SOUL BREAKER
この作品は「人形達の哀れな微笑み」の前の話です。最初に前作を読んで頂くと、これはこういうことだったのかと分かります。
細波相馬は考えていた。呪いなんてこの世に呪いなんてあるのだろうか。手には愛らしい人形を持っている。噂ではなんでも願いをかなえてくれる幸福の人形とされている。ところがこれには別の噂もあり願いをかけて叶ったら呪われてしまうという。
最近は奇妙な人の死をよく耳にするがどうやらそれが原因しているらしいが相馬にはどうでもよかった。今、彼にはやらなければならないこと、起こさなければならない奇跡があった。運命を曲げてまでやらなければならないこと、それはある人物にかけられた呪いを解くことだった。そう、その人物も奇跡の人形の力を使ってしまったのだ。
彼女の名前は香住涼子といって、シンガーを夢見て世田谷の安アパートに2年前にやってきたのだった。彼女は神田のある裏通りにある古ぼけた骨董品屋で偶然その人形を手にした。それも運命の悪戯であったのか彼女の胸に邪な感覚を抱かせてしまったらしく実力ではなく呪いの力で夢を叶えようとしたのだ。魂と引き換えにボーカリストという大きすぎる夢の欠片を握り締めてしまった。
涼子の成功とともに彼女には力強い味方が増えていった。テレビにも出るようになり彼女を知らぬ者など若者の間ではいないとまで言われるくらい認識されるようになっていった。
相馬が彼女を知ったのも画面の中で歌う彼女の姿を目にしたからだ。相馬と涼子にはそのため接点はない。では、なぜ、命をかけてまで涼子を助けようと思ったのか。
彼女に幼いときに死んだ相馬の姉の姿をダブらせたいたのだ。唯一理解していてくれたたった一人の彼の味方。その存在の消滅は相馬にとってとてつもなく辛苦なるものでその時から彼の中の何かが変わった。全てから自分の心を閉ざし自分の心を凍結させてしまったのだ。その心の中に染み込んできたのは涼子のディープな内容の歌詞を漂わせた高い歌声であった。
確かに似ているだけならそんなに思い入れはなかっただろう。彼がのめりこんだ理由はその彼の心を反映させたと思わせるような・・・姉のくれた数々の暖かい言葉たちのような・・・涼子の書く、そして歌う歌詞にあった。
(彼女は姉さんの生まれ変わりだ)
相馬がそう感じたのもそう時間はかからなかった。その相馬が涼子の人形の話をある雑誌で読んだ時の悲哀の感情を今でも忘れてはいない。まず、人形の情報を知るために相馬はインターネットのドアを開いた。
・・・そこから全てが始まった。
相馬は浪人生になって3ヶ月が過ぎていた。全てから開放されてふわふわと遊び歩いていた。予備校で知り合った仲間たちと遊びまわり10人ぐらいでファーストフード店に3,4時間もたむろって中身のない話で時間を費やしたこともざらである。
そんな風に予備校には通うもののその他の時間を遊びに費やし勉強なんて言葉の欠片さえ頭になかった相馬は神田の古本屋街を何気なく歩いていた。本屋が好きで1つの店に1時間半もいたことでさえ珍しくもない。ある古本屋でいろいろな空想の世界への入り口を物色していると汚い古ぼけた高価な外国の本に目が行った。皮のカバーに英語でSOUL BREAKとつづられている。「魂の破壊」というあまり気味のいいもの出ない題名が逆に相馬の興味を無性に駆り立てた。心への刺激、恐怖や感動は彼の最も好むものである。手にとってゆっくりと表紙を開いてみると古い紙とインク、そして埃のにおいが妙に鼻についた。
その文章に視線をざっと走らせるとさまざまなことが分かってきた。文語態で硬い文章である。これはどうやらイギリスのものであるようだ。記述では1874年に書かれたものであるようだ。ふと、モーリス・ルブランの描いたアルセーヌ・リュパンの誕生日を思い出す。あの時期のものかと一人でうなづきつつも全てを読み取れない異国の文章に心を奪われていると妙な紙切れが378ページ目に張り付いていた。
糊のようなもので貼られていたが軽く摘むとあっさりととれてしまった。日本語の手紙のようなものであるが黄ばんだ藁半紙で万年質のようなもので走り書きされていた。
内容は次のようなものである。
「・・・この本の呪いはすでに放たれた。精神の崩壊、混乱は着実に人々に蔓延している。これは私の手におえるものでない。精神力の強靭なものに求む。奴らの力に打ち勝つ者よ。一刻も早く奴らを全て燃やしてしまえ。欠片さえ残すな。奴らは魂の破壊者、ソウルブレイカーだ。」
その端にどす黒い(血痕のような)紙に書かれた言葉たちが何を言っているのか分からず、ただ、その紙切れを小さく折りたたみなぜかジーパンのコインポケットに入れた。
本を見ているうちに挿絵にあることを気づく。人形たちのデッサンがありとあらゆるところに描かれており作り方さえある。しかし、気になるのは文章、人形の挿絵のそのどれでもなく何かの儀式のようなものの説明図である。
『これはまるで黒魔術のようだ』
悪しき者の禍禍しき能力を利用する過ちの術。下手すれば自らの命でさえ失うという認められざる魔法。相馬にはこれはあの呪いの人形に関係しているのだと気づかないはずはなかった。
