第一本 〜勿忘草〜
勿忘草の花言葉は
『わたしを忘れないで』『真心の愛』
それは暑い暑い真夏の日。
私の名前は虎岸すみれ 14歳 女の子です。
今、私は学校の校門の前で人を待っています。この暑い中もう20分も待ってます。
(あー何か頭がボーっとしてきた)
暑すぎて頭がボーっとする。周りの木や家が熱でギラギラゆらいでいる。
暑いせいか歩いている人も少ない。車も通らない。セミの泣き声だけが聞こえている。
「・・・い・・・おーい・・・」
そんななか人の声が聞こえた。声のした方を向くと、そこには私が待っていた大好きな人。
「衛!!」
私は急いで衛の所へかけよる。
「遅かったじゃん!!!」
「あぁ!?遅いって・・・今、待ち合わせの時間ちょっきりじゃねーか」
「でも!・・・普通もっと早く来るじゃん」
私が一人で怒ってると衛は、困った様に笑って「暑いから早く行こうぜ」と言った。
「そうだね」
何かニコニコ笑ってる衛を見てると、あんな事で怒っている自分がバカみたいに思えてきた。
きっと暑すぎて頭がどうかしたんだと思う。
二人で並んで歩く。
この人は三村衛 15歳 彼氏。付き合い始めてから3週間ちょっと。今日は楽しみにしていたデートの日。
行く場所は水族館。
歩いてそんなに時間がかからない所にある。
「ねぇ、衛そんなに着てあつくないの?」
さっきから気になっていた。衛はこんなに暑いのに、ジーパンをはいて上にはパーカーを着て
頭にはキャップのぼうしをかぶっている。
「ん?あぁ。暑いけど俺、日光湿疹ひどいんだ。」
「えっ!!そうだったの!!」
「まぁな。」
衛はへらへら笑いながら言ってるけど・・・
「早く行こう!早く!!」
知らなかった。そんな事一言もきいてない。
私は衛の手を握って走り出した。きっとすごく苦しいに決まってる。いくらきっちり服を着ていたって日に当たってしまうところはある。
私たちはそのまま走って水族館に駆け込んだ。
「「ハァっハァっハァっ」」
全力で走ったせいで二人とも息を切らして、汗だくになっている。
「ハァっこんなに走らなくても少しくらいなら大丈夫なのに」
「うっっでも・・ハァハァ」
「まぁいいけどよ。それより喉渇いたな。何か買って飲もうぜ」
「うんそうだね」
とりあえず自動販売機で何か飲み物を買う事にした。
「何がいい?」
ごそごそとお金を出す衛。
「えっ!?買ってくれるの!?」
「ん?だから今日は財布持ってこなくていいっていったろ?」
ニコリと微笑んで言う衛。
ドキッ
(っっ//そう言うの反則だよ///)
顔が赤くなってないか心配だ。衛といると心臓が休まらない。いっつもドキドキしてる。
「どうした?」
「え?!う、ううん。なんでもない。私お茶でいいや」
「ん?そうかわかった」
(あ、あせったぁ〜〜///)
だって気づいたら、衛は私の顔を覗き込んでいて、顔がすごく近くにあったから。
衛は自分のと私のを買って、お茶を私にくれた。
「なぁ。クマノミ見に行こうぜ。俺好きなんだ」
「うん。いいよ」
ドキドキしてるのがおさまっていく。
水族館の中は薄暗く、ヒンヤリとしていて気持ちいい。まるで別の世界みたい。人もあまりいなくて静かだ。
「あっ。衛、クマノミあっちだよ」
「あっ本当だ」
「小さくてかわいいね」
「そうだな。でも、このイソギンチャクといっしょに居るのがいいんだよ」
「そう?私はクマノミだけでもいいと思うけど・・・」
私がそう言うと衛はクマノミはイソギンチャクと居なきゃダメなんだって真剣な顔で言った。
「そうだよね。イソギンチャクがいっしょだからいいんだよね」
「うん」
(本当に変なところでこだわるんだから)
それから少ししてイルカを見に行く事にした。これからイルカショーが始まる。
行く間にも色んな魚を見た。
エンゼルフィッシュとか、サメとか、亀とか、あと名前はわからないけど色んな熱帯魚とか、深海魚。
(!!??)
歩いてると、ふっと手に暖かい感触。
衛を見ると、ニコニコ笑って「別にいいだろ?」
て言った。
(----////)
いい。いいけど恥ずかしい。だってこんなところで手を繋ぐなんて・・・
自分でも顔に熱が集まるのがわかって、うつむいてしまった。
(いきなりこういう事するのやめてよねっっ///)
本当にいきなりなのだ。こんなんだったら心臓がいくつあってもたりない。
そのまま会場まで行って。そのままイルカショーを見た。手を繋いだまま。
「おぉ!すみれ!!見たか今の、すげーな。どうやってあんなに高く飛ぶんだろうな」
「本当。すごいね」
小さい子供みたいにはしゃぐ衛を見ていると、笑ってしまう。何か心が癒される。
ザバーン!!大きな音をたててイルカが飛ぶ。その度に衛は「おぉ!」って声を上げる。
ずっと。ずっと。永遠にこんな時間が続けばいいと思った。ずっと・・・。
イルカショーも終わって、その後もアザラシとかの海獣ショーも見た。
「楽しかったね。」
「そうだな。イルカのショーもすごかったけど、やっぱりクマノミがかわいかったな。イソギンチャクと」
「やっぱり、クマノミなんだ・・」
「ん?何かいったか?」
「ううん。なんでも」
私がボソリと言った言葉は聞こえなかったらしい。それもおかしくて、おもわず笑ってしまった。
クスクス笑う私を不思議そうに見ている衛。そんな衛に帰ろうか。て声をかけて歩き出す。
外に出ると大分涼しくなっていて、空はオレンジ色に染まっていた。
歩いてると、突然衛は歩くのを止めてしまった。
私がどうしたの?て聞く前に衛は
「ちょっと待ってて」
と言って、あれから、ずっと繋いでいた手を離して、目の前にある小さな家に入っていった。
「なんなのよ」
(まったく本当に何するにもいきなりなんだから)
一人置いていかれた私は不機嫌。でも一応待っててと言われたので、ブロック塀によしかかって、待つ事にした。
(そろそろ髪、切らないとなぁ)
暇な私は肩まで伸びてしまった髪をいじりながら、そんな事を考えていた。
衛はそんなにしないで、帰ってきた。
「ごめんなぁ〜」
衛の事を怒鳴ってやろうと顔をあげる。
(!!!)
