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剣と少年  作者: 敦
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第36話 エレナの真実

 突然俺から自分の前世を聞かされて困惑するも、納得したカイナだった。

「ねぇ、ノーラン、カルミナは、私の前世は幸せだったのかな。男のふりして、好きだった人と一緒になれなくて……」

 カイナは寂しそうにそう聞いてきた。だから俺としては安心させてやりたくなった。

「さぁな、いくら子孫でも俺にはカルミナの心のうちはわからないからな。でも、カルミナの子供や孫たちの手記には、カルミナは最期笑っていたとあるからな。それなりに幸せだったんじゃないか」

「そっか、それならよかった」

 カイナはそれを聞いてほっとしたようだ。

「……あっ、ちょっと待って、ねぇ、ノーラン、私たちがあった時、カルミナのほかにエレナって人のことも聞いてきたよね。もしかして、そのエレナって人も、私の……」

 どうやら、カイナは気が付いたようだ。

「ああ、前世だよ。カルミナよりも以前のね」

「やっぱり。でも、どうして、ノーランがそのことを」

 確かにカイナの言う通り、自分の前世を2人も知っているのは妙な気分だろう。

「それは、カルミナだよ。カルミナには前世の記憶があったんだ」

「前世の記憶!」

 これもまたかなり珍しい、前世の記憶を持つということはほとんど聞かないからだ。

「そう、といっても、カルミナにあったのは自分の前世の名前がエレナであること、槍を愛用していたこととか、その最期が背中を刺されたということぐらいだけどな」

「へぇ、そうなん……ちょ、ちょっと待って、今なんていった。背中から刺されたって、言わなかった」

 さすがにカイナも聞き捨てならないことだったようだ。

 血相を変えて尋ねてきた。

 それはそうだろう、俺だって自分の前世の死因なんて知ったら気が気じゃないだろう、しかも、それが殺されたっていうのだからなおのことだろう。

「ああ、言った」

「一体だれが、そんなことを」

 カイナは自分のことだからわかるのだろう、エレナは決して背中を簡単に刺されるような人物ではなかったはずだ。それは、カルミナも当然思ったことだろう。

「それについては、ついぞカルミナもわからなかったらしい。でも、カルミナの冒険者時代の手記があってな。それによると、デリタルダンジョンってとこに潜って、最奥の部屋に入った時、さらに奥がある。って確信してそこを探して、見つけたそうだ。それで、そこには、剣が刺さっていたような台座とその前に背中に剣が深々と刺さった服装からして女性冒険者の亡骸があったそうだ。そして、その傍らにあったのが……」

「この槍?」

「そうだ。それでそれを持った時、カイナがそれを手にした時のように光が出て、手に馴染み懐かしい感じがしたとあったよ」

 そして、この時にカルミナはこの亡骸こそ自身が記憶している前世、エレナであると確信したそうだ。

「そんな、それじゃ、エレナは、殺された後、そこに放置されていたっていうの」

「ああ、だから、カルミナと、その仲間たちとダンジョン内に埋葬したそうだよ」

「そうなんだ。私も、そこ行ってみたいわね」

 そういうと思った。

「そうだな。それがいいだろうな」

『そうね、お姉さまがいたであろう場所だしね』

「お姉さま? レーヴェってお姉さんがいるの」

 カイナは不思議そうにしていた、まぁたしかに剣に姉っていわれても妙な話だよな。

『ええ、そうよ。といっても、お姉さまは私のことは知らないけどね』

「そうなの」

「そう、なにせ、もともとレーヴェは生まれる存在じゃなかったそうだよ」

 そこで俺はレーヴェが作られた経緯を話した。

「そんなことが、あれ、それって、まさか」

「そういうこと、つまり、レーヴェの姉たる剣を手に入れるべき人物はエレナだった。でも、目前にして背中から刺されて、奪われてしまったってわけだ。だから、その代わりとしてレーヴェ生み出されて、俺の前世がその所有者として選ばれた」

「そっか、えっと、どういう反応すればいいのかわからないわね」

「だろうな。まぁ、カイナは気にする必要はないだろ、殺された被害者だし」

「そう、それで、エレナを殺したのは一体誰なの」

 カイナは核心を聞いてきた。

「俺も驚いたけど、誰もが知っている人物だよ」

 むしろ知らない人間の方がいないだろう。いや、人間だけじゃなく悪魔族ですら知っている人物だ。

「それは?」

「ガイナル・ダート・ダ・ナンバル、そう、神から与えられた聖剣をもって悪魔王を討伐し、ここナンバル勇者王国初代勇者王だよ」

「……!! うそでしょ。それ、ほんとなの」

「ああ、残念ながらな。そして、たぶんというか間違いなく、その神から与えられたといっている聖剣こそ、レーヴェの姉たる神剣のことだろう。エレナから奪ったな」

 俺はこれを確信している。というか神剣でなければ悪魔王にとどめを刺すことなんてできないだろう。

「そう、私たちは騙されていたってわけ」

 カイナから殺気がにじんできた。

 それはそうだろう、記憶はないとはいえ自身の前世を殺した男。許せるものではないだろう。

「……わからないわ」

 さっきの中カイナが突然そう言いだした。

「何がだ」

「どうして、エレナは背中を刺されたのかしら、エレナは今の私よりずっと強かったのよね」

「だろうな」

『それは、ガイナルがエレナの仲間だったからよ。エレナも信用している仲間から突然裏切られるなんて思わなかったんでしょう』

 そういうことらしい、確かにそれなら背中を刺されることもあるだろう。でも、エレナは、そんなガイナルに気が付かなかったのだろうか。

「エレナはつらかったのでしょうね。だから、カルミナに生まれ変わってもそこを覚えていたのかも」

『そうかも、しれないわね』

「エレナって、どんな人だったんだろう」

 ここでカイナは、遠い自分に思いをはせた。

「さぁな、カルミナもそこまでは覚えていなかったし、それに、エレナについてはギルドにも記録が残っていなかったそうだからな。こればっかりは誰にも分らないだろう」

「えっ、記録にない。そんなわけないでしょう」

 カイナが不思議に思うのも無理はない、ギルドの歴史は古くエレナや俺の前世アルバーが生きていたころは当然存在している。多分調べればアルバーについてはわかるだろう、その功績や人柄討伐した魔物の種類などだ。これは、冒険者カードに記録された情報をギルドでもバックアップして持っているからだ。だから、カイナが不思議に思うように、冒険者であったエレナの情報が一切ないのは明らかにおかしい。

「冒険者の情報を消す。それって、それこそ、国家権力でも使わないと無理よね」

 そう、カイナの言う通りだろう。

 つまり。

「ガイナルならそれができた」

 ということだろうな。

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