3400円という高価なお金を払って店を出ると近くの公園へ行き砂場の中で火をつけた。燃え盛る炎を見ながらこれから起こる悪夢に身を震わせた。黄色い揺らめきは風になびきなんとも言えぬ感情を湧き上がらせた。その立ち上る煙に怒りと恨みの負の感情を感じずにいられなかった。人が来ないうちに燃え尽きたのを確認してその場を離れ、次に涼子の行ったという骨董品屋を探すことにした。
スキーショップと本屋の中を歩き回って裏通りをさらに進むとやがて小さな小屋が見えてきた。定食屋と食器屋に挟まれた古い木造2階建て建築には看板はなく一見して店には見えない。しかも、休みかどうかも判断できない。普通の人なら見過ごすところだが、相馬には感じるものがあった。それは彼の運命が導いたのか、あるいはポケットの紙切れに宿る記述者の執念がそうさせたのかもしれない。
ガラスの引き違い戸に手を伸ばす。がらがらと音をさせて開くと恐る恐る中に足を踏み入れた。中には骨董品が乱雑に並べてあり、奥まで続いている。店主は見えず中に並ぶものを見ていった。
アンティークのヨーロッパの家具たち、小物、農耕具にいたるまでさまざまなものが置かれている。その中に1体のフランス人形がガラスの瞳で相馬のことを見つめているのに気づいた。その不気味な表情は見るもの全ての心を畏怖とともに凍らせてしまうように思えた。それに手を触れようとした瞬間、相馬の手に静電気に似た刺激が指に走り思わず手を引っ込めまじまじと睨み付けた。
「その人形が気に入ったかね」
知らないうちに白い口ひげを蓄えた老人が背後に立っていた。
「その人形は人気があってね。なんて言ったかな。今人気のある歌手の女の子が買ってからだね。いろんな人が買っていって今はそれ1体だけだよ」
再び相馬は人形を手に取り高く掲げた。その訝しげな表情は明らかに相馬を嫌っているように見える。
「怖そうだが妙な魅力があってね。人をひきつけるんだよ」
店主はその人形を慈しむように相馬の手からとり微笑みかけた。
「これはラック・ドールといってイギリスのウェールズの片田舎で作られたものでサー・アラン・シュツワートという人が宮廷人形師に特別に作らせたもので幸せを人にもたらすそうだ。全部で20体近くあって全て違う種類の人形だそうだ。フランス人形は2種類あったそうだけど1体、つまりこの子しか見てないから本当かどうか分からないがね」
まるで偽りの魂があるかのようなその人形は老人にしがみついているように相馬には見えた。そして敵対するような目で相変わらず彼を見ている。さらに、老人の話は続く。
「この子達には魔法があるのさ。時に大きな力を持つものがいて彼女のように歌手にしてくれるものもいるんだ。この子はその中でとびっきり力があるといわれているから手に入れて願いをかけるといい」
「あなたは願いをかけないんですか」
「私はもういいんだ。この年になると何もほしくなくてね。ただ、あの世の家内の所に行くのゆっくり待っているだけさ」
そのにごった目に一瞬憂いが映ってすぐに消えた。なおも彼は口を開いた。
「今、シュツワート氏の子孫が日本で暮らしているらしい。東北のどこだったかな。年をとると物忘れが激しくてね。彼も人形を作るらしいけど、不思議な力を持っているかは定かじゃないな。おっと、おしゃべりが過ぎたようだね。年寄りのおしゃべりに付き合ってくれてありがとう。無理やりつき合わせたのかな。まぁ、その礼にその子をあげよう。何か話し相手がいなくて寂しいんだ。またいつでも来てください」
「一ついいですか?」
相馬は紙袋に入れられた人形を手渡されながらたずねた。
「この人形をどこで仕入れてどこでその話を聞いたんですか?」
老人は思い出そうと天井を見つめ、やがて、手を打って大声を発した。
「そうだ!シュツワート氏の友人という上田さんからだよ。彼はシュツワート氏から直接いただいたそうだけど本当かどうか」
「じゃあその上田さんと話がしたいんですが。そのシュツワートさんって人のことに興味が沸いたんです」
老人はさもそうだろうといわんばかりに何度も大きくうなづいて奥に引っ込んでいった。そしてしばらくすると小さなメモを持ってきた。そこには住所がかかれていた。
「見ず知らずの君にこんなことまでするのはおかしいかもしれないけどこうしないと行けないような気がしてね。上田さんには話をしておいてあげるから」
相馬は念入りに礼を言って何度も頭を下げてその店を出た。
きんもくせいの香りの中、埼玉県の越谷市に来ている。相馬には人形に願をかけるだけでは気が済まなくなっていた。人形の秘密を探ること、それが彼にとって重要なことであるような気がしていた。この住宅街は最近開発されつつある新興住宅街でかつては田畑が広がっていたこの地も次々に住宅が建ち並び始めていた。現に相馬の目の前にもネットに囲まれた木造建築が柱と梁をあらわにしている。上棟直後なのかあまり進んではいない。
―――こんな所に大きな洋館なんてあるのだろうか。骨董品屋の店主がくれたメモにはそう書いてあるが・・・。
まだ開発されていない田んぼの方へ行き溜息をついた。どこをどう見てもそんなものはそびえていなかった。諦めてできたばかりの16メートルはある幅の舗装道路を伝って駅の方へ向かった。洋館、・・・あの老人は何かと勘違いをしたはず。すると・・・。
周りを見回してそれらしきものを探すが、あるのは巨大な公共施設のみ。どうやら生涯学習施設らしいがさまざまな施設がそろった複合施設でできたのもそう古くはないようだ。
―――これか?
