北壁にて
「しかし、流石馬家の用兵は流石の一言だな。
これで私は騎兵の扱いには一家言あったんだが……。まだまだ、だなと痛感したよ」
俺の諸国漫遊世直しの旅。その出発点は白蓮が治める幽州は襄平からである。お供は凪と蒲公英と、字伏(元関羽)という身軽な旅である。
そして久闊を除しようと訪れた俺たちを白蓮は大歓迎してくれたのだが、なんでか模擬戦をすることになってしまっていたのだ。いや、普通に受けたけどな!俺はなんもしなくてよかったし!
「しかしあの用兵を鑑みれば、馬家のお家断絶は勿体ないんじゃないか?
って、これは余計なことを言ったかな」
翠が蜀に与して漢朝に弓を引いたため、馬家は現在お家断絶状態なのである。
「まあ、それについてはな。主犯の馬超も行方不明だし、蒲公英も納得してるからなー」
馬家の再興については、ハードルが高いのである。いや、いずれはなんとかしてやろうとは思うのだけんどもね。
「まあ、それはいい。私は中央からは身を引いたからな」
太尉という栄職を捨てて幽州の州牧に専念するその至誠。内外からの評価は高まる一方なのであるが。
「乱を誘発してしまったのは私の責だろうよ。それは認識しているさ。
――それで、韓浩を死なせてしまった。私の責だ。
だから、だからこそ幽州の治世については譲れない。
――譲れないんだ」
にこり、と笑う白蓮。その双眸には涙が溢れていて。
「私が韓浩を死なせたようなものだ。
二郎。韓浩は本当によくやってくれていたよ。推挙してくれたからおべっかを使うのじゃあない。
本当に、韓浩はよくやってくれていたんだ……。」
涙目で、白蓮は。それでも前を向くのだ。
「だからさ。北壁の護りは任せてくれよ。
それくらいは、やらないと韓浩に申し訳ないしな……」
くすり、と笑うその笑みが苦く、切なく。
「二郎。韓浩の墓に、行こう。
韓浩は二郎をとっても、誉めてたから、さ。
それに、そう言えば私は韓浩のことをよく知らないんだよな。
聞かせてくれよ。あいつは紀家軍でどんな感じだったか、とかさ。
ああ、そうだ。私はあいつが好きな食べ物すら知らないんだよ」
なあ、あいつのことを教えてくれと言う白蓮に、知ってる限りのことを伝える。
「俺が韓浩と会ったのは結構昔のことでさ。梁剛姐さんの部下だったのさ――」
痛みを伴うその述懐。ふわりと、白蓮は俺を包み込んで。
「そんな二郎だから、韓浩は、満足して逝ったのさ」
上を向いて。
にまり、と笑った彼女の表情を、忘れはしない。
所感:地味様、頑張ったなーって感じですね。CPBさんの養分でしかない彼女がここまで頑張れたのは……なんでだろ。
初期から、動かしやすかったのですけどね。この子どうせ死ぬだろうなーと思ってました。
鮟肝的なsomethingに感謝しとこう。