紅赤朱
「で、なんで翠が華琳のとこにいる?」
問う俺に春蘭はニヤリ、と笑む。
ここは春蘭の居室。プライベートルームだからして周囲の耳目を気にする必要もない。常識的に考えれば荀彧あたりが何かやってそうだけどな。だが、それを春蘭は嫌うだろうし、そうなると秋蘭があれやこれややるだろうて。
まあ、華琳が望めば別だがな!とは言え、華琳はそれをしないだろうという確信がある。だってそんなの、俺を呼びつけて「私に何か言いたいことがあるんじゃなくって?」とか普通に尋問みたいなことをやらかすよ、あいつならな。
「ほう、性急だな。実に二郎らしくないな。それほどまでにあの鳳徳の中身が気になると見える。
ひょっとして懸想でもしていたか?だったら残念だったな、アレは華琳さまのモノだからな。馬家の娘なぞ知らんが、少なくとも鳳徳は華琳さまのモノだ。諦めるんだな」
ニヤニヤと、鳳徳の中の人の正体についての俺の推察……というかカマかけを余裕で受け止める。ぐぬぬ。
「ちげーし。惚れた腫れたとかじゃねーし。そんなんじゃねーし」
「ほお?」
ため息、一つ。
そういう、駆け引きとかじゃないんだよ。
「馬騰さんには世話になった。んで、託されたものがある。だから、できることならば馬家は再興させたい。だがその馬家の頭は翠じゃあない」
つか、翠じゃまずいってばよ。
「漢朝に弓引く愚行、暴挙。馬家の当主がそれをした。その責を負って。
あれで蒲公英は色々と考えて俺のとこにいるのさ。だから、俺もその覚悟に応えてやりたい。
だから」
だから極端に言えば翠が生きているということ自体が色々と厄介な火種になりかねない……というか、なるのだ。
まあ、そこらへんまでは全部華琳は知ってて生かして活かしてくるのだろうから厄介なんだけどな!
「だから、春蘭にぶっちゃけたとこを聞きたい。何で華琳は翠をああしてまで助命した?」
ハイリスクローリターンだ。個人的な武はきっと中華でも五指に入るだろうが、将としては疑問符を三連撃な感じだ。そんなのをどうして華琳は、と思う。
あの、計算高いというか、計り知れない深淵的な華琳がそうするならば、むしろその方向性は叛なのか、と思わざるを得ない。
「ふむ。そうだな……」
どこか困ったような、敢えて言えば苦笑というニュアンスで春蘭はぽり、と頬を掻く。
「華琳様は、アレだ。毛並みのいいのは、大好きでな……。
馬超。漢朝の功臣である馬援の末。毛並みとしては最高だろ?
まあ、そういうことだ」
人材としてだけじゃないということですよねえ……。
にしても、華琳がリスクを負うくらいに翠というのは華琳的には評価できるということか。
まあ、しかし。
「でも、そしたら春蘭が華琳に構ってもらう時間とか頻度が減るでしょ?そこらへんどうなのよ」
ニヤリ。
俺の言を受けて春蘭が艶然と――本当に色っぽく――笑みを漏らす。
「ああ、そのことか。なに、私はそこらへんはどうでもよかったりするのだ。
まだ、鳳徳はそこらへんとは無縁であるし、それよりも、だ。
――何せ、二郎と会う度に、会うと決まった度に、な?」
おもむろに足を組み替える。相変わらずものっすげえミニなチャイナで脚線美に視線が釘付けでそしてその内側。見えそうで見えないそれを常ならばホーミングするのだが。
紅赤朱。
春蘭の内腿に刻まれた赤い刻印に目が釘付けになる。
「ほら、二郎よ、どうした?」
ニヤリ、とほくそ笑んで俺を頬をぺしり、と爪弾く為に前のめりになると露わになる胸元。赤い衝撃。
「おい、春蘭よ……」
ちょっと露骨すぎやしませんかねえ……というか。
濃厚に漂う艶めいた空気。
「ふふ、私の身も心も華琳様のものだからな?
だが、いや、むしろと言うべきか。華琳様に懸想する蒙昧の多いことよ。しかし、だ」
艶然と笑って春蘭はぺろり、と唇を舐める。くすり、と。常の清冽で凄烈な武人の空気ではなく、淫蕩なその仕草に俺はくらり、とする。
色香、なのか凄味なのか。
「ああ、二郎よ。長子は華琳さまの養子にするから、な?」
な?ってなんですかねえ。
※この後、滅茶苦茶セックスした




