第30話 Dランク昇格
スラムを牛耳っているガイエルからの依頼により、その娘マルティナを救うべきディノシス教団のアジトに侵入した。
そこには悪魔族が潜み怪しげな実験をしていたようだ。
その実験とは、人間を悪魔族に変えるという恐ろしいものだった。
人間としてはもちろん、レーヴェという神剣を持つ俺としてはこれを看過することはできない。というわけでこれを討伐することにしたわけだが、この悪魔族俺が前回ミルダンジョンで戦った奴とは明らかに強さが違う。何せ悪魔族の圧倒的な戦闘力に加え武技も兼ね備えていたのだ。
これにはさすがに驚いた。しかし、それでもレーヴェを手に入れた俺のほうが優位であり、何とかこれを討伐することができた。
『これからのことを考えると、俺ももっと強くなる必要がありそうだな』
俺は切実にそう思った。
『そうね、それがいいわね』
レーヴェもそう感じたようだった。
というわけで、今後は俺の力の底上げをしていくことになった。
「……お、終わったの」
そんな決意をしたところで後ろから声をかけられた。
声をかけてきたのは、ガイエルの娘であり、今回の依頼である救出対象であるマルティナだった。
「何とかね。えっと、それで……」
俺としては聞きにくいが聞かないわけにはいかないことを聞こうとした。
「あたし以外のみんなはすでに、殺されたわ」
マルティナが悔しそうにそう言った。
「そうか。まぁ、とにかくマルティナが無事でよかったよ。サニマも喜ぶだろうしなさ」
「! サニマ姉さん! まさかと思うけど、来てないよね」
そう言ってマルティナはあたりを見渡している。
気持ちはわかる。なんて言ったって、サニマには短剣スキルのほかに隠密スキルがあり、これもまたレベル5であった。つまり、サニマなら確実に俺たちに気づかれることもなくこの場所にいることは可能だろう。
「大丈夫だろう。マルティナの救出依頼はガイエルから受けたもので、ギルドではガイエルのもとに行けといわれただけだったからな。サニマの様子を見ても知っているとは思えなかったし」
サニマはマルティナを妹のように思っているといっていた。もしサニマがマルティナがつかまっていると知っていたら、あんな風には笑っていられないだろうし、たぶん知った時点で飛んでいきそうな気がする。
「そうね。確かに、サニマ姉さんなら、すぐにきそうだものね」
どうやらマルティナも同じ意見のようだ。マルティナは俺よりよくサニマを知っていることから考えても、これが真実だろう。
というわけで、とにかくここを脱出しようと思う。
「マルティナ」
「お父さん」
親子による感動の再会だ。
「マルティナ、よく無事だったな」
「うん、みんなが助けてくれて、でも、そのみんなは……」
「ああ、わかっている。あとのことは俺に任せろ、奴らの敵は取ってやる」
ガイエルはやる気に満ちている。
その理由はスラムの住人の敵のほかにも、マルティナの格好にもあるようなきがする。
何せ、現在のマルティナは俺の毛布を羽織っているとはいえ、その下に身に着けていた衣服は縦に切り裂かれているからだ。
そのため、もしこの毛布がはだければ見えてはいけない部分が見えてしまうと状態だ。
これはさすがに父親としては許しがたいことだろう。
「その敵の悪魔族はノーランが倒してくれたわ」
「そうか、ノーラン、世話になったな」
そう言ってガイエルは頭を下げてきた。
「ああ、俺としても放置できることじゃなかったからな。それにいい情報も手に入った。さっそくギルドに持って帰るつもりだ」
「それだったら、あたしも行くよ」
「マルティナ」
突然マルティナが俺に同行しギルドに向かうと言い出したことに、ガイエルは驚いている。それはそうだろう、マルティナは今の今までつかまり、殺されかけていた。ガイエルとしては手元に置いておきたいだろうからな。
「サニマ姉さんに言わないと、あとで怒られるから、そのほうがあたしとしては怖いわ」
マルティナにとってサニマは相当に怖いらしい。
「まぁ、確かに、それはそうだが……はぁ、わかった、おい、ノーラン、ギルドまでマルティナを頼む」
というわけで、どうやら再び俺はマルティナの護衛という依頼を受けたようだ。
「サニマ姉さん」
「あら、マルティナ、どうしたの」
ギルドに着くなりマルティナはサニマに飛びついた。
その行動に驚きながらも、サニマはマルティナに何かあったようだと感づいたようで俺に視線を向けてきた。
「それについては、ギルドマスターにも報告がある」
俺はその視線を受け止めつつサニマにそう告げた。
「わかりました、少し待っていてください、今、確認してきます」
そう言ってサニマは奥に引っ込んでいった。
ちなみにマルティナも一緒だ。
「おう、ノーラン、話はマルティナから聞いたぜ」
俺がギルドマスター室に入ると、ザガンがそう言ってきた。
「……ああ、かなりやばい話だ」
「……なんで、なんで、言ってくれなかったの」
何やら部屋の隅ではサニマが泣きながらマルティナを怒っているようだ。
「ごめんなさい、サニマ姉さん、あたし、あたし」
マルティナもまた涙を流しながら誤っていた。
そして、そんなマルティナをサニマが抱きしめている。
その様子を視界に収めながら、サガンに俺が見たことや聞いたことをすべて話した。
「……おいおい、まじかよ。確かに、ギルドでもディノシス教団と悪魔族のつながりは多少はつかんでいたが、まさか、そんなことを考えていやがったとはな。わかった、こいつはすぐにでもほかにも報告しておく」
「ああ、頼んだ」
ギルドが全体で動けばひとまず安心だ。
ディノシス教団については、少し頭を抱えているギルドマスターに後を任せることにして、俺は静かに退室することにした。
そして次の日、俺が新しい依頼を受けるためにギルドに入ると、サニマが待ってましたと、言わんばかりに声をかけてきた。
「あ、ノーランさん」
「ん、なんだ」
「お父……じゃなかった、ギルドマスターがお呼びです」
「ギルドマスターが、一体なんだ」
そう思いながらも俺はサニマに連れられて昨日に引き続いてギルドマスター室へと足を踏み入れた。
「おう、来たかノーラン、今日からお前はDランクだ」
入るなりそういわれた。




