第01話 無謀な出発
新作です。
「ノーラン、それ、本気で言っているの」
「本気だよ。俺は冒険者になる」
「マジかよ。お前ろくに槍も振れねぇじゃねぇか」
「死ぬぞお前、やめとけって」
幼馴染たちに一斉に反対されている俺はノーラン、アーバイト王国の東側の端に位置する辺境も辺境の小さな村、カルム村に住んでいる。
この村は周囲を森に囲まれているせいもあり動物はもちろん、魔物や魔獣が多く生息している。そのため村の子供達は幼い時分から槍の稽古を受けることになる。
そして、幼馴染の一人が言った、俺がろくに槍も振れないということはここに起因しており、俺はどういうわけかいくら槍の訓練をしてもうまく扱うことができない。
他の武器ならできるかもしれないがあいにくとこの村には槍しかなかった。
というのも、この村を開拓した人が槍遣いだったようで、その人を尊敬していたほかの住人が自分もその槍を使いたいと考えたために結果として、槍遣いしかいない村が誕生してしまった。
だから、その槍が使えない俺はこの村では異端であり、弱い人間となる。まぁ、だからといって別に馬鹿にされているわけではない。
でも、そんな俺には秘策がある。
「いや、大丈夫だよ。俺にはこの魔道具があるから」
そういって、腰からさげた袋に入れてある魔道具を取り出して見せた。
俺には槍の才能の代わりに魔道具の作成についての才能があった。
それで、この魔道具は、俺が発明したものの1つで空気中に存在している魔素をかき集めて俺の魔力を常時回復してくれるというもので、簡単に言えば魔力炉だ。
魔法は、誰でも扱うことができるが通常、魔法を使えば魔力を失うが、空気中に魔素があれば徐々に回復していく。といっても、理由はわからないが起床時と就寝時では回復速度が全然違う。そのため普通はその日に失った魔力は就寝によって回復させる方法をとる。
しかし、俺が作ったこの魔道具があれば起床時でも常に回復していくので、たとえ戦闘時でも魔力切れを起こすこともなく魔法が使えるという夢の魔道具だった。
「確かに、それがあれば、ノーランでも十分戦えるだろうけどな」
「でも、さすがに魔法だけって、無理があるだろ」
「そうよ、この村じゃダメなの」
確かにみんなの言っていることはわかる、実戦で魔法だけというのは結構厳しいものがある。魔法はあくまで遠距離戦向きであり、敵との遭遇は遠距離だけとは限らないからだ。
「ああ、夢だったからな。ていうかみんなも知っているだろ」
「それは、知っているがなぁ」
「うん、でも、それはあくまで小さいころの話じゃない」
「あの頃は俺たちとも同じぐらいだったからな」
それから、しばらく俺はみんなを説得していった。
その結果、何とか無事に幼馴染からしぶしぶという感じではあったが賛成を勝ち取ることができた。
「まったく、しょうがない奴だな、いいか、死ぬんじゃないぞ」
「そうよ、危ないときは逃げなさいよね。逃げることは別にかっこ悪いわけじゃないんだからね」
「そうだな。距離が取れればノーランなら問題だろうしな」
「おう、わかっているって」
「あとは、両親だろ、説得できるのか」
「何なら、俺たちも手伝うぞ」
「ありがと、でも大丈夫だ。というかたぶんうちの両親ならOKもらえるはずだ」
そう、俺にはその自身があった。
その理由は、やはり、この魔道具だ、ほかにもいくつか魔道具を持っているし、そもそも俺が冒険者になりたいという夢を一番よく知ってくれているし、両親もまた俺を冒険者にしたかったそうだからだ。
まぁ、俺に槍の才能がないとわかった時はさすがにあきらめたようだったがな。
それから、家に帰った俺はさっそく両親に伝えた。
「父さん、母さん、話がある」
「話? なんだ突然」
「何よ、改まって」
「うん、実はさ……」
俺は少し緊張しながらも冒険者になりたいと話した。
もちろん魔道具についても話した。
「……うーん、冒険者か」
「……確かに、あなたが冒険者になることがお父さんとお母さんの夢ではあったけどね」
「うむ、それはあくまで槍が扱えればということだったからな」
「うん、わかってる。だからこの魔道具を作ったんだ」
「……」
父さんと母さんは考え込んでしまった。
「……そうだな、母さん、ノーランもちゃんと考えてのことだ。俺としては賛成してやりたいが、母さんはどうだ」
「……そうね。私もお父さんと同じ意見よ。でも、いいノーラン、無茶だけはしないようにしなさいよ」
「ああ、わかった」
こうして、無事両親の了承を得たことで俺はついに冒険者として、村を出ることとなった。
説得から数日後俺はようやく準備を整えて村を出る日がやってきた。
「ノーラン、元気でな」
「たまには、帰ってきなさいよ」
「その時は話を聞かせろ」
「ああ、たっぷりと冒険話を持ってきてやるよ」
俺は幼馴染たちとの別れの挨拶をかわしてから両親の方を向いた。
「そうじゃ、行ってくる」
「おう、無茶だけはするなよ」
「行ってらっしゃい、ノーラン、忘れ物はない。それと、見慣れないものを食べてお腹壊さないようにね。あと、水にも気をつけなさい。それから、変な人について言ったり、だまされないように。あと……」
母さんの心配が止まらない。
「母さん、そのぐらいにしないと、ノーランがいつまでたっても出発できないぞ」
父さんが止めてくれたおかげで何とか母さんが止まってくれた。確かにこのままいくと夜までに街にたどり着けない。
「そうね、うーん、心配だわぁ」
「大丈夫だよ、母さん、いくら俺が田舎者でもそれぐらいは気を付けるから」
「そう、それならいいけど……」
まだ、母さんは心配が止まらないようだ。
それだけ、愛されているということが分かっただけでも、俺としてもありがたい。
「それじゃ、行ってくるよ」
そういって俺は村を出た。
その際何度も後ろを振り返ると、両親や幼馴染、村のみんながいつまでも手を振ってくれていた。
それを見た俺は、槍もろくに使えなかったのに、みんなに愛されていたんだなぁと、改めて感じながら、少しの寂しさと明日への希望を胸にさらに歩を進めることにしたのだった。