相馬はゆっくり中に入り途方にくれているといかにも紳士といった感じの厳かな雰囲気の男性が歩み寄ってきた。
「お困りのようだけど、ご用件はなんですか?」
相馬は上田という人物に会いに来た旨を一通り話した。すると、すぐに彼は笑顔を見せてやさしく口を開いた。
「それなら上田教授のことだね。今ここの2階の研修室で講義をしているよ。小説の書き方って講義で最近流行ってるらしいんだよ。主婦がほとんどっておっしゃっていたかな」
相馬は簡単に礼を言うと表階段を駆け上がっていった。この建物は鉄筋コンクリートのガラス張りの建築でロビーは吹き抜けの大空間であった。その真中に大きなアールの階段が伸びている。その先には部屋が並んでいてドア先には電工掲示板が供えつけられている。その中に『上田教授の執筆講座』というものを探し出した。まだ、講義が続いているらしく仕方なく2階ロビーの待合所のソファに腰を下ろした。
汚い緑のバックパックから大きな包みを取り出して人形の顔を覗かせた。その瞳はやはり反抗的な光を見せ、思わず首をすくめた。そのまま涼子の呪いの解除を願って目を静かに閉じるが願いが叶うような気配は微塵にも感じることさえできなかった。
「どうしたの?」
突然声をかけられて咄嗟に人形を隠すようにしまって目を上げた。そこにはやけに厚すぎるレンズの眼鏡をかけた女性が立っていた。歳は20代中盤といった所だろうか。相馬はふと、ここは見ず知らずの人に良く声をかけてくれる所だと思った。それは人形のせいかもしれないということが脳裏によぎった。
顔を上げて笑顔を見せながらどう言えばいいのか思案に暮れていると彼女は静かに隣に座りわざとらしく大きな溜息をついて見せた。そして次の瞬間思いもかけない言葉が飛び出した。
「その人形、危険だよ。人を不幸にするだけでなく運命を曲げてしまうの。気をつけて。あなたにとってその子は災いしかもたらさない。早く手放した方がいいよ。詳しいことを聞きたかったらここに来てね」
と、名刺みたいなカードを無理やり相馬の手の中に押し込み去っていった。彼女から伝わる不思議な力のようなものに相馬は身震いさせた。カードには渋谷の占いの館という記述が見て取れた。占い師、今の女性が相馬の人形から感じた悪しき力に引き寄せられたのかもしれない。その去っていく後姿を目で追いながら相馬は思考を巡らせた。
この人形は本当に呪いの人形かもしれない。自分はそれを断つ使命を持ってしまった様だ。全ての秘密はシュツワート氏が握っているに違いない。彼に会わなければならないのだ。彼が受け継ぎ持っていたという人形。アンティーク、それも呪いのあるもの。彼自身も人形を作り今は日本にすんでいる。そして、呪いの人形の作り方の古い本が、そしてそれに挟まれた謎の文字が書かれた紙切れが古本屋にあった。
これらの事実が意味しているものは果たしてなんであるのだろうか。とにかく、上田教授にシュツワート氏の居場所を聞かねば何も始まらない。
はっと我に返ってある音に耳を澄ませた。遠くからサイレンが近づいてくる音と人々のざわめきが相馬の心に鋭いものを突きたてた。まさか・・・。
窓の外を覗くと駅の方から目のさめるような紅い光を回転させてすばやい速さでこちらに向かってくる救急車が目に入った。そして、やがて視界から消えてサイレンが止まり担架が持ち込まれてきた。そして、上田教授の講義のある部屋に運ばれていき一人の男性がそのまま運ばれていった。遠ざかるサイレンの音と騒ぐ主婦たちの姿を目にしながら上田氏が教壇で倒れたことは確かめずにも相馬には明らかであった。
彼が人形を持ちそれに願いをかけていたかどうかは誰にも分からないし、その呪いのせいかも知る術はない。ただ、人形が原因しているのではないかと薄々感づいているのは相馬だけなのか定かではない。
「もう、先生は息してなかったのよ。だめよ」
「突然、倒れられた時はもう心臓が止まるかと思って声さえ出なかったわ」
そんな声が通路から響いてきたが相馬には何一つ無意味であった。これで手がかりがなくなったことだけは確かである。ゆっくり立ちあがって歩き出しながらポケットに手を差し込んだ。そして手に当たったものを摘み出して視線を落とししばらく立ち止まった。彼の手の中には占いの館の案内カードであった。
