跳び方を忘れた鳥井
友達に誘われてこの教室に来たけど、走り高跳びなんて最近やってない。
たぶん最後にやったのは小学校の低学年くらいで、恐怖心がものすごいある。
もう何十年も前の話だから、当然、跳び方は忘れてしまっている。
あの時はなんとか跳べたと思うが、忘れていて全くイメージが出来なかった。
バーとマットがある方向へと曲線的に走り、右足で踏み切ろうとした。
しかし、結局惜しくもなく、失敗に終わった。
全く跳ぶことも出来ず、走りながらバーを掴んだだけだった。
だいぶ年下の小さな子供も、だいぶ年上のおじさんも普通に跳べていた。
恥ずかしさと不甲斐なさで、その場から逃げだしたくなった。
気が付けば、バーを持ったまま出口に向かって走っていた。
出口にバーが引っ掛かり、パニックからも、この体育館からも、全然抜け出すことが出来なかった。