第28話 計画
いよいよ悪魔族との対面したわけだけど、それよりなにより、驚いた。
扉を入ってみると、少女が1人磔にされていた。
100歩譲ってそこまではいい、問題はその格好だ。
その少女の服が縦に引き裂かれいろいろ見えてしまっている。
状況や心情を考えるとここは平静を装い、声をかけるべきだろうと思い、何とか精神を落ち着かせてから、声をかけた。
「マルティナか」
声をかけた少女は、聞いていた特徴がマルティナそっくりだったためにそう聞いた。
すると、少女は小さくうなずいた。
どうやら、マルティナだったらしい、よかった、マルティナは無事だったようだ。
しかし、ここにはほかに多くのスラムの住人がとらわれているはずだった。
「ほかの連中は……ああ、そういうことか」
俺はそこまで尋ねて気が付いた。
ここにいないということは、おそらくすでに彼らは殺されているんだろう。
『むごいわね。悪魔族ならまだしも、同じ人間がなんでこんなことを……』
レーヴェのつぶやきに俺も同意したい。
『そうだよな。あいつら、もはや、人間じゃないのかもな』
本当にそう思った。
それから手早くマルティナを張り付けていた金具をレーヴェで切断、落ちそうになったマルティナを手で支えつつ床に降ろし、異空間収納から毛布を取り出した。
「こいつを羽織って少し離れていてくれ」
俺がそういうと、マルティナは毛布は羽織ったがその場からは離れようとはしなかった。
「そ、そんな、あなたも逃げないと、相手は悪魔族なのよ」
「大丈夫だ。俺は以前悪魔族を討伐している」
この言葉にはさすがにその場にいた全員が驚愕した。
それはそうだろう、悪魔族の脅威度は、やつと一緒にいる黒ずくめの連中も、悪魔族本人もまたよく知っていることだろうからな。
「なっ! まさか!」
マルティナも驚いている。
「まぁ、そういうことだから、下がっていてくれ、すぐにこいつを片付ける」
そう言ってから、周囲を確認していったんレーヴェを背中の鞘に納めた。
その理由はこの空間ならレーヴェを本来の大剣の姿としても十分触れるからであり、やはり悪魔族との対決は使い慣れた大剣の方がいいからである。
そして、鞘に納めたのはレーヴェが変化する姿を見せたくなかったからだ。
「というわけだ、お前のような悪魔族をこのまま放置はできないからな、逃げられないようにこの場で討伐させてもらうぜ。ただ、その前に、お前らの目的を話してもらう」
「ほう、ずいぶんな自信だな。貴様が以前倒したというのが、本当に悪魔族だったとしたらそいつはタダの面汚し、悪魔族ではない」
「そうだ。そうに決まっている。人間が悪魔族に勝てるわけはないんだ」
それまでほとんどしゃべらなかった黒ずくめの連中も、さすがに看過できなかったのか一斉にそういいだした。
「お前らがどう言おうが、事実だ。それに、お前もすぐにそいつの仲間入りすることになる」
「貴様、調子に乗りやがって。ふふふっ、まぁ、いいだろう。貴様がどんなに自信があろうと、俺に勝とうなど無理な話、冥途の土産にとして、話を聞かせてやろう」
そういって、悪魔族は自身の計画を話し始めた。
その様子を見るとどうやら、俺に勝てると思っているようだ。
レーヴェを持つ俺にはどうあってもこいつじゃ勝てないだろうが、俺はおとなしくこいつの計画を聞くことにした。
まず、こいつら、ディノシス教団についてだが、これはディノシスという名持の悪魔を中心としている組織ということだ。
そして、このディノシス、どうやら次期悪魔王を目指しており、多くの悪魔族を従えようとしているらしい。そして、目の前の悪魔族はそんなディノシスに仕える悪魔族で、主に実験を担当している。
そして、その実験だが、これは本当に虫唾が走った。
なにせ、その実験というのが人間を悪魔族に変えるというものだったからだ。
その実験をスラムの住人をさらって実験体としていたという。
そして、ここにいる人間たち、つまり黒ずくめの連中だが、こいつらはその実験の結果として、悪魔族となることを望むもの達だった。
「なぜだ、なぜ、人間が悪魔族になる必要がある。悪魔族は人類の敵であり神々の敵だろう」
俺は半ば叫ぶように黒ずくめの連中に向かって問いただしていた。
「お前のような若造にはわかるまい。我らは、悪魔族となり、永遠の命と、絶大な力を手に入れるのだ」
もはや、妄信としか言いようのないことを言い出した。
「……処置なしか」
『……そうみたいね。残念だけど……』
レーヴェも少し哀しそうな声を出している。
剣なのになんとも表情豊かだ。
そうして、俺はいったん目を閉じてから目を開け、背中に戻していたレーヴェを抜き放った。
「大剣? 先ほどまで、片手剣だったはず」
さすがに不審がっている。
「ほぉ、形態を変化させる剣か、それはぜひ手に入れ、研究したいものだ」
やはり、思いっきりバレていた。
まぁ、いいさ、どうせ誰にも言えないしな。
そう思いながら構えると、まずは一閃横なぎに振った。
「俺の剣は特別でね」
それからそういったが、悪魔族以外は誰も聞いていない。
何せ、みんな真っ二つになったからだ。
その理由は、俺の先ほどの横なぎにあった。
実は、その際俺はレーヴェに風魔法であるウィンドカッターをまとわせ、斬撃そのものを飛ばしたのだ。
この方法は最近発見したもので、普通の剣には無理な芸当だがレーヴェは神剣、ちょっとやそっとのことじゃどうにもならないからこそできる荒業である。
「これはこれは、なんと素晴らしい、斬撃に魔法を加えるとは、これは是が非にもその剣を手に入れたいものだ」
悪魔族はそういって舌なめずりをした。
『気持ち悪いわね』
『同感だ』
レーヴェに同意しながら、先ほどの攻撃を上に飛び上がってよけていた悪魔族に対して、素早くレーヴェを切り返し接近しつつ切り上げた。
俺としては、これで吹き飛ぶぐらいはできると思っていた。
しかし、悪魔族は持っていたナイフをレーヴェに合わせうまく受け流してしまった。
これには俺も驚いた。
「おいおい、悪魔族がなんで剣技を……」
そう、受け流すなんて芸当は剣技となる、悪魔族というのは、その存在そのものが強い、俺たち人間に対してだったら、絶対的な優位に立っている。そのため、悪魔族は力業で十分に人間に勝つことができるのだ。
そんな悪魔族が剣技を使うというのは、驚愕以外の何物でもない。
実際、ミルダンジョンで戦った悪魔族は剣技なんてものは一切使っていなかった。
だから、俺でも圧倒できたんだけど、こいつはどうやら、少々手こずりそうだ。




