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ネコミミモード

 華琳を見送り、どさり、と椅子に座りこむ。

 疲れたー。


「ってなんでまだいるのん?」


 変わらず不機嫌そうな荀彧ネコミミが俺を睨みつけてくださっている。

 そういうのが、こういうのがお好きな方にはご褒美かも分からんが、俺にとっちゃあね……。


「華琳様と袁紹殿の会談に同席できるわけないでしょう。

 それくらい察しなさいこの塵芥じんかいが」


 流石のネコミミ。その罵詈雑言のレパートリーに磨きがかかっとるな。

 いや、結構な悪口雑言を言われているのは認識しているが、もう慣れてしまった。


「ちょっと、こっちをその嫌らしい目で見ないでよ!汚らわしい! 

 全く、これだから男ってのは嫌なのよ。この!」


 常のような、火山が火を噴く勢いは見られずに逆に心配してしまう。


「元気ないね、どしたの?」

「うっさいわね。下等生物ガガンボが私の心配するとか不遜極まりないわよ。

 多少なりとも知性があるならばさっさと華琳様の靴をその汚く下劣な言葉しか生み出さない舌で舐めなさいな」


 うむ。これくらいじゃないとね。

 別に嬉しいとかじゃあないんだけどね。そこはきちんと主張しておきたい俺である。


「言うね。いつものことだけど」


 ギロ、と剣呑な視線をくれる。

 まあ、これくらいはいつものこと。そしてそこにはどこか悔しさすら含んでいる。気がする。


「……なるほど。優先するのは華琳の意思、か。いや、当たり前と言うのは容易いけど、なかなかできるこっちゃないぜ」

「何よ、あんたごときに偉そうに言われたくないわよ。

 不本意、という言葉が事象になったらこういうことになるのでしょうね。

 まったく、不愉快極まりないわよ」


 まあ、ネコミミとしては目の前で自分以外の人材に華琳が声かけるだけでストレスはマッハだろうしね。

 しかも風ならともかく凡人たる、しかも男である俺が対象だし。

 そりゃご機嫌麗しいはずもないわなー。

 華琳もそこらへん考えてあげればいいのにね。


 釣ったお魚に餌をあげないとかないわー。

 むしろ虐待するとかないわー。


「何よその目つき」

「いや、大変だなあ、と思って」


 激昂。


 今度こそネコミミがその気迫を爆発させる。


「あんたごときが分かった気になって、上から目線で偉そうに言ってるんじゃないわよ!

 ああもうやだ!こんな男と同じ空気を吸ってると思ったら絶望しかないわ。

 アンタ、目障りだからそこから身投げの一つでもしてみなさい。

 それくらいで死ぬことはないでしょうし」

「時と場合によるかなあ。そしてその気は全くないぞ。

 そしてまずはお前は落ち着け」


 と言って落ち着く人なんていないんですけどね。

 しかしまあ、この罵詈雑言のバリエーションは凄いって思うの。

 どうもよっぽど鬱憤が溜まっていたようでござる。


「とにかくね、アンタごときが華琳様のお誘いを断るとか身の程を知りなさい!」

「そんなん言われても俺にも立場とか色々あるしなあ」


 つうか、辛い立場よねこのネコミミも。

 俺が断れば主君の意向が無下にされたと憤り。

俺が応じればなんでこんな凡夫がと憤懣遣る方無く。

 でもまあ、そこできっちり華琳の意思を優先しているからこそ俺と華琳の会話に口を挟まずにいたんだろうね。

 ストレス溜まったろうに。いや、今発散させてるのか。

 うーん、迷惑!

 

「大体アンタはね、華琳様にお声をかけていただいているという栄誉をもう少し自覚すべきなのよ!」


 いや、発散してねえな。自分の言葉でさらに鬱憤たまってそうだわ。

 華琳も酷なことを……。

 ん?んん?


「しかしまあ、春蘭といい、曹家の忠誠は留まることをしらんな」

「当たり前じゃない!華琳様への忠誠は絶対よ!」


 春蘭もそういやいぢめられてたな。

 つまり。華琳の人心掌握ってば……。


「ジゴロじゃねえか……」


 ぼそ、とした俺の呟きはネコミミには届かなかったみたいでよかったー。

 ちゅうかさ、あれだろ。わざといぢめてるだろ華琳。

 そのあと優しく愛しちゃってるんだろ。そらあかんわー。その、扱いの乱高下とかジゴロの手口だわー。しかもそれは効果抜群なのだわー。

 やべえよ、やべえよ……。


「何よ」

「いや、華琳って、あれで優しいとこもあるよ、な?」

「アンタみたいな塵芥が何を語るかと思えば。そんな自明のことを今更。ちゃんちゃらおかしいわね。

 華琳様はお優しいわよ?だって……」


 うっとりとした表情。

 あー、そういや、SMで言ったらSはサーヴァント、Mがマスターって説もあったか。

 あくまでSはMの求めることを与えているだけっていう。

 つまりこいつは生粋のM!

 だから目の前で俺とかと親しくしてその嫉妬心を燃え上がらしたり、手ひどく叱責したりするんだな。んで、後でフォローに優しくする、と。

 いや、きっと華琳に嗜虐嗜好があるってのもあるんだろうけども。

 俺には分からん世界やね。いぢめて楽しむとか。

 うん、結論。


 華琳とこには転職しない!

 絶対に。絶対にだ。


 そうやって決意を新たにした俺であったのだ。

 いや、袁家サイコー!


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