱えないオリハルコンを使い、鍛冶の神ドルードが打ち上げ、最高神たる女神レイフにより生み出された剣のために調整された魂が収まり、その他の神々によって祝福された神剣。
これは俺が使うレーヴェのことだが、これと同じように作られたレーヴェの姉たる剣。
その剣はかつて本来の持ち主の手に渡る直前に奪われた。
そして、奪ったものはどういうわけかその剣を持って悪魔王を討伐した。
そう、その奪った犯人こそ、この世界において偉大なる勇者とされるここナンバル勇者王国初代勇者王、ガイナル・ダート・ダ・ナンバルその人だった。
だからこそ、俺とレーヴェはその剣を取り戻すべく、ナンバル勇者王国の王都を目指していた。
しかし、その道中で出会った少女カイナ。実はこの少女こそ何の因果かわからないが、レーヴェの姉たる剣の本来の持ち主であったエレナの生まれ変わりだった。
「それにしても、いきなりとんでもないことを聞かされたわね。思ってもみなかったわ」
それは俺たちも同じだ。
「ほんとにな。俺もまさかこんなに早くエレナとカルミナの生まれ変わりに会えるとは思わなかった」
「それにしたって、ほんと信じられないわよ。まぁ、話を聞く限りでは真実みたいだけど……」
カイナはそこで少し疲れた表情を見せた。
「だろうな。まぁ、今日はもうだいぶいい時間だし、そろそろ終わりにして、明日にするか」
俺は話の続きを明日に持ち越すことにした。
「そうね。私も少し考えてみるわ」
こうして、俺たちはそれぞれベッドに入り寝ることにした。
とここで、俺は重大なことに気が付いた。
おいおい、考えてみたら、俺、カイナと同じ部屋じゃねぇか。
そう、俺が入ったベッドとカイナが入ったベッドは少しの隙間があるとはいえすぐ隣にいる。これが落ち着いていられるかというものだ。
ちなみに、俺とカイナの間にはレーヴェとカルムの槍が置いてある。
レーヴェは俺が何も考えずに置いたものだが、カルムの槍はカイナが警戒でおいたものだろう。
俺が緊張でなかなか寝付けないでいると、後ろの方から寝息が聞こえてきた。
どうやら、カイナは寝たようだ。
そう感じながらなんとか寝ようとしているうちにどうやら俺も寝ることができた。
翌朝目を覚ますと、後ろの方からシュルシュルと衣擦れの音が聞こえてきた。
おそらく、カイナが寝間着から着替えているんだろうと思う。
昔からというのもあるが、冒険者として培ってきた目覚めの良さが役にたった。
もし目覚めが悪かったら寝ぼけて後ろを振りかえり災難に会うところだ。
そんなことを考えて寝たふりを続けていると、後ろから声をかけられた。
「もう、起きていいわよ。ノーラン」
どうやらカイナも俺が起きていたことには気が付いていたようだ。
「お、おう」
「おはよう、ノーラン」
「ああ、おはよう」
『おはよう、ノーラン、眠れたかしら』
「多分な」
俺としてもいつ寝たかはよく覚えていない。
「うらやましいわね。私あまり寝られなかったわよ」
聞けばカイナ、最初は少し寝たがすぐに起きて、そのまましばらく起きていたようだ。
「その時にさ、ちょっと考えたんだけど、ノーラン」
ここで、何やらカイナが真剣な表情をしつつこっちを振り向いた。
「なんだ」
着替えようと上半身を裸になっていた俺も少し緊張した面持ちになった。
そんな俺を見て少し顔を赤らめながらも話をつづけた。
「私とパーティーを組まない」
「パーティー、俺とか」
「うん、昨日あれから考えたのよ。私、レーヴェのお姉さんの本来の所有者なのよね」
「そのようだな」
「だったら、その剣を取り戻さなきゃいけない。それに、ノーランならそう簡単にやられないでしょ」
「そのつもりはないからな。でも、俺もちょうどカイナにそれを頼もうと思っていたんだ。どうやって頼もうかと思っていたところだよ」
「そう、なら、オッケーってことね」
「ああ、よろしく頼む」
こうして俺とカイナはパーティーを組むことになった。
といっても、ここは宿場町、ここではギルドがないために正式にパーティーを組むことはできない。
とここで、俺とカイナは握手を交わしたわけだが、よく考えてみたら俺は上半身裸のままだった。
それを思い出したカイナはあわてて後ろを向き、俺もまたすぐに服と鎧を身に付け、少しあきれ気味のレーヴェを背中に担いだ。
それから、宿場町を出て次の街を目指すことにした。
「次は、デリバールね」
「ああ、そうだな。そこのギルドで俺たちのパーティー登録をしよう」
「そうね」
『ねぇ、そこのデリバールってどのくらいで着くのかしら』
ここで、場所を知らないレーヴェが聞いてきた。
「確か、歩きで半日ぐらいだっけ」
「確かそのはずよ」
カイナが来たことで俺たちの会話はあまり念話を使わないようになった。
その理由は簡単で、カイナが念話を使えないからだ。そのため、俺とレーヴェが念話を使っても、カイナだけが口に出さなければならない。そうなるとカイナが1人ごとを言っているようにしか見えないことになるからだ。
それは、あまりにも意味がない。
だからこそ、俺とカイナは声に出しての会話となる。
ちなみにレーヴェが時々、念話を使わなくても俺の考えていることがわかるのは、俺がレーヴェの所有者としてつながっているからであり、別に念話を使っているわけではない。
だからといってそれで会話をするのは意識しなければならず、結構難しいので、俺としてはあまり使いたくない。だから時々レーヴェが俺の考えに返事をするという形をとっているというわけだ。
そんなわけで歩き始めてしばらくたったところで俺は気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば、カイナって、なんで悪魔族と戦っていたんだ」
それは何気ない疑問だった。悪魔族は通常出会ったら絶望、うまく言えば逃げ出せる。そういった存在だ。
つまり、悪魔族と戦うという選択肢は通常ない。にもかかわらずカイナは戦っていた。
まぁ、それでもカイナの強さなら
「ああ、あれ、あいつは仇なのよ」
「仇?」
俺は一瞬地雷を踏んだのかと思ったが、カイナは静かに語り始めた。
それは、思ったより重い話だった。




