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真・恋姫無双【凡将伝】  作者: 一ノ瀬
黄巾編 決着の章
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破巾の布陣、その前日

 さて。黄巾の本拠地から決死の脱出行を風とともに繰り広げた二郎です。襲い来る黄巾をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。

 いや、嘘です。普通に外出したよ。「商売頑張ってお布施しにくるねー」で終わった。微妙に護衛を付けられる流れに焦ったくらいだ。うん、金のなる木を大事にするのは間違ってない。

 で、黄巾の本拠地を暴いた俺らはそっから二日程度の場所に陣取っているのである。なにせ、単独では流石に兵力が違い過ぎる。

 雷薄が常々言っているが、「戦いは数」なのである。いくら彼奴らにまともな装備なくとも数の暴力はそれだけで脅威。それに僵尸キョンシーや幻影兵といったイレギュラーだって馬鹿に出来ない。

 風に聞いたら。


「そですね。僵尸はともかく、幻影兵は大丈夫と思いますが、万全を期すとしましょうか。急いてはことをし損じる。ここはどっしりといきましょう」

 

 とのことです。メイン軍師がそう言うのだから俺に否やがあろうはずもない。

 まあ、単独での本拠地特攻はチキンな俺にとってありえない。だからして。


「二郎!久しいな!」


 頼りになる援軍を各地から召集している最中なのである。

 人脈コネ使うためにあるのだよ。


「おう、白蓮、お久。

 聞いてるぞ、白馬義従の武名。向かう所敵なしってな!」


 まあ、メイン軍師の案に従って主要な軍に書状を出して今は集結している最中というところ。真っ先に合流してくれたのは襄平の太守にして白馬義従を率いる公孫賛……白蓮その人だ。

