第二本 〜イカリソウ〜
イカリソウの花言葉は
『貴方をはなさない』
俺は、赤井勇真 13歳 中学2年 牡牛座。
部屋の窓からボーッと青い空をながめる。今は4月、花も虫もみんな元気になっていく時期だ。
でも今の俺はそんなに元気じゃない。
最近彼女の麻美が冷たいんだ。ショートカットの黒い髪に黒い目のクラスでも可愛い方の女子。
話しかけても無視される・・・。
目も合わそうとしない。
別に何も特別なことをした覚えはないのだが。
もうかれこれ1週間は、話していないし・・・・何かあったら言ってくれればいいのに・・。
麻美とは去年同じクラスになって、俺から告白した。その時は麻美すごく喜んでくれて・・・・「私も前から好きだった」て・・・。
「はぁぁぁ、学校行くかなぁ」
知らず知らずのうちに出てしまうため息。このごろの勉強なんて全然頭に入っていない。麻美の事が気になってしょうがないのだ。
それでも学校には行かなくてはいけない。
俺はもう一度ため息をついて家を出た。空は悲しいほどに雲一つない晴天だ。周りに人はいなくてすごい静か・・・・・
歩いて10分ほどで学校についた。
(!!!麻美)
教室に着くと友達と楽しそうに話す麻美の姿。
「あの・・麻美・・」
「みんな!!あっちの方行こうよ。此処日が当たって暑いしさ」
俺が麻美の近くに行って話しかけようとすると麻美は俺を無視して友達と廊下の方へ行ってしまった。
俺がその場に突っ立ていると、友達の明が話しかけてきた。
「おい。もうあきらめろよ。お前、完全に無視されてるぜ。きっと嫌われてるんだよ。だいたいあんなに可愛い女子が、お前なんかと本気で付き合うかよ」
明はそう言って俺の肩をポンポンとたたく。その顔はどこか嬉しそうだ。
(このやろぅ。完全に喜んでいる)
もともと明は俺と麻美が付き合うのに反対だったのだ。
「そうかもな。」
キーンコーンカーンコーン
一時間目のチャイムが鳴った。それから、二時間目、三時間目、四時間目、給食、五時間目も
終わった。
けっきょく今日も俺と麻美はたいして話さなかった。
「勇真、いっしょに帰ろうぜ」
「あ、いや。今日は一人で帰るわ。」
「ん?そうか?」
俺が断ると明は他の友達の所に走っていった。
すぐに家に帰る気にもなれず、ボーっとその辺をブラブラと歩いていると、一人の茶髪の女子がいた。彼女は俺を見つけると近づいてきた。
「小野?どうしたんだ?」
小野は、麻美といつもいっしょにいる友達だ。小野はかけている眼鏡をクイッと上げると俺を睨んできた。
「何だよ・・・・」
「勇真。あんた何、考えてるの?いつもヘラヘラして。麻美がどんな思いしてると思ってんの?」
「どんなって。俺が何したっていうんだよ。」
俺がそう言うと小野は、目を大きく開けて、ハ?というような顔をした。が今度は首を横にふって、あきれたというような顔をした。
「あんたねぇ。女っていうのは、繊細なのよ。あんたが他の女に誰でも気がある。みたいな態度して。他の女と買い物とか行ったりして・・・。麻美はてっきり捨てられたと思って・・。
それで、あきらめるのに、もう話さない方がいいって。」
「そ、そうなのか!?」
「それなのに、あんたは、いつも麻美〜麻美〜って。でどうなの?あんた麻美の事は、今も好きなの」
小野は腕を組みなおした。何かすごく迫力がある。
「あ、あたりまえだろ。それに、買い物とか行ったりしたけど、あの子は知り合いで・・・」
俺が、そう言うと、小野はフッと笑って
「安心したわ。そうなら早く麻美の所行ってきなさいよ。じゃぁね」
と言って、走って何処かに行ってしまった。まるで嵐のようだった。
(麻美・・・・・)
きっと麻美はつらかったんだと思う。俺より何倍も・・・何十倍も・・・・。
「っっっ」
俺は走り出した。本気で麻美が好きだから。前にテレビでやっていた事を思い出す。感情を伝えるのには花を使うといいって・・・。
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公園。もう暗くなって空には星が光っている中。ブランコに一人で座る少女。ずいぶん探した。学校にも行ったし麻美の家にも行った。麻美のいそうな所は全部。
やっと見つけた。俺と麻美が始めてデートした所。
そっと麻美に近づく。麻美はうつむいていて俺には気がついていない。
毎晩こうしていたのだろうか。それを思えば、本当に俺はヘラヘラしてバカみたいだ。きっと学校のも無理して演技してたんだ。そんなのが分からなかったなんて・・・。
「麻美・・・」
そっと麻美の名前を呼ぶと、麻美はそっと顔を上げる。その目には涙が光っていた。
「!!!何?どうしたの?こんな時間に・・・私、そろそろ帰らなくちゃ・・」
麻美は俺に気がつくと急いで立ち去ろうとした。
「!!!な、何よ!!」
俺はそんな麻美を後ろから抱きしめる。
「ごめん。・・ごめん。麻美。ごめん・・・」
俺が謝ると離れようとしていた麻美が静かになった。麻美を抱きしめる力が自然と強くなる。
「麻美。俺、麻美だけだから」
「・・・・・」
何も話さない麻美をクルリと俺の方に向ける。
そして手に持っていた花束を麻美にわたす。急いで、買えるだけ沢山買った花。
イカリソウの花束。
麻美は何も言わない。うつむいているせいで表情もよく見えない。
「もう、離さないから。何があっても・・。麻美が俺を嫌いになっても・・・。もう、絶対に離さないから。この花に誓うよ・・・。だか「絶対だよ!!!」
(!?!?)
麻美の叫ぶような声で俺の言葉はさえぎられた。顔を上げた麻美。麻美はボロボロと涙をこぼして花束をギュッと抱えなおした。
「絶対。絶対、絶対だよ。」
「うん、絶対もう離したりなんかしないから・・」
俺がそう言うと麻美は、さっきとは反対に小さな声で話しだした。
「嫌われたと思ってった。勇真に本当のこときいてれば、良かったのに・・・できなくって・・・・勇真と話すのも、顔を合わすのも怖くって・・・、ごめんね。無視して、私、勇真の事、全然考えてなかった・・・。」
話し終わった麻美をもう一度抱きしめて、そっと麻美の唇に口付ける。
「ん、・・」
もう離さない。そんな思いをこめて花束と誓いのキスを君に・・・。
イカリソウの 花言葉は
『貴方をはなさない』
こんなめちゃくちゃな文を最後まで読んでくださった方に感謝です!!