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堆積
夜が積もって
毛布に絡まり
毛玉になって
卵になって
乾いたペンキが
ペリペリ落ちて
鱗になって
魚になって
卵はカラザを手繰り寄せ
魚はエラで塵を吸う
カーテンの向こうの
街灯のあかりが
隙間風を運んでくる
背ビレが欠けた魚の皮膚に
卵の黄身が頬を寄せ
痛くはないかと膜を吐く
闇に眼が慣れ魚は跳ねる
卵の代わりに空を泳ぎ
どこへ行こうと殻を叩く
どこにも行けぬと卵が言えば
魚は殻を突っついて
連れて行こうとヒビを入れる
割れた卵は
ネトリと広がり
魚の口に飛び込んだ
魚の胃の腑で
ゴロリと寝そべり
日毎積もる夜を見る