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金星の声
冬の宵闇はからからと軽く
風に吹き飛ばされそうなほど薄いヴェールが
明星を覆って揺らめいている
それが一際目立っているのは
星がいっとう輝くからか
それとも他が霞んでいるからか
隣で笑う月より明く
日暮れ時の侘しい心の隙間を照らし出す
もの哀しさは一瞬
夜が近づく足音に
夜が歌う静けさに
身を投じて手足を伸ばして
気怠げな吐息は白い粒になって
冬の粒子と溶け
温もりを探して旅に出る
真空の狭間で雪となり
明星の熱で霧になる
そこに形あるものはなく
真っ直ぐな光線が行き過ぎるだけ
移ろう交点は地熱でほどけて
数多の星々を横目で見遣りながら
目にも留まらぬ速さで駆け抜ける
宇宙を一回りして
もう一度金星の声を聴くために




