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真・恋姫無双【凡将伝】  作者: 一ノ瀬
後日談・閑話
349/350

中央にて

「ね、じろー!あっちいこ、あっち!」


「こら、美羽!走らないの!そっちは駄目だってば!」


「わわ、お二人とも、二郎様が置いてきぼりで……あ、そこの露店はアリだと思います」


 きゃいきゃいとはしゃぐ幼女たちの可愛さよ。いや、本来ここ――洛陽の市街――にいてはならない人がいるんですけどね?

 いやあ、美羽様と久しぶりに――散々文で薄情だのなんだの拗ねられてたのである――遊ぼうということになってだ。てっきりこう、宮中の一角で流琉の淹れた美味しいお茶でもどつきまわすのかと思っていたらご覧の有様だよ!

 まあ、市中にお忍びで遊びに行く――市中の視察をするということを教えたのは俺だからあまり藪を突くこともできない。それに、美羽様楽しそうだしな。


「の、二郎よ」


 目をきらきらとさせて両手を差し出す美羽様を抱っこし、えいやとばかりに肩車してやる。


「わ、高い、のじゃ……」


 一気にその視野が広がり、はしゃぐ美羽様を見て不満そうなのがシャオである。


「もう、二郎ってば美羽には甘いんだから!」


 ぷくり、と膨らむ頬をつついてやるとますます膨れる。かまって光線を四方八方に放ってむくれる。むくれる。可愛いね。


「ほいさ、と」


 よいしょとばかりにシャオの軽い身体を抱え上げてやる。ふわり、と蠱惑的な香りが……こいつ、なんか盛ってやがるな。媚薬のたぐいか?ただの香か?七乃ならともかく俺にはよく分からん。

 ちろり、と見る俺の頬にちゅ、と口づけて小悪魔な笑みを漏らす。


「もう、二郎。美羽が大事なのは分かるけどさー。シャオも随分ご無沙汰なんだから……」


 おおエロいエロい。幼女であるはずのシャオから湧き出る色気の不思議さよ。やっぱ媚薬だろあの香り。

 しかしまあ、これでは護衛役がどうしようもないよね。流琉を抱えたら流石に咄嗟の身動きが取れん。

 護衛枠であるはずなのでちょっとこれには困ったなあと思う俺に幼女たちの良心である流琉がくすり、と笑う。


「大丈夫です。私がいますから。二郎様はご安心を。美羽様とシャオの相手をしてあげてください」


 ええ子やなあ……。


 まあ、実際この場で最大戦力は流琉であることは確定的に明らかであり、俺は下手したらシャオにすら不覚をとるかもしれんのだ。いやマジで。

 しかし、お忍びにしてはあちこちと先導する流琉が手馴れてるんだが。


「当たり前だよ?だってしょっちゅう美羽とシャオと流琉はこうやって遊びに出てるもん」


 なんということでしょう。

 聞きたくなかったその言葉。よし忘れよう。忘れた。いやあ、忘却回路がギュンギュン回っているぜ。


「だって流琉がいるし、シャオだっていざとなったら身を挺して美羽を守るよ?それに、ね?」


 ちらり、としたシャオの視線の先には白虎。

 生物として階梯の違う、捕食者の圧倒的な存在はまあこれで守護する対象に対する安全保障なのだろう。つか、これ洛陽で噂になってないか?白虎に守られた幼女たちとか……。

 お忍びという言葉の定義については哲学者さんに任せましょうかね。いるか知らんけど。


「まあ、美羽様がお忍びで出かけてたら七乃が守護してるだろうしな……」


 考えてみればあの七乃が美羽様を危険に晒すわけがないのである。これで多分、警備は重厚にして万全であろう。


「そりゃそですよー」


 ねとり、と俺の首筋を舐め、吸い上げ、がじり、と噛む。噛む?

 その刺激に思わず腰が砕けそうになるが、耐えきった俺を誰か誉めてくれ。


「って七乃?!」


 そんな無体を、こともあろうに市中でしやがるのは七乃その人である。

 にこにこ、といつもの通り読めない、うさんくさい笑顔である。こいつはほんとにもー。


「いやそりゃねえ、美羽様が市中にお忍びで出るとなればね。七乃のこったから抜かりはないと思ってたけどさあ」


「あらあら、お見通しですか?無論張家の精鋭が水も漏らさぬ警戒をしてますよ?

 まあ、典韋さんと孫尚香さんがいれば大体の事態には対応できると思いますけどね」


 きゃらきゃらと笑う七乃の笑みは明るく、澄んでいて。


「まあ、七乃に任せとけば大丈夫ってな」


「あらら?

 そこかーらーのー……張郃君の奮戦とか色々あるんですけどそれは」


「そういうの、いいから。七乃が美羽様の警護に関しては本気だってのは知ってるし」


 むしろ宮中のこととかすべてはそこに帰結するのであろうよ。


「あらら、これは一本取られましたね。でも、それだけではないって知っておいて欲しいな、って思うのは贅沢ですかね?」


 小首を傾げる七乃。あざとい。ちら、とこちらを見る目線が既にあざとい。そこに真情が含まれている、含まれてそうなのが破壊力抜群なんだよな。

 ぐらり、とくるのだが。


「おお、七乃、七乃ではないか」


 俺を踏み台にしてダイブである。


「きゃ、美羽様、危ないですよー」


「七乃ならば受け止めてくれると信じておるしのー」


「勿論じゃないですかー。美羽様を七乃は全身全霊で受け止めますとも!」


 急転直下。

 まあ、そんな感じで置き去りな俺である。

 いや別に悔しくなんかないし。

 美少女と美幼女のコラボとかご褒美だし。


「まあ、あの二人はしょうがないねー。ん?二郎ってば妬いてる?」


「シャオよ、あれはそういう次元じゃないからな。生暖かく見守るのみさね」


 けして、決して負け惜しみではない。俺が言うんだから確かさ。確かなのである。


「じゃあ、今日はシャオと……仕方ないからそこでしょんぼりしてる流琉に構って!

 ひっさしぶりなんだから!ほんと!」


「へいへい。おひぃさまのおっしゃる通りに」


※このあと、滅茶苦茶接待した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大乱が終結した後の平和な日常は何物にも代えがたいですね。 それが美少女と美幼女とのイチャイチャであればなおさらです。 二郎さんも今まで重ねてきた苦労が報われてますね。
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