パソコンの画面に目をやりながら検索して占いの情報を引き出した。このノートパソコンは最近買ったものでインターネットも初めてである。マックばかり使っていたのでウィンドウズを使いこなせてはいない。だけどそれでもインターネットは何とかやっていくことはできそうだと相馬は思っている。
検索後直ぐに出てきた。渋谷のとある通りにある占いの館の情報は容易に見つけることができた。どうやら驚愕の命中率であるらしく密かに有名であるらしい。店の前に行列ができるとも書かれている。名前を「葵」というらしくその素性を知るものはいないらしい。その紹介文の中には客を選ぶこともあると書いてあり、相当変わっているようだ。
どうやら、相馬に会った時の眼鏡は変装であったようだ。写真の中の彼女は大きな帽子をかぶっているものの眼鏡はかけていない。ドレスといい妙な格好をしているが単なるパフォーマンスであるのかもしれない。彼女は信憑性はあるようだ。まぁ、手がかりのなくなった今、『葵』に会いに行っても損はないだろうしそれしか道はないのだ。
いろいろ考えているより行動が先決である。もう、涼子の命のタイムリミットは残り僅かなのだ。彼女がデビューしたのが11ヶ月前で1年が呪いの発動のリミットだ。正確には1ヶ月もなく相馬の思っている以上に時間はないのかもしれない。呪い自体時間に正確というわけではない。いつ彼女が災いに飲まれてもおかしくないのだ。
「これがあなたの運命です」
渋谷にあるその葵の店は建物の地下にあり薄暗く何もない部屋であった。相馬が来た時には外で待っていて、まるで彼が来ることを知っていたかのように中に導いていった。外の行列が微妙な表情をして見ている中を二人は中に入っていった。
そして、怪しいカードを並べて見せたのだ。ただ、そのカードはタロットでもトランプでもなく奇妙な見たこともない文字が書かれている。その一つに軽く指を置いて葵は静かにささやいた。
「このカードは魂のカードです」
そして、左隣のカードに指を滑らして、
「これは崩壊、カタストロフィーのカードです。そして、魂のカードに大きな影響を与えているという意味を持っています。気をつけてください。彼は着実に力を放ちつつあります。ソウルブレイカーは廃ビルの中に巣食っていて力を放っています。まずは、シュツワートさんに会ってください。彼は今、ここの3階の喫茶店に来ています」
すかさず逃げるわけでもないシュツワート氏の元へ駆け足で向かった。その喫茶店はカップルが多く直ぐに足を踏み入れることができなかった。でも、奥のボックス席に座る青い目の老人を見るや否やものすごい勢いで歩いていった。
おしゃれなインテリアがところかまわず溢れるその店内は相馬と老人には似つかわしくない雰囲気を漂わせていた。老人の向かいに遠慮なく座ると相馬は真剣な眼差しで老人に話し掛けた。
「シュツワートさんですね。呪い・・・いや、願いの叶う人形についてお話が聞きたいのですが」
シュツワート氏はゆっくりと目の前のカプチーノをすすって優しい、しかし、生気のない視線を上げた。
「あれは長年かけて私が作り上げたものさ。お譲りした人にはアンティークといった方がいいと判断したのでそのような作り話をしたのだけど」
「で、彼ら、・・・人形達はどうやって作ったのですか?」
シュツワート氏は静寂の中にいるように溜息をついてゆったりとした様子でテーブルの上に指をつき合わせた。
「私の家に伝わる本に書かれていた方法さ。もう詳しいことはとっくに忘れてしまったがね。最近は書庫の中で埃に埋もれているがね」
相馬は思考を巡らせた。ソウルブレイカーはここにはもう残っていない。しかし、呪いについては少しは情報が手に入りそうだ。その本についてもう少し突っ込んで質問を投げかけた。シュツワート氏は視線を巨大なフランス窓に向けて、少しためらいがちに重い口を開いた。
「あの本は、もともとは私の曾祖母の実家の倉庫にあったのを見つけてずっと持って後世に伝えつづけたんだ。祖父が1回だけその内容の異様さゆえにある占い師に見てもらったことがあるのだが、その人によれば悪魔の卵である。ソウルブレイカーと呼ばれるその悪魔は主(餌食)を1人見つけ魔法を見せる。そして、幻の幸福を、偽りの安らぎを与えカタストロフィーを与えて魂を抜き取る。と言うことを聞いたらしいがそんなことは迷信だろう」
