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水面
夜空の水面がさざめいて
私はそっと口を閉ざす
星々が囁く嘘か真か分からぬうわさ話に
訳知り顔で頷いて
本当のことなんて
知らなくってもいいじゃない
足のつかない空気に流され浮遊して
踵の折れたピンヒールを
後生大事に抱えこむ
君には本当のことを
知って欲しいだなんて
そんな台詞は無粋で軽薄で
この夜にはちっとも似合わない
時折吹く風が運んでくる
金木犀の匂いに立ちくらみそうになるのも
北極星の周りを離れぬように
ぐるぐる回る星の匂いに似ているからだと
君が私に言ったのを覚えているの
朧の雲の切れ間からのぞく
月に向かって星が吠える
夜が静かだなんて嘘
本当は何よりも饒舌で
何よりも正直で
一番嘘つき