しかし流石は公孫家軍。連戦連勝で黄巾を蹴散らしまくっている。

 流石北方で匈奴の脅威に備える軍は格が違った。まあ、うちの騎兵の中級士官も出向で経験積ませてもらってるから分かってはいたが騎兵強すぎワロタである。

 うむ。敵にしたくはないものである。むしろ全力で取り込む所存である。

 そう思いながら手放しの讃辞を。いや本心よ?多分涼州騎兵と互角以上に正面からやりあえるのは白馬義従くらいじゃないかな。むしろ他に騎兵がいないという説。


「そ、そうか?いや、いやー。な、何ほどのこともないとも。うん。部下たちが奮戦してくれたからこそだ。

 そ、そうだ。二郎にも感謝しないとな。いや、白馬義従なんて名前が独り歩きしてるんじゃないかと武名が広まって正直落ち着かないよ」


 たはは、とそれでも朗らかに笑う白蓮。

 きちんと自らの武威を、名を受け止めているようでなによりである。


「いや、相応だと思うさ。

 元々実力の割に武威があまりにもなかったんだよ。だから地味って言われる」

「地味って言うな!」


 まあそう揶揄されていたそれも過去のこと。最早白蓮の名を知らん奴はいないだろうさ。ちなみにそれならば、と。派手様と呼んでやったらなんとも言えない顔をしてくれた。

 うん。似合わんね。そういう問題じゃない?そうねえ……。


「しかしまあ、よくも黄巾賊の根拠地を突き止めたなあ。それも自ら潜入してきたんだって?無茶もいい加減にしないと麗羽が怒るぞ?」

「うん。ありがとね。

 でもまあ、行ってよかったよ。

 よかったのさ、色々とな」


 ああ、本当に。色々と、ね。


「まあ、二郎がそう言うならそうなんだろうけどな。

 後できちんと説明しとけよ?」

「ういうい」


 まあ、戦勝報告の後に感想戦が行われるのは確定的に明らか。沮授はともかく稟ちゃんの追求は……風に任せようそうしよう。

 その場で麗羽様が色々言うとは思わんが……。ないよね?ないない。多分。

 あったらまあ、その時はその時だ。頑張れその時の俺。


「しかし、賊徒のねぐらとは思えん要害だったな。

 あれは」

「なにそれ。自分で見てきたの?」

「偵察がてら数騎でな。流石にあれは私でも単独で落とせはしないな。もとより攻城戦は不得手だ」


 そりゃねえ。騎馬で壁に突撃とかする奴は馬鹿というか、無能の塊である。

 つか、ものっそい贅沢な斥候であることよ。まあ、あれこれ説得する手間が省けたけど。


「まあ、そっちは任せてくれ。白蓮にお願いしたいのは野戦さ」

「ならば任せろ。白馬義従が伊達じゃないって、きちんと見せてやるさ」


 いや、頼もしいことこの上ない。


「と、言うより流石に城壁にはどうしようもないからな」

「それを言うならばね。賊徒の討伐に攻城兵器を用意している二郎がおかしいのよ。全く」


 苦笑と嘆息と揶揄と。何より親愛を込めてそんなことを言って近づいてきたのは華琳その人である。

 呼んどいてなんだが、その目線やめてよね。実際背筋が寒くなるのよ。

 フフ、怖い。


「よう、華琳。ごゆっくりだったみたいで」

「ええ、そろそろ私の力が必要かと思ってね。真打ち、という奴よ」

「全く。美味しいとこだけ掻っ攫おうって算段か?汚いさすが華琳きたない」

「やあね。自領の安寧が果たされたから外に目を向けただけよ?職責を全うしたというのに、ひどいこと言うのね。

 ……まあ、私が参戦した以上勝ちは決まったようなものね。安心しなさいな」


 うわー。なんという上から目線。でもこれでこそ華琳である。

 浮かべる笑みにはいささかの曇りもなく、自らの正当を疑う様子は全くない。少しは疑えよ……。

 無理だね、知ってた速報。

 全く。黄巾の本拠が明らかになるまでは自領の安寧に尽くし、いざそれが明らかになると途端に現れる。大したものだ。

 いや、白蓮と華琳が同じタイミングで合流したのは風の手腕なんだけどね?

 合流待ってうだうだしてたら不平不満も生まれるからな。特に華琳なんて……。


「二郎?何が言いたいのかしら。きちんと言ってくれないと分からないわ」

「えーと。まあ、なんだ。頼りにしてるってこった」


 これは本当。いかに扱いづらくとも華琳、そして配下の能力に疑いはない。……春蘭はともかくネコミミをどうすればいいか誰か教えてくれ。風だって居眠りを決め込んだんだぞ。

 くすん。


 華琳の精神的波状攻撃が途切れるのは更にある人物の登場を待たねばならない。

というか。キマセリー!


「二郎君!久しいな!」

「二郎さま、おひさー!たんぽぽだよー」


 この場にいる全員の武勲を束ねて倍しても及ばない英傑、馬騰さんの登場である。

 いや、駄目で元々、当たれば儲けとばかりに声をかけたのは確かなんだけどね?

 そりゃもう、現在位置さえ掴めなかったのですよ。推定だけ。それでも空振り上等でお声かけをしたのは確かなんだけど。


「うむ、皇甫嵩殿がな、ここらあたりに二郎君がいるであろうと推測したのだ。

 いや、たまにはあれの知恵も役にたつ。おっと、彼奴きゃつは私の上役であったか」


 呵呵大笑。なんという豪傑。その言はまさに豪放磊落。その存在感に流石の華琳も気圧されている模様。あの華琳が口を挟めないとか、マジか。

 いやまあ、華琳が苦手なタイプなのかもしらんけどね。知らんけど。


「ともかくな、二郎君の武威武勲には私も驚いたとも。

 かの朱儁、董卓。いずれも英傑と言っていい。配下とて並ではない。いや、一級品と言っていいだろう。

 それを敗走させた黄巾を二郎君。君は打ち破ったのだ。

 喜んで君の指揮下に入ろうとも!」


 その、馬騰さんの一言で華琳も白蓮も俺の指揮下に入ることになったのである。そりゃあね。馬騰さんが指揮下に入って自分は嫌だとかないわな。

 白蓮はなんだか嬉しそうにあれこれ馬騰さんと会話をしている。きっと騎兵の運用で話が合うのだろう。華琳は……何かぶすっとしたまま去って行った。解せぬ。

 そして俺の前には。


「えへへ、二郎様、お元気?たんぽぽは元気いっぱいだよー!」


 知ってた。


「あのね!あのね!たんぽぽ頑張ったよー。横暴なお姉さまの影におびえながらもこの中華の平和に頑張ったー。誉めてほしいなー」


 よしよしと撫でくり回してやる。わりとそれで満足らしい。安いよ!

 そんなんでいいの?


「そういや、翠は?」


 俺の疑問に蒲公英は朗らかに応える。


「お姉さまはね。今なんか頑張ってるよ?補給の差配とか、隊列の検討とか」


 向いてないよねーと笑う蒲公英だが、馬鹿にしたニュアンスはない。きっと大好きなんだろうなあ。

 うん、守りたいこの笑顔。

※守れるとは言ってない


◆◆◆


「はは!二郎君!

 明日は先陣を頂きたいが如何に?」


 流石の白蓮、華琳さえもが圧倒されて先陣を譲ってしまう……。

 流石馬家の当主はその覇気化け物だね!

 いや、頼もしいんですけどね。よろしゅう。


「うむ!まさか二郎君とくつわを並べる時が来るとはな!

 馬家軍の真髄、見せてやるとも!」


 はっはは、と。

 高笑いと共に去る馬騰さん。いや、そりゃ野戦もあるだろうけど、もう馬家軍だけでいいんじゃないかな。なんて思うほどの勢いである。

 あれが武威、格というものだろうな。

 見れば華琳も、白蓮も不敵な笑みを浮かべている。うん。うん?

 あ、そりゃそうだ。馬騰さんは白蓮にとっては憧れだろうし、自分が一顧だにされないというのは華琳にとっては未経験だろう

 うん。こりゃ明日は。


「勝ったな」


 むしろ荒れるかな。

 勝ち確定のBGMでもほしい俺であった。


 いや、勝つのはいいけど事後処理揉めたらいやだなあ、と。


 尚、この思考が慢心であるのは把握しております。

 でもさ、現実逃避だってしたい時もあるのよ。

 いいじゃない、凡人だもの。 みつを……じゃなかった、じろう




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