ソウルブレイカーは一人の犠牲者に宿る。きっと、この老人にもいるに違いない。そう、自分が蘇らせた悪魔に憑かれてしまったのだ。皮肉にも彼は知らないうちに彼らに操られていたのだ。もしかしたら、彼らを蘇らせたこと自体彼らの力に操られていたのかもしれない。
きっとその創造主であるシュツワート氏に憑く人形がソウルブレイカーの本体なのかもしれない。葵は確かソウルブレイカーのことを1人称で読んでいた。ソウルブレイカーは1体で幸福の人形たちは彼の(彼女の)操り人形だろう。きっとそいつさえ消えればこの呪いは解けるだろう。願いも同時に消えるだろうけど・・・。自分にかかった呪いも解けるだろうか。
相馬は礼を言って店を後にした。葵が言っていた彼らの隠れ家を探す必要がある。そこにいるソウルブレイカーをこの世から葬り去る必要がある。しかし、どこにいるのかは知ることさえできないし知る術もない。次に何をしたらいいのか分からずとりあえず自分の部屋に戻った相馬は再びパソコンを立ち上げた。
いろいろなホームページをぼやっと眺めながらうろうろしていたら妙なチャットを見つけることができた。
ASHU:こんばんは。昨日ついに噂の人形を見つけたんだ。
FEER:でも、涼子ちゃんが買ったって噂、でまなんだって。
ASHU:まじで?!せっかくおそろって思ったのに!!
FEER:でも、願いが叶うからいいじゃん。私も実はとうとう手に入れたんだ。
ASHU:FEERとおそろってことで我慢するか。
FEER:なんだよ。ひどいなぁ。
そこで相馬はすかさずチャットに参加した。
DOLL:ほんとに彼女は買ってないの?
ASHU:はじめまして。そうだよ。本人に聞いたんだよ。
DOLL:実は僕も昨日手に入れたんだ。でも、呪いがかかるんだ。
FEER:嘘ばっかり。怖がらそうとして。
DOLL:本当だ。で、呪いを解く方法はただ1つ。彼らの本体を葬るしかない。
ASHU:もし、それがほんとなら、私達はどうしたらいいの?
DOLL:まず、ソウルブレイカーの居場所を探すことさ。廃ビルにいるって事だけはわかってるんだ。
結局、相馬は自分が呪われていないことに気づいただけだった。手がかりは何一つない。涼子が人形を買っていないということは相馬は願いをかけたことにならないのだ。
―――しかし、自分以外ソウルブレイカーを倒せるものはいない。
パソコンの電源を落とすと部屋の隅に無造作に置かれた人形を睨んだ。彼女は何かを言いたげに寂寥の瞳で見つめ返している。最初の反抗的な眼光は微塵もないことに戸惑いを隠し切れなかった。
「彼に呪いをかけられた人達を助けてくれないか・・・。」
蚊の鳴くような声で静かに人形にささやいた。そんな相馬に悲しげに彼女は微笑みかけていた。
あれから1年になりかけているだろうか。香住涼子は親友の福山繭子が最近元気がないのに気になっていた。雑誌の写真撮影の後にやっと彼女と会う約束を取り付けたのだ。
ここの所仕事が忙しくてまともに彼女と話すことさえままならない日々が過ぎていたのでかなり心配が募ってきた。おとといのレコーディングでは何回やりなおしたか覚えていない。
渋谷のカフェで誰も知らないおしゃれな所があった。そこには、まだ、繭子の姿はなく数人の女性が静かに話をしているだけである。外にはオープンカフェがあり、寒さをこらえてコーヒーを飲む恋人達がいた。
涼子は変装をしているとはいえ、やはり、周りの目が気になっていてボックス席の奥に陣取り遅すぎる繭子を目で探した。窓の外は忙しない人々が行き交い沢山いるはずの人々は互いに干渉することなく流れていく。
「あ、涼子さんでしょ。サインして。」
ぼうっとしていたので直ぐに我に返りファンに見つかったと観念して顔を上げた。そこにはまだあどけない笑顔の繭子が手を後ろに組んで立っていた。
しばらくは積もる話をしていたが繭子は次第に表情を暗くしていった。そのことに顕著に気づき涼子は優しくそのことについて尋ねた。繭子は今までのことをゆっくり語り始めた。
「1年近く前にある人がチャットに入ってきたんだ。ハンドルネームはDOLLで噂の幸せの人形が実は呪いの人形だってことを教えてくれたんだ」
「ふーん。私も前に買ったことあるんだ。神田でかわいい人形を買って、でも願いをかけなかった。やっぱり、夢って自分の力で掴まなきゃね。例え迷信でも神頼みでも何かにすがったり頼ったりって嫌だったんだ」
「涼子は強いね。私はだめ。すがっちゃった。で、その人形は?」
