スワロウ 2
少し雨脚が弱まってきたが,私の動揺は強くなるばかりだった。燕が言葉を発したのだ,それも私の望みを叶えるとか抜かしている,驚くなという方が無理だ。しかしなぜいったいこの燕は「話せるのかって?。」燕が当意即妙に口を,いやくちばしを開いた。まるで私の心を読んでいるかのようだった。「その通り。」「僕は人の思考を読めるし,人に語りかけることもできる。なぜかと君が疑問をぶつける前に答えておくと,僕達は燕にして燕にあらず,そういう存在だからなんだ。」言葉の意味が飲み込めない。「君は君達がチンパンジーや猿といったいわゆる霊長類の仲間だということは知っているだろう?。」私はうなづく「僕達燕も同じように何種類もの仲間達がいてそれらは主に燕と同じ,もしくは似た種と君達は定義している。でも,それは大きな間違いで,燕といっても君達でいうネアンデルタールやクロマニョンといった,似たようで違う存在がいて知能の低い言葉を話せない連中とICチップのように圧縮された高度な脳を持っている僕達みたいな存在の2種がいるんだ。たとえ高度といっても僕達はマイノリティ側だけどね。」
「高度な知能を持ってるたって高度な声帯がなければ話すこともできないじゃない。」「そのとおりだ。僕は音をだして会話をしている訳じゃない。直接思考を伝達させているんだ。その信号を君達の脳が読み取って勝手に言語に変換し,理解するのさ。君達の言葉で言うテレパシーみたいなもの。だから僕達には言語の壁なんてない,思考を伝えさえすればそれですむからね。」「じゃあ。」私は口を開く「その高度な燕様がどうやっって私を自由にしてくれるっていうの?」「僕達は現実そのものに干渉する事ができるんだ。」意味がわからない。「君は幸せを運ぶ燕の話をきいたことはあるかい?」「軒先に巣ができるとっていう・・。」「そう。それをやってるのが僕達,いわば高度な知能を持ってる方の燕なんだ。現実に干渉する力でね。」「でもそんなことができるならあなたたちの都合のいいようになってるはずじゃない,例えば自然に徒なす人類を消し去るとか・・。」「僕達は君達みたいに目先の利益に目を泳がす生物じゃない。それに一度変更した現実は戻すことができないんだ・・。現に僕達は何回かとりかえしのつかないことをしたことだってある。」「例えば?」「あげたらきりがないね,人々を抑圧から救うために革命を成功させたらより暴力的な政府が誕生してしまったとか,原子爆弾が誕生したのだって半分くらいは僕達のせいだ。」「高度な知能を持っててもなにもかもがうまくいくってもんでもないのね。」「君達でいう政治家だってそうだろう。」確かに,言われてみればそうだ。