「はい。コレ」
ズイッと私の前に押し付けられるのは、大きな花束。
「何・・?コレ」
「すみれにやるよ。」
私は押し付けられていった花束を受け取る。
「何なの?この花?」
蒼くて綺麗な花。
「これな、勿忘草って言うんだ」
「勿忘草?」
「そう。勿忘草」
(---!!えっ!!)
いきなり衛に抱きしめられる。持っている花束がガサリと音をたてる。
「勿忘草の花言葉は『私を忘れないで』と『真心の愛』なんだ。」
顔を上げると真剣な顔の衛と目が合う。
ドキッドキッドキッ
心拍数が上がっていく。顔も熱くなっていく。
「愛してる。すみれ」
(!!!)
唇にあたるやわらかい感触。
キスされた。
時間が止まったような。そんな感じがする。いつもキスなんてしないから。
重なっていた唇はすぐに離れた。
「何考えてるの。ここ外だよ」
「ははは」
私が睨んで言うと衛は笑った。
その時の衛の顔が赤かったのは夕日のせいなんかじゃなかったと思う。
「帰るか」
「うん」
あれから3日がたった。いつもの変わらない日々。
ジリリリリリリリリリリリ
一本の電話が鳴った。
「すみれー。出てちょうだい」
「はーい」
私は急いで茶の間にある電話を取った。
「はい虎岸ですけど・・・」
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ガシャーン
「すみれ!?どうかしたの」
大きな音に母がおどろいて台所から出てくる。
でも、でも。
今の私には電話が落ちた音も、母の声も耳に届かなかった。
(衛っ衛っ。まもるっ。)
家にかかってきた一本の電話。それは、三村 衛が交通事故で意識不明の重体だという知らせ。今近くの病院にいるらしい。
私は全力で走った。
「衛。お願い。無事でいて」
私は病院に入ると、衛の病室に急いで走った。途中で看護しさんに注意されたかもしれない。
「衛っっ」
病室に入ると、衛の家族が居て泣いていた。
家族の人は私に気づくとコッチに来て下さい。とベットの横を開けてくれた。
固まってる私に衛のお母さんが説明してくれた。
衛はまだ生きているけど、もう助からなくて。
交通事故の原因は車が、いきなり歩道に突っ込んできたらしい。
家族の方は私を気づかってか、衛と二人きりにしてくれた。
「まも・・る?」
そっと頬に触れる。あるのはかすり傷で目だった大きな傷はない。
「うそ・・。死ぬなんてゆるさないよ・・・っっ」
声に出した瞬間、こらえていた物が瞳から水になって、あふれ出す。一度出だしたものは止まらなくって。衛と居た時間が頭の中をよぎる。
衛の笑顔が、感触が、声が・・・・・
まるで本物のように「すみれ」て・・・・本物のように・・・・。
「す・・・みれ・・」
「えっ!!」
かすれているけど、それは衛の声。
顔を上げると、微笑んでいる衛がいた。
「良かった!もう本当に死んじゃうかと思った!!」
私がそう言うと衛は悲しそうに笑って首を横に降った。
「え??」
「もうダメなんだ」
「衛・なに言って・・」
「自分のことは、わかるよ。もうダメなんだ。」
「そんなこ「すみれ」
私の言葉は衛によって止められた。これは何も言うなってこと。
そして衛は私の手をそっと握る。
わたしもその手を両手で握り返す。
「すみれ。忘れないでくれ。何年たっても、新しい彼氏ができても・・・三村 衛が・・いた・・事・・俺・が・・すみれを・・本気で・・・愛・した・・こ・・と」
衛はそれだけ言うと静かに目を閉じた。
ピーーーーーーーー
病室に響く高い音。動かなくなった衛の体。
こうしてみていると本当に、眠っているだけのよう。
「忘れるわけ・・ないじゃない!!・・・バカっ・・ばかぁ・・・本当にいっつも勝手で・・・私がいくら迷惑・・したと・・思って・・っっぅぅ・・」
その後、衛の机にあった私宛の手紙。手紙には押し花になった勿忘草が入っていた。
すみれへ
今俺は15歳です。今からこんなの書くのはおかしいと思うけど、何年たても俺の気持ちは、変わらないと思うから。
コレを読むすみれが何歳かはわからないけど、俺が死んだ後でしょう。
俺が言いたい事は、ただ一つです。
俺を忘れないでください。愛しています。何年たっても・・・。
机の上にある勿忘草
私は一生あなたを忘れません
勿忘草の 花言葉は
『私を忘れないで』『真心の愛』
読んでくれて、ありがとうございました。