「あ、友達にあげちゃった。だから、もし呪いの人形ならって気になっちゃって。友達って一美なんだけどね」
オーダーしたハーブティーをすすりながら繭子は溜息をついた。
「それで、そのドールっていうのが細波相馬って人で彼も人形を持ってた。あ、涼子の大ファンみたいだよ。何でも、閉ざした心を開いた唯一の人物なんだって。ラジオを聞いてファンになったんだって。外見じゃなくて心の中がいいんだって。共感できるとか。変な人だよ」
「どう言う意味よ」
涼子は軽く繭子の手をたたいた。繭子は軽く舌を出し、
「じょーだんだよ。まぁ、話を聞いてよ。で、相馬君がいうにはソウルブレイカーっていう人形の親玉がいてそいつを倒すと呪いが解けるんだって」
「ソウルブレイカーか・・・」
「私さ・・・。死ぬんだったらアトムみたいにって思ってたんだ。皆のためにって、でも、誰にも知られないでひっそりと」
「何言ってるのよ。死ぬって決まってないでしょ。その呪いの話だって嘘っぽいし。心配要らないよ。私も繭と呪いについて調べてあげるから」
日が傾き始めて5時だというのに暗くなり始めていた。さらにカップルが増えて、涼子は無意識に帽子のつばを深く下げた。繭子は悲哀を込めて呟くように話を始めた。
「今まで、信頼できる数少ない人にしか話したことないんだけどさ。前に私、死のうと思ったことあるんだ。涼子にとっては大した事のない理由かもしれないけどさ。でも、何故か死ねなかった。臆病なのか痛く、苦しいのが嫌なのか、そこまで追い詰められてなかったのか、やり残したことがあるのか、とにかくね。辛い時期があったの。その後、「死ねなくて良かったじゃん」とか「生きてればいいこともあるさ」とか「死ぬことは逃げること」とか「自殺なんていけないこと」なんて言われたけど私には何一つ意味をなさなかった。皆根拠のないことだし」
「何気落ちしてるの。例え過去に何があっても今が幸せなら良いじゃない。私だってついてるし、繭のこと、親友だって思ってる」
すると、繭子は軽く笑って見せた。コーヒーカップを弄ぶ両手を止めて悪戯っ子のような瞳でニッと口元をほころばせると両頬にえくぼができた。
「臭い台詞。大丈夫、ただで死を待つほど私、往生際よくないし。・・でも、これからどうしたら良いのか」
「とにかくその相馬君に会いに行こう。どうせ明日までオフだし」
繭子は大きすぎるグッチのバッグを掴むと伝票をさっと摘み取った。
「ここは奢らせてくれるよね」
その微笑の中に涼子は切なさを感じ取っていた。
もう午後9時過ぎだろうか。相馬と会う約束をした繭子は少し緊張していた。チャットを始めてから見ず知らずのチャット仲間に会うのは彼が始めてでまだ会うのは3回目であった。涼子はいつものように20分は遅刻してくるだろうしショルダーバッグの紐を強く握り締めた。
彼はラフで寒いのではないかと思える格好で背を曲げて歩いてくる。いつ見てもぱっとしない姿だが、信用はできるので安心はしている。チャットはあの時以来頻繁に交わしていたのでいろいろなことが分かっている。彼が本当のことを話していたとしたら、ではあるが。
ふと繭子は呪いについて考えた。自分は儚い願いのために自らを死へと至らしめてしまうのか。自殺、ということにはならないにしてもであるが。
―――そういえば、あの時の何回か首に回したビニール製のロープはまだ捨てられずに洋服掛けの隅にかかっているっけ。もともと、空気で膨らますビニール製のソファについていた紐で本体が破れて捨てられても何かに使えるとロープだけはとっておいたんだよなぁ。
呪いなんかで死ぬのは絶対に嫌だ。と、繭子はこぶしを握り締めて近づいてくる相馬を眺めた。
「やぁ、ひさしぶり」
相馬の声はその時何故か心強いものを感じられた。繭子はどんな言葉を発して良いのか戸惑い沈黙を続けた。
「早いね、まだ30分はあるでしょ。彼女もまだ来てないみたいだし」
意を決したように力強い眼差しを向けながら繭子はやっと言葉を発した。
「ソウルブレイカーの居場所はわかったの?」
「ああ、見当はついてるけどまだ確信はないんだ。人形が存在する噂の出どこは東北地方のシュツワート氏の屋敷からなんだ。そいつがそこから遠くに行くはずはない。あいつの力の源は恐らく宿り主であるシュツワート氏なんだと思うしね」
「その屋敷の近くの廃ビルにいるの?」
「そのビルを確かめに行くんだ。これからね。この1年弱の間に何もしてなかったわけじゃないよ。人形の噂をインターネットを中心に集めつづけたんだ。で、やっと、彼の屋敷を中心に広がっていることを知ったんだ。考えてみたら当然なのかもしれないが、確信を持てなくてね」
小刻みに震えながら繭子は小さな声で訊いた。
「それで、あったのね。廃ビルが」
相馬は大きくうなづき少々声を大きくした。
「それも、幽霊の出るっていう噂の流れる廃校がね。最近廃校になったばかりの小学校らしいね。少子化の足跡って所かな」
「その噂はソウルブレイカーのせいなのね。なぜあいつは願いを聞いてその代わり呪いで人を殺すのかな」
「それは僕にもわからない。ただ、言えることはあいつは最悪なことをしている悪魔なんだ。存在してはいけない、ね」
相馬がふと遠くに視線を放ったので繭子も振り返りそちらを見た。そこには息を切らせた涼子が立っていた。
「じゃ、出発するか」
何回電車を乗り換えただろうか、目の前には白銀の世界が広がっていて列車内に暖房が激しく作動していた。どのくらい眠っていたのか涼子は目を擦りボックス席の向かい側を見た。相馬と繭子が仲良く眠っていて思わず軽く噴出してしまった。繭子は相馬の肩を枕にしてまるでずっと前からの知り合い、あるいは恋人同士のように安らかに眠っている。相当不安な日々を過ごしていたのだろうと可哀想に思えた。
「絶対助けてあげるからね。」
涼子のそのささやかな呟きが繭子に届いたかのように彼女は唸って窓の方に首を動かした。そして、強く頭をぶつけて頭をさすりながらゆっくり目を覚ました。こらえきれず涼子が笑うとその声で次に相馬が目覚めた。朝早く出発したので全員睡魔と戦うのに精一杯であった。
駅に降り立つと建物がほとんど見つけられない土地に感心しながら駅前のバス停に向かった。雪帽子をかぶった山に囲まれ口から吐かれる白い塊はふわふわと空に広がって溶けていく。寒さが肌を鋭く刺した。バス停の時刻表を見て1時間は来ないのが分かって落胆していると涼子は突然道の真中に飛び出した。
「ヒッチハイクしよう」
その言葉は2人に暖かな気持ちを起こさせた。
20分ぐらい過ぎた時にやっと1台の軽自動車が通りかかりスリップ気味に路肩に止まった。近づいて中を覗くとそこにはシュツワート氏がハンドルを握っていた。
「そうか、あの廃校にな」
3人を乗せたシュツワート氏は山道を危なげに走りながら山頂当たりの捨てられた学校へと車を向けていた。
「あそこには確かに幽霊の噂はある。それでも行くのかい」
「まぁ、それしか今の僕達にはなくて」
車はやけに揺れながら山道にタイヤの跡を走らせていく。そして、子供達の郷愁の故郷に着くとタイヤを軋ませて止まった。ドアを開けると冷たい風とともに嫌悪に近い気持ちを誘う奇異なる空気が冷たいコンクリートの校舎から漂ってきた。
シュツワート氏は外で待つことにして3人だけで中に入ることにした。必死に止める相馬の言葉に涼子たちは聞く耳を持たずここまで来たからといって譲らなかったのだ。結局、負けて2人とともに薄暗い校舎の中を進む。
「変よね。こんな山奥の小さな校舎が鉄筋コンクリートでできてるなんて」
「ここは学校としてだけ使用されてたわけじゃないんだ。いわゆる複合施設でこの村の主要な施設も入ってたんだ。でも、この山が再開発されることになって閉められたって訳さ」
さらに進んでいき階段をさらに進む。すると笑い声が聞こえてきた。その声は男性のものとも女性のものともつかなく、ただ、畏怖だけを相馬たちに運んできた。
「ソウルブレイカー、出て来い」
相馬の声とともにさっと目の前に影がすり抜けてある部屋へと入っていった。その後に続き扉の倒れたその部屋に入った。そこは理科室で標本や人体模型が彼らを威嚇している。
「お前たちの時は尽きた。5分以内に我が呪いは完結する」
「その前に倒してやる!」
相馬は恐怖を超えて走り出す。人体模型を蹴り飛ばすとその後ろから操り人形が姿を現せた。操るための紐を引きずるもののその目には鋭いものがあった。
その姿は醜く気持ち悪いクラウンであるがそのほとんどが焼け爛れて腐食していた。口からは透明な粘液を垂らし、心の底を揺さぶる声で相馬を一喝した。
「黙れ、貴様にかなうはずはない。運命を変えることも我々に勝てるはずもないのだ。混沌が法と合間見えぬが密接に関係しているがごとくな」
