第14話 悪魔族
「おや、どうやら、お客さんのようですね」
ミルダンジョン最奥の部屋にたどりついた。
そこは、本来であれば、何もいないか、少し強めの魔物がいるはずであった。
しかし、今俺たちの目の前にいるのは、紳士風の出で立ちの男が両手を広げ歓迎ムードで立っていた。
そこまででも十分怪しい、こんなところに人がいるわけがない。ダンジョン内に住むってどんだけ頭がおかしいんだと思ってしまうだろう。
だが、今俺たちにとっての問題はそんなところじゃないだろう。
「おや、おや、どうしました」
固まっていて、なんの反応も示さない俺たちを見て、男はそう尋ねてきた。
「あ、あ、あく、悪、魔」
誰かがそうつぶやいた。
悪魔族、それは俺たち人類を生み出した神々と敵対している邪神が、生み出した存在であり当然俺たち人類と敵対している者たちのことだ。その容姿は、一見すると俺たち人間と変わりがないように見える。しかし、青みがかった肌、頭に2本角、何より目が赤く、白目部分は黒い。そして、何より、その身にまとう魔力のすさまじさが絶望を誘う。
そう、そんな悪魔族が今俺たちの目の前にいるのだった。
「う、うそ、だろ」
「どうして」
「こんな」
「まじかよ」
俺たちは、今まさに絶望していた。
悪魔族と戦うには、最低でもDランクの力がいる。Fランクであり、今Eランクの試験を受けている俺たちでは到底太刀打ちはできないだろう。
だがしかし、幸いにも俺たちのほかにナーヤとサイトスがいる。彼らはDランク、何とかなるかと思い、ふと2人を見た。
すると、2人も俺たちと同様、冷や汗でいっぱいになっている。
「む、無理」
ナーヤが涙目でそう小さく言ってきた。
確かに考えてみれば、そうだろう、なにせ、最低でもDランクといったのは、あくまで複数人のパーティーでの話。そう、以前俺たちがオークを討伐した時と同じだ。いくらDランクでも2人では、俺たちと同じく太刀打ちできないだろう。
そこまで考えた俺たちは一斉に後ろを振り向き今入ってきた扉に向かって走った。
「おや、もう帰ってしまうのですか、それは、つまらないですね」
悪魔族がそういった途端扉が勢いよく閉まり、いくら押しても引いても開かなくなった。
「あ、開かない」
「おいおい、まじかよ」
どうやら、悪魔族が扉を開けられないようにしたようだ。
つまりこれらのことから、その答えは。
「詰んだな……」
どうやら、俺の物語はこれで終わりらしい。
短かったなぁ、まさか、ここで終わりとは、俺としてはもっと冒険を楽しみたかった。ほかの街にもいきたかったし、ほかの国だっていってみたい。そうそう、せめて隣国ナンバル勇者王国に行って、展示されているという勇者の聖剣、見たかったなぁ。
俺は、そんなことを考えていた。
しかし、同時に、何とかあがいてみたいとも思っていた。
やはり、死にたくないし、でも、無理だと思っていても最後は冒険者らしく戦って死ぬか。
と、そう思ってグロウたちを見た。
するとグロウたちも俺と同じ思いなのか、そんな目をして俺を見ている。
「はぁ、せめて、一矢ぐらいは報いたい、か」
「ああ、そうだな、適わないまでも」
「やるしか、ないよね」
「それしか、ないんだもんね」
「あんたたち、いいわ、付き合ってあげる」
「うむ、そうだな」
こうして、俺たちは決を新たにして悪魔族と対峙した。
「おや、どうやら、何かを決意されたようですね」
悪魔族がそういった瞬間、俺がファイアーボールを放った。
「おっと、これはこれは、いきなりですね」
当然俺の魔法なんて効かないようで、よけることもせずに真正面からそれを受けて、傷1つない。
だが、その瞬間グロウとゴラスがそれぞれ剣とこぶしで攻撃を入れた。
「そのような、攻撃では私には当たりませんよ」
そういって、悪魔族はあっさりとよけてしまっていた。
だが、その進行方向に読んでいたようにナーヤが逆手に持ったダガーで切りつけた。
ガキンッ
だが、当たった瞬間そのダガーが折れてしまった。
「くっ」
「ならば」
それを見たサイトスが、ナーヤが身を引いた瞬間に、準備していたファイアブラストを放った。
「ほぉ、これは、これは、さすがは魔族ですねぇ」
ファイアブラストといえば、炎属性のレベル6でようやく使える魔法だ。
もちろん俺には使えない高位の魔法。
しかし、それを受けたというのに悪魔族は少し熱そうにしているだけだった。
おいおい、あれも聞かないのかよ。
この時点で俺の魔法が全く効かないのが決定した。
だからこそ、俺は背中に背負っていた、飾りの先祖伝来の槍を構えることにした。
「最悪だな、これはよぉ」
俺はそうつぶやいてから、槍を腰だめに構え、何とか突きを入れた。
しかし、当然槍術スキルが何とか獲得出来ていたというレベルしかない俺の攻撃は効かない、あっさりとよけられてしまう。
だが、それでいい、そのすきにほかのみんなが一斉に攻撃を入れた。
「フフフッ、なかなか、面白いですね」
悪魔族はそれもあっさりとよけてしまっている。
「くそっ、化け物が」
グロウが、悪態をついていたが、その気持ちはよくわかる。
「どうするの、これじゃ……」
「い、一撃も入らないなんて」
「戦力差が、あり過ぎる」
「強すぎだよ」
みんな疲弊が激しい。
「おや、もう、終わりですか、それでは、今度は私が行きましょう」
悪魔族がそういってきた。
「やば……」
俺がそう言おうとした瞬間、悪魔族が突然ものすごいスピードで動いた。
「ぐほぉぉ」
気が付けばサイトスがくぐもった声を出しながら、飛んでいた。
ドゴォォン
そして、壁に激突。
「サイトスー」
ナーヤが必死でサイトスを呼んだ。
「さて、次は、どうしましょうか……そうですね。あなたにしましょう」
そういって、悪魔族は今度は、なんと俺に向かって突っ込んできた。
俺は思わず槍を構え防御した。
しかし……
「ぐわぁあぁ」
とてつもなく重い攻撃を食らったことだけは覚えている。
そして、俺もまた壁に激突。
ドゴォォン
「「「ノーラン」」」
耳のどこかでグロウとゴラス、ケイトの叫び声が聞こえていた。




