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エピローグ

「もう出発してしまうのですか?」

 ミルクタウンから聖都アームステルへと向かうゲートで俺達を見送るヌザンクが言った。

「寒さが日増しに厳しくなってきているので……」

 ブラドーのマフラーをした秋留が答えた。

 あれから三日。

 俺達は十分な治療と休養をとり、妖精達からの感謝の品を受け取ると出発する準備を始めた。

 ちなみに長老からは、感謝の印として新開発した虹色パンを貰った。

 確かに旨いのだが……妖精狩りを倒した礼がそれか?

「気をつけて下さいね」

 少し元気を取り戻したルンが手を振っている。あれからギャスターの後を追って自殺までしようとしていたルンだったが、長老の説得により何とか思いとどまったようだ。

 ルンはカハクという種類の妖精である。

 カハクというのは自殺した者達の魂を受け継いでいる。最期の人格であるメルンの記憶が残っているだけで、その身体はメルンだけのものではないというのだ。

 自殺した者達、全員の悲しみや苦しみを背負っている。その気持ちを浄化させるためにも生きなくてはいけない……らしい。

 それが長老の嘘なのかは分からないが、その話でルンは少し元気を取り戻した。

「ルンも元気でね」

 大切な友達と別れるかのようにクリアが言った。

「クリアも元気で。皆さんも元気で!」

 そして俺達はミルクタウンを出発した。

 街道を進む途中、ギャスターと戦った広場を通り過ぎた。小さな墓に沢山の花々が飾られている。

 俺達は黙って手を合わせた。

「色々あったな」

「そうだね」

 俺と秋留、その他大勢はギャスターの墓が見えなくなるまで見つめていた。


「ここらで休憩にしましょう」

 昼過ぎに適当な広場を見つけたジェットが馬車を止めた。

「秋留、ちょっと良いか?」

 俺は思い切って秋留を誘った。

 もう頭のテッペンから心臓が飛び出しそうだ。

「え? うん……」

 俺達はパーティーから離れた場所へと歩いていった。少し歩くと崖があり、その向こうには広大な樹海が広がっていた。

「凄い景色だね」

「ああ、そうだな……」

 この沈黙も辛いな。

 駄目だ、頭が真っ白になる。

「あ、秋留!」

「あはは……。そんな裏声出してどうしたの?」

 力が入りすぎていたようだ。

 俺は静かに深呼吸をすると秋留に向き直った。太陽の光を浴びて秋留の顔がキラキラと輝いているように見える。

「お、俺……」

「ん? 何?」

 秋留が俯く俺の顔を覗き込んできた。

「何か言いたい事があるの?」

「……お、俺も秋留が危険な目にあったら、命をかけて守る!」

「ふふ、ありがとう」

「? おう……」

 あれ? こんな事を告白するつもりじゃなかったんだけどな。

 言うんだ。

 秋留の事が好きだと告白するんだ!

「私もね」

「え!」

 勢いをつけている時に急に話しかけられて思わずビックリとしてしまった。

「ブレイブや仲間達が危険な目にあったら、命をかけれるよ。皆、大事な仲間、特別な存在だからね」

「……そうだな。俺達はいつまでも仲間、いつまでも一緒だ……」

「うん!」

 俺と秋留は笑顔を交わすと大切な仲間達の待つ広場へと戻っていった。

 そう、今はこれで良いんだ。

 でもいつかきっと、俺は秋留に想いを伝えよう。……そう長くは、この気持ちを抑える事は出来そうもないが。


「ブレイブ! 秋留お姉ちゃんをどこに連れて行ってたの! まさか、変な事してないでしょうね? ねぇ! ねぇ! ねぇ!」

 うう……。

 クリアは特別な存在としては考えたくないな。

 いや、ある意味、特別か。

「お二方、丁度良かったですな、お茶の用意が出来ましたぞ」

 俺達は寒空の下、暖かいお茶を飲みながら、仲良くこれからの冒険の事について話し合った。

 大切な仲間。

 特別な存在。

 俺は自分がいるこの居場所を大事にして行こうと強く心に決めた。

「不思議と幸せそうですな」

「……ああ、俺はこのパーティーが大好きなんだ!」

 ジェットの問いに俺は元気良く答えると大きく伸びをした。


 さぁ、次の目的地に向けて出発だ!

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