相馬が近くにあった木の椅子を掴むと掲げた。しかし、体が見えない力にたたかれて弾き飛ばされてコンクリートの壁に強く背中を打ち付けた。息が止まりむせながらも再び立ちあがり今度はアルコールランプを掴み床に落ちていたマッチで火をつけた。しかし、ソウルブレイカーは優越的な笑顔を崩さず腕を組んでいる。
「燃えて失せろ!」
アルコールランプは小さなクラウンの足元で砕けて燃え広がった。涼子は体を硬直させていたが直ぐに繭子の手をとり窓から外に出た。学校の背後は山の斜面であり3メートルくらいで下に雪のクッションを引いていた。
その後を相馬が追って外に飛び出す。ずぼっと雪に嵌った3人はコンクリートの壁を見上げた。窓からは火のついたソウルブレイカーが彼らの上に飛び降りてきた。恐怖が極限まで達し全ての終わりを感じずにはいられなかった。
雪まみれの中を必死に這ってようやく校庭に出る。そして雪を払って振り向くと火の消えた崩れかかった姿の人形が笑っていた。首が妙に傾いている。
「あと2分」
その笑いに混じった楽しそうな、当然のような声は相馬たちの心を凍りつかせた。相馬は目で繭子を見た。彼女の命は今尽きかけている。自分はどうなっても良いから彼女をその他の呪われた人々を救わなければと思い、意を決すると相馬はソウルブレイカーに走って行った。
「だめー!」
涼子の声が相馬の覚悟に気づいたかのように叫んだ。相馬の手には理科室から隠し持ってきたエタノールの缶にマッチで火をつけて飛び込んだ。
相馬は痛む全身を起き上げて目の前の光景を見た。愕然として全ての力が抜けて醜い人形に憎しみの眼差しを向けた。彼の目の前には力尽きて倒れた繭子とそれを抱えて号泣する涼子の姿が会った。
「どうして僕だけが生き残ったんだ。呪いは効かなかったのか?」
彼はゆっくりと頭を振る。その瞳には優越感も嘲笑もなくただ哀れみだけが溢れ出していた。操るための紐はすでに切れていて右足も3分の1は失われていた。
「人間よ。最も哀れなる存在よ。我々は消えない。人間がいる限り。揺るぎ無いものがあるならば、我々である。お前達に永遠はない。不条理な存在よ。矛盾とともに生き混沌とともに流れていく。呪いの力で呪いは消えない。おろかな存在よ。願いが叶うことは呪いがかかるその手向けである。所詮ひなびた徒花よ。我々の目的は人間を幻夢へと導き無へと帰すこと。その副産物で呪いを消せるはずはなかろう」
魂の破壊者は溜息をついて木製の瞼を閉じた。
「呪いは人間の思いの逆に働く。生を願えば死を、死を願えば生を与える。お前は死を願ったのだ。呪いには様々なものがある。病気、怪我、不運、その中で一番強いものが死の呪いである。我々の呪いは憎しみかもしれないし哀れみかもしれない。混沌なる存在を法の世界に帰すのは我々確定されたもののさだめである」
ソウルブレイカーはそれだけ言い残すと朽ちていった。全てが最悪の結果で終わっていったのだった。
星空が天に溢れている。雲の天井がないとこんなにすごいものなのかと相馬はひざを抱えて呟いた。
―――あれは宇宙だ。空にぽっかり穴が開いて心が吸い込まれるような宇宙が、星屑が広がっている。人は心が迷った時は逃げることと外に攻撃すること、そして、自らを攻撃することのどれかを選ぶ。僕らは存在という道を迷いソウルブレイカーという自らを攻撃する要素を生み出してしまったのではないか。
相馬にはもう何もする気力はなかった。校庭でじっと空を眺めている。まるで、凍え死ぬの待つかのように、自らを戒めるかのようにただ横になっていた。
人形の呪いで何人の人が命を落としたのだろうか。どれだけの人が偽りの願いを叶えたのだろうか。全ては泡沫の幻なのかもしれない。ただ、人形たちは本体を失った今、眠りについているが目覚めを待っているのかもしれない。全ての人形が命を持っているのかもしれない。新たなソウルブレイカーが現れるその日が来るのかもしれない。
「我々はけして消えはしない」
完
これを書いたのが前作と同様の約20年前の大学時代で、本屋のモデルは浪人時代に通った神田の古本屋です。チャットのくだりは時代遅れですね。
丁度、この頃が自分の生きている時代の少し前という設定だったので、現在の彼らの孫やひ孫等が活躍する現在のシリーズの時代が未来になってしまっているのです。