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凡人とゴッドヴェイドウ

 結論から言うと、張魯は漢朝の枠組みに入ることに同意してくれました。

 いや、よかったよかった。太守内定ばんざーい。

 おっと。


「しかし、流石に医療の技術がすごいね」

「それは、な」


 医療のレベルは袁家領内をはるかに上回っている。

 俺には草木とかがどうやったら薬になるかとか分からんし、実際医療知識的なものは無きに等しい。どっちかっていうと公衆衛生になるからなあ。青カビがどうとか実用化できるわけがない。りろんも知らんのやぞ。

 ぶっちゃけ、よく食って温かくして寝るくらいしか分からん。病気の予防に手洗い、うがい、熱湯や日光による消毒くらいだもんね。

 ちなみに消毒に関しては軍事機密扱いだったりする。傷病兵が生き残る確率は相当上がっている、はず。


「何人か南皮に技術指導に寄越してほしいな、って思うんだけど」

「む?」

「いや、流石に病人をここまで搬送とかできないからね。

 俺の親しい人たちになんかあった時に力を借りたいな、と」


 援助もしまっせ。医療って金食い虫だからね。

 医療費が高いっていうのには理由があるのだ。いくら金があっても足りないだろうし。


「ふむ、考えておこう」

「前向きにお願いしたいね。

 ま、それが駄目でもおたくらゴッドヴェイドウとは仲良くやってきたいと思ってるし」


 これは本音だ。立地条件だけでなく、敵に回したくない。


「ああ、こちらこそ。それと私たちは五斗米道だ。

 ゴッドヴェイドウはまた別口だな」


 なん……だと……?


「だから言ったろう、ゴッドヴェイドウだと」

「いやわかんねーよそんなの」


 華佗がにこやかに笑いながら俺に言う。

 聞くと、なんか別部門みたいな感じらしい。

五斗米道は純粋な医療。ゴッドヴェイドウはなんというか、オカルト的裏部門?やだ、ちょっとカッコイイ……。

 凪とか食いつきそうだな。


「通常の医療では呪術や妖術、妖怪変化には対抗できないからな!

 そういった、五斗米道では治療ができない患者を中心に診ているんだ。

 ま、滅多にそんな案件ないし、人数も少ないがな」

「あー、なるほどね」


 やっぱりエクソシストとか拝み屋とかみたいなもんか。


「でも、妖怪とか実在すんの?」

生憎あいにく、見たことはないな。伝承は残されているのだが、な。

 ちなみに神仙の類も目にしたことはないな」


 苦笑する華佗である。本業の根源と接触はしたことないとか、そら忸怩たるものもあるわな。


「へー、でも華佗って普通に治療行為をしてたじゃんか。あれ医療行為じゃないの?」


 光るのが普通かどうかはこの際おいておこう。でも、実際に患者は救われていたのだよね。


「まあ、あれはな。気のちょっとした応用だ。

 気脈を整えてやればほとんどの病は快癒に向かう。無論、手に余ることもあるし薬石だって併用するけどな」

「ゴッドヴェイドウは通常の治療もできるのか」

「そうだったらよかったんだけどな」


 そう言って華佗は苦笑する。どうも、通常の治療もできるのは華佗くらいらしい。

 そっちに特化してしまっているから別口に分かたれてしまったとかなんとか。

 まあ、互いに専門分野で補完しあっているっちゅうことかにゃ。


「なるほどねえ。

 両方ともに使いこなすとは……。やはり天才か……」

「よしてくれ、まだ修行中の身だ」


 華佗が語るところに、純粋な医療では張魯に一日の長があるそうな。

 しかしそういう理由ならば、南皮に華佗を招聘するのは難しいかもわからんね。ゴッドヴェイドウは少数精鋭みたいだからして。

 是非とも凪に気を指導してもらいたかったんだけんども。

 だが俺はあきらめない。


「忙しそうにしてたのもやっぱ人数が少ないから?」

「いや、そうじゃない。もうすぐ旅に出るんだ。

 その準備やらで駆け回ってたんだ」

「なんですと?」


 急展開の連続に頭が追い付かないよ。どして?なして?


「太平要術の書が世に出てしまってな。

 それを回収、封印、あるいは破壊しないといけないんだ」

「太平要術の書?実在するのか!」


 確か妖術が使えるようになる素敵アイテムだったはずだ。

※K●EI三国志的感です


「ほう、流石に博識だな。あの書を知っているとはな。

 あれを素質のあるものが扱えば大変なことになりかない。厄災を招きかねない危険なものだ。

 もし見つけても、決して触れないようにしてくれ」

「俺別に素質ないと思うんだけど」


 気の素養ゼロというのは華佗のお墨付きである。しょんぼり案件である。今明かされたしょんぼりな事実。くそう。


「いや、太平要術の書。あれは人を取り込む。

 素質がなくとも力に魅入られてしまう。そういうものだ。

 いずれにせよろくなことにはならない」


 分かるような、分からんような。だが、何らかの洗脳機能が実装されているということであろう。こわや、こわや……。


「なんとも物騒なことだな」


 華佗は大きく頷く。


「繰り返すが、太平要術の書。万が一にも見つけても、絶対に使わないようにしてくれ」

「あいよ。俺は別に君子じゃないけど危うきには近寄らんし、見つけたら遠巻きにしてゴッドヴェイドウの誰かを呼ぶよ」

「それが一番だ」


 つか、使い方とか知らんし。いや、取り込まれたら自動発動みたいな呪いのアイテムって感じ?こわい!


 しかし大概わけわからんくなってきたな。

 一気にこの世界がすこしふしぎになってきたわ。今更だけど。今更だけどな!


「まあ、旅の途中でいいから南皮にも来てよ。歓迎するし。あれこれ教えてほしい子がいるし」

「そうだな。是非寄らせてもらおう」


 苦笑する華佗の心労を少しでも軽くしようと。……こいつに心労とかあるのかなあという疑問はないものとする。


「それにな。そんなに物騒なもんなら袁家の方でも探してみるし。

 流石にこの広い中華を一人で探すのは無理だろ」

「それは助かるな」


 にこやかに笑うと白い歯がキラリと光るのは何かの仕様か。イケメンが妬ましい。


「いつ発つのん?」

「明日だ」

「そっか。そんじゃ途中まで一緒しようか。

 旅は道連れ世は情けってな!」

「ああ、よろしくな!」


 思えば俺も旅の途中。袖擦り合うも多生の縁。

 この縁は大事にしたいものである。


※出立は華佗に合